魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>17 (MF文庫J)

【魔弾の王と戦姫<ヴァナディース>17】 川口士/片桐 雛太 MF文庫J

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エレンとフィグネリアはそれぞれ軍を率いて相対した。雪の降る戦場で、傭兵時代の因縁を終わらせるために、また戦姫としての誇りを賭けて、二人は戦うが、エレンを助けようと、リムは思いがけない行動をとる。一方、ティグルはガヌロンと決着をつけるべく、単身で王都を抜け出して荒野を行く。魔物たちによって恐ろしい変貌を遂げつつある世界で、ティグルは勝利をつかむことができるのか。それともティル=ナ=ファが地上に降臨してしまうのか。そして、ジスタート王宮の完全掌握にあと一歩というところまで迫ったヴァレンティナに対抗するために、ソフィーを始めとする戦姫たちがとる行動とは?大ヒット最強美少女ファンタジー戦記の最高峰、第17弾!

そうかー、以前のリムが16巻の表紙だった時のアレはここに繋がってくるのか。あれ、上手いこと両手は枠から外れていて得物は見えないようになっていましたけれど、ちゃんと得物を握っている絵もあるんだろうか。
いずれにしても、今回クライマックスではありましたけれど、ひたすらリム激闘編、みたいな感じすらありましたね。フィグネリア戦も、もちろん戦姫同士直接刃を交えるのはエレンとフィグネリアでしたけれど、リムもオマケ扱いではなく、二人で一緒に戦っていた感はしっかりありましたし、リムが身を呈さなければ絶対に勝てない展開でしたからね。それに、ここでの決死の行動がある意味、かの竜具に「こいつなかなか見所あるじゃねえか」と認めてもらえるきっかけになってたんだろうし。
てか、普通ならここでリム死んでてもおかしくなかったんだよなあ。あれ、普通死ぬよね。フィグネリアと双剣両方が意図して手加減してなかったら。
振り返ってみると、見据えるべき未来をもう見定めている戦姫たちに対して、今回は敵陣営の三人、フィグネリア、ガヌロン、そしてヴァレンティナの、現在に至る過去のきっかけとなるエピソードが印象的でありました。
フィグネリアは、最初登場した時は味方になるものかと思ったんですけどねえ。エレンが揉めてる相手ってわりと感情的な側面が強かったので、和解する余地は十分ありそうでしたし。ってか、リーザなんか今デレデレじゃないですか。まあ、あれはエレンが一方的に敵視しまくっていたところがあるんですけれど、和解したあとのリーザのあの照れながらの「ともだち」宣言にはこっちがこっ恥ずかしくなってしまいましたよっ。
でも、フィグネリアは彼女の抱えていたエレンたちの育ての親との因縁を思うと、自分の野望を捨てることが出来ない状態にすでに定まってたんですよね。彼を看取った時点で、彼の夢を自分の夢で終わらせた時点で、彼の夢を引き継いだエレンとの和解はなかった。新しい自分の夢を得たエレンとリムと、何らかの決着をつけなければならなかった。そして、止まることをもう自分に許さないフィグネリアには、その決着の付け方は一つしかなかったわけだ。それは、追い続けた夢だけれどヴァッサリオンと分たれてしまった時点で、どこか寂しい孤独な夢だったんだなあ。
孤独と言えば、ガヌロンもそんな感じで。彼の、他の魔物と全く異なる行動原理がずっと不明のままだったんだけれど、今回彼の素性が明らかになりその真の目的も明かされたことで、この男も妄執というにはあまりに寂しい、孤独を抱え続けてしまった結果だったんだろうなあ、と胸に沁みるものを感じてしまったのでした。
もしかしたら、一番欲望とは程遠いところに居た男だったのかもしれない。いや、欲と言うなら欲か。結局、悠久の果てに最も会いたい人にもう一度会おうという願いにしがみついていた、とも言えるわけだし。その結果として、幾つもの謀略で都市を焼き、戦火を振りまき、最終的には女神すら喰らおうとしたわけだからとんでもないっちゃとんでもなかったのですが。
そしてラストにヴァレンティナ。ってか、ヴァレンティナ。ルスランの不予には本当に何にも関わってなかったのか。あまりにもタイミング良くルスランが復活したので、彼の病もヴァレンティナの仕込みで復活から時間を置いての病の再発まで全部図られていたのか、と一時は考えていたものでしたが、まさか全部特に仕込んでいなかったとは……。いや、効果のある薬の調達は行ってたみたいだけれど、決してその効果に確信があったわけではないようだし、綿密なタイムスケジュールが組まれていた節はまったくないようなので、ヴァレンティナって謀略家というにはやっぱり行き当たりばったりすぎるぞ。事を仕掛けて起こして全体の流れを常に掌握し続けるという主導権を握り続けるタイプの戦略家ではなく、起こった出来事を利用して自分の都合の良い流れに持っていく、というタイプなんですよねえ。もちろん、自分で色々と仕掛けたり動いたりもしているのですけれど、意図した効果を得られなかったりとか、わりと至近の効果しか狙ってなくて別に何十手先まで相手がどう動こうと関係ないように持っていく、という風ではありませんし。
いやあ、本来ならこれヴァレンティナに勝ち目ない手筋だったんだけれどなあ。唯一の味方であったフィルネリアもあっさり脱落してしまったわけですし、彼女と組んで企図していた幾人かの戦姫の脱落はまったく果たせないままでしたし、それが結果としてあんな形になってしまったわけですから、この娘何気にすげえ運が良い。
正直、ここからどう転がるのかが想像し難いんですよね。ヴァレンティナとの決着の付け方もどうなっていくのか予想付かないし、それ以上にエレン以外の戦姫をティグルはいったいどうするのか。エレン一人だけなら、難しくも無理筋を通す手段は無きにしもあらずなんだろうけれど、それ以外の戦姫たちも抱え込むとなるとジスタートが許すはずもありませんし。
そりゃあ、この一巻では終わらんかったよなあ。最終巻を延長したのは正解だったんじゃないでしょうか。
でも、このラストは引っ張り方としては凶悪極まる……。

シリーズ感想