わたしの魔術コンサルタント (電撃文庫)

【わたしの魔術コンサルタント】 羽場楽人/笹森トモエ 電撃文庫

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魔術コンサルタントと、魔術士の卵。二人の不思議な生活が始まる

魔術をつかう人に希望を見つける――それこそがかつて師を救えず、己の魔術を失った過去を持つ魔術士・黒瀬秀春が再び立ち上がった理由だった。
「お父さん会いたかった!」
東京の片隅、薄汚れた古い雑居ビルで魔術コンサルタントを営み、魔術に悩める人々のために奔走する日々のなか、秀春を父親だと勘違いした、かつての師の娘・朝倉ヒナコは現れた。
「魔術は、唯一のつながりなんです」
魔術の才に愛されながらも、魔術によって家族を奪われた少女ヒナコ。
「奇跡に見合う努力はしてきた」
絶望と喪失の果て、秀春だけが見つけ出した可能性という新たな未来。東京で出会った二人が織り成す魔術と居場所の物語。
うらぶれた場末の雑居ビルの一室で探偵業を営む厭世的なオッサンと、そんな男のもとに甲斐甲斐しく通い詰める美少女探偵助手、という構図はこれも王道の一つなんですよね。
わかるー。
いやむしろ、これはおっさんになったからこそ余計に実感できるドリームなんじゃなかろうか。
まあでもね、このおっさん探偵と美少女助手という構図に対する夢に対しては、かつて古橋秀之著作【ブラックロッド】で強烈なトラウマを焼き付けられたので、未だにこの関係性を小説で目の当たりにするとビクビクしてしまう嫌いがあるのですよ。しかし、好きである事実は否めない!
ともあれ、本作の主人公である黒瀬のそれは探偵みたいな店構えをしているけれど、コンサルタント業を名乗る魔術の家庭教師みたいなもんなんですよね。うーん、でもコンサルタント業という業務自体が曖昧なんだけれど、顧客の抱えている問題・課題を解決する方策を提示する職業、みたいな感じの説明がされているので、黒瀬がこなしていた仕事を見ていると確かに、相手が魔術に関して悩んでいる部分を解決するためのアプローチを提示している事も多いので、家庭教師とかにしてしまうよりコンサルタントと称しているのは案外的を射ているのかもしれない。
何気に顧客に美少女が多いのは何なんだ、という疑問はあるんだけれど、まあ偶々と作為が交錯しての結果見ただし、特に美少女であったことには意味もないようなのでいいのか、いいのか?
とりあえず、一番のツンデレとヤンデレが後輩の執行官というのはどうなんだ、と言いたい。こいつ、もっとヤバいやつなのかと思ったら、堕落した先輩に構ってほしかっただけじゃないのか。後々のチョロさを見てしまうと、どうしてもねえ……。先輩にちょっかいかけるヒロインたちに対しての、あの敵視っぷりも相当なものだし。ちなみに、この後輩、男ですからね。若い男なんだから、女の子相手に即殺すスタイルはどうなんだ、と。最初は単に職務上によるものと勤勉さと狷介さという性格に寄るものなんだと思ってたから良かったんだけれど、後々見ると性格的な問題ではあるのには違いなんだけれど、方向性が違っていたというかなんというか……。
とにかく、こいつが先輩好きすぎるのはわかった。
一方で、主人公はというと厭世的になろうと堕落しようと大人の男性であることはキープしているようで、まだ子供である少女たちの姦しさに対しても、その距離感が曖昧な接し方に対しても常に適切に維持しようとする努力は認める。案外、ほだされてるけれど。いやそれに関しては、彼女たちが見せるイイ女の成分のおかげでしょう。ある意味、悪い女にもなりそうな出来具合でもありますが。
それでも、この場合の子供扱いというのは正しいんでしょうな。単に顧客ではなく、師の娘だったり世話になってる親分の娘だったり、とビジネスライクに接するにはある意味親しい関係であることも確かなわけですし。
それ以上に、ビジネスライクに徹するにはこの男の場合、優しすぎるというのとは違うか、人が良いとか情が深いというのとは違うのだけれど、親身にはならないけれど見捨てない見放さない突き放さない、というあたりがハードボイルド風味というやつなんでしょうかねえ。
雰囲気は結構好きなものだったんですが、ちょっと微妙な点も散見されていて、たとえば描写不足によってシーンが説明抜きにコマを飛ばしたように飛んでしまったり、作者はわかってるのかもしれないけれど読んでるこっちはわからない理由で物事が進んだりとか、事前の蓄積が足りない状態で展開が急転したり、とやや置いてけぼりにされる部分が見受けられたんですよね。これらは、作中に没頭するのを邪魔する大きな要員でもあったので、ぜひ解消していってほしいところである。
ともあれ、小娘たち含め登場人物はお互いの関係の進展の仕方などもなかなかに魅力的であったんで、シリーズ化するのなら期待したいところですね。まあ、だからこそ彼女に関しても、三人娘という形で残してほしかった、という願望はあるのですが、詮無い事か。