フレームアームズ・ガール 可愛いってどういうこと? (ファミ通文庫)

【フレームアームズ・ガール 可愛いってどういうこと?】 手島史詞/島田フミカネ ファミ通文庫

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小さな人型自律メカ『フレームアームズ・ガール』。そのひとり轟雷はマスターの少女・あおが言う「可愛い」が理解できず悩んでいた。そんなある日、あおの友人・武希子が様々な武器や装甲を持って遊びに来てくれた。だが轟雷が一番気になったのはあおが自作したという“リボン”。それはただの飾りなのに轟雷の胸を温かくするのだ。この気持ちを、あおにお返ししたい! ――それが思わぬ冒険の始まりだった。大人気アニメの日常を繋ぐノベライズ、オリジナルエピソードで登場!
おっ、新キャラだー。と、表紙絵見て勘違いしてたんだが、これって轟雷だったのか。リボンなんかしているからわからなかったのですよ。
というわけで、あおに作ってもらったリボンでおしゃれなんかしてしまった轟雷。かわいいかわいい、と連呼されて戸惑う轟雷は思うのでした。
「可愛いってどういうこと?」
そもそも、どうして自分たちはバトルするために作り出されたメカなのに、人間の女の子の姿をしているのか。ただ強さを求めるのなら、こんな姿必要ないのに。
という疑問を、FAガール当人である轟雷が抱き、マスターである「あお」と賑やかなFAガールズとの日常の中で探求していく、それが本作の通しのエピソードである。
既に自我がある程度以上成長して確立しているスティレットやバーゼラルドは、可愛いという概念に対して特に違和や疑義を持っておらず、人と同じように「可愛い」を認識し、使いこなし、それを自分にも適用しているのだけれど、感情というものを学んでいる最中の轟雷にとって「可愛い」はかなり未知の領域のものなんですね。だからこそ、普通なら当たり前に受け止めてしまう「可愛い」に対して、探り探り向き合っていくことになるのだけれど、丁度それが――可愛いを理解していくことが、同時に轟雷に未成熟だった感情を彩っていくことに繋がっていくんですね。
可愛い、と言われて覚える感情。可愛い、を求めることで生じる思い。そして、マスターであるあおに対して抱く「可愛い」という溢れんばかりの気持ち。
そんなめくるめく轟雷の「芽生え」をなめらかな内面描写が見事に描き出していくわけですなあ。
アニメの轟雷も回を重ねるごとに、感情表現が豊かになっていき見違えていったものでしたが、その過程の一部、もしかしたら轟雷の感情が本格的に駆動し始めたそのステージアップの段階を、轟雷の心の内側を詳らかにすることで表したのが本作だったのかもしれない、と思えるほどに良い目覚めの物語でした。
ただバトルする為のメカではなく、女の子の姿をした意味を捉え、可愛いを理解し、そしてマスターのあおや、スティレットたち同じFAガールズを家族として受け止める。アニメでの後半に轟雷の原動力のかなめとなる部分を、ここで多く得ていることに気付かされるのです。
また、初っ端から相性悪そうだったスティレットとマテリア姉妹の対立と歩み寄り、なかなか何を考えているのかわからなかったマテリア姉妹をぐぐっと掘り下げて、彼女たちのロジックを解体してみせたり……あれでマテリアたちってふざけたりからかったりしているだけじゃなくて、本気で愛でてるだけだったんだなあ。って、そのほうが何気にたちが悪いんですがw
そして、強烈な存在感を示しながら実はあんまりアニメでは出番のなかった武希子が、こちらではむしろ「あお」よりも出番多く、轟雷たちのアドバイザーとして色々と付き添ってくれることで、その本性と真価を明らかにしていくのである。
趣味人として極めつけで、友人として得難く、人間としてかなりダメ、という個性的な逸材でありました。さすが、コトブキヤの化身である。なにしろ、名字「寿」だもんなあ。
アニメのノベライズではありますけれど、本編を見ていなくてもちっちゃい人形サイズのロボットたちと、人間の少女が共同生活している、という前提さえ踏まえておけば、それだけで十分楽しめる作品であると同時に、アニメ見てた人には二度三度美味しい、というノベライズ作品の珠玉という出来栄えに完成しておりました、これは良作!

手島史詞作品感想