灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た (オーバーラップ文庫)

【灰と幻想のグリムガル level.11 あの時それぞれの道で夢を見た】 十文字青/白井鋭利 オーバーラップ文庫

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──やらなきゃいけないことを、やる。やるんだ。今は。
歯を食いしばり、両足を踏ん張り、グォレラたちの襲撃に再び向き合うハルヒロ。
彼は、使命で自分を奮い立たせ、“彼女”の死という現実から目を背けようとしていた。そして、抱えきれない後悔と絶望を前にした時、謎の男・ジェシーが囁く。「方法ならある。一つだけ」と。
一方、フォルガンを脱退したランタは、世話役であったタカサギの追跡から必死に逃げていた。千の峡谷(サウザンバレー)で、いつ終わるともしれぬ逃避行。体力と精神が限界に達しようとした時、ランタの脳裏を去来したものとは……?
これは……覚悟が必要だぞ。
むしろ、ハルヒロ自身ではなくメリィの方にこそ覚悟が必要かもしれない。ジェシーは人が変わったりとかはしないと明言はしていたけれど、実態を鑑みてみると侵食みたいなものはないかもしれないけれど影響は絶対あるはずなんですよね。境界線上は曖昧になっているフシは伺えたし、現にここまで引き継がれてきたということは、その前の人が引き継がせてきた、という事を意味しているわけですし。それって、自己保存意識が欠落してきていたという事を意味してるんじゃないだろうか。
メリィはメリィに違いないにしろ、彼女はメリィという個人から……メリィという人格を主体にした群体みたいなものになった、といえる訳ですから。
これ、よっぽどメリィが自分を確立していないと「持っていかれる」可能性は十分にあるし、そうでなくてもメリィの方から距離を置こうと考えるのは彼女の性格からすると容易に想像できるんですよね。そう考えれば、やっぱりハルの方にも覚悟は必要か。記憶は連続しているわけだし、彼女が死の間際に抱いた想いは忘れていないはず。でも、生き返ったメリィはその想いを今まで以上に素直に発露できず、むしろ積極的に封じていきかねない。正直、ハルを含め仲間たちがメリィを受け入れられないはずがないので、そのへんは心配していないのだけれど、捕まえておくのは本当に苦労しそうなことになってきたなあ。
ただ、戦力的に考えるとこれ劇的に向上したんじゃないだろうか。
にしても、感動の場面を甘受する暇さえ与えられずにどんどん追い立てられてくハルたちには同情を禁じ得ない。そこはそれ、みんなで奇跡をじっくり噛み締めてもよかろうシーンだったのに、それすら許してもらえなかったもんなあ。でも、ついさっきまで永遠に喪ったと思っていたものを、いつもと同じパターンでメリィの名前を呼び、いつものように彼女にそのポディションを守ってもらえる、いつもの陣形を形成できる、という事実を一瞬だけれど強く強く感じ入るハルヒロには、良かったなあと言ってあげたい。良かったねえと頷いてあげたい。
メリィを喪った直後の、あの自暴自棄になりそうになりながらそれでもリーダーとしての責任を捨てきれずに冷静を保とうとして、でも半ば自失してしまっていたハルの姿は、あまりにも痛々しかったから。
報われて、良かった。
今回は、時間的には短かったけれどハルが本当の意味で心身ボロボロに成り尽くしていただけに、こういう時のシホルの存在感には凄いものがあった。弱りきったハルが縋ったのがシホルだったし、シホルの方もボロボロになってたはずなのに、自分の決断に怯えるハルをフォローして、もうあかんくなりかけてたハルを支えて、とこれシホルが抜けてもパーティー多分崩壊するんだろうなあ。
一方でランタである。ちらりと、これはメリィの方もだけれど現実の、というべきか地球の、というべきかはわからないけれど、かつての記憶、向こうに居た頃の姿がすぐに消えてしまう回想という形で描かれていたけれど……。
ランタそれ、控えめに言ってもクズっぽいよね、向こうでの自分。卵が先か云々じゃないけれど、彼が愛されなかったからああなってしまったのか、ああいう性格だったから愛されなかったのか。
愛されたかったのか、いっちょ前に?
そうなんだろうなあ、そうじゃないと言い張るにはこの子は人間の器が小さすぎる。毅然と独り立てるような人間ではないのだ。そのくせ、他人に受け入れてもらおうという努力を払うどころか蹴飛ばし傷つけようとする。結局、そんな自分でも受け入れてくれる相手にしか、都合の良い相手にしか、甘えさせてくれる相手にしか、心を開かない。いや、そんな相手ですら心開いていなかったか。モグゾーを相棒と呼ぶ彼だけれど、彼にすら自分をさらけ出すような真似が出来ていたかは怪しいところだし。
だったら、フォルガンではどうだったのか。多分、波長が合ったんだろう。。距離感が適切だったんだろう。ランタの居場所として、あそこは前世今世を通じて恐らくは最良にして無二だったんだろう。
でも、だからこそ敢えて馴染むであろうそこを飛び出してしまうランタ、筋金入りだ。自分らしくって、何なんだろう。ランタのいう自分らしくとは、まだランタ自身が見つけられていないものだけれど、それでも選んだのだ、こいつは。生き様を、選んだのだ。それだけは、偉いと思う。師匠も、選んだ弟子を認めちまったんだろうなあ。
しかし、反省はしてもランタがそれを活かせるとはやっぱり到底思えない。自覚を得て、他人を認める意識が生まれて、それは成長なのかもしれないけれど、果たしてハルヒロたちと再会したとして、それがハッキリとランタの変化としてハルたちから認識できるかというと、わからんだろうなあ。実際、元の木阿弥に戻りそうとしか思えない部分もあるし。
ぶっちゃけてしまうと、今回の一連の戦闘でランタが居たら!と思う場面が一切なかった気もするので、もし再会しても別にまた仲間に戻らないくても……、わりとみんな本気で嫌ってるし嫌がってるし、こういうの扱うの本当にしんどいので、いいんじゃないかなあ、戻らなくてもいいんじゃないかなあ、と思わないでもないのだけれど、戻っちゃうんだろうなあ。こんなんでも、掛け替えのないものは繋がっちゃってるっぽいからなあ。


シリーズ感想