近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係2 (ファミ通文庫)

【近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係 2】 久遠侑/和遥キナ ファミ通文庫

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雨宿りのなか、突然の由梨子からのキス。幼い頃より長い時間を過ごしてきた彼女から、異性としての気持ちを突きつけられた健一だが、ともに暮らし始めてわずか二カ月の里奈への感情も混じり合い、由梨子に返事をすることができないままでいた。夏、秋と、これまでとは違う里奈のいる季節を経て、子供の頃とは確実に変わった自分、そして周囲との関係を受け入れていく、健一の選ぶ答えとは―。多感に揺らめく十七歳を映し出す、恋愛ストーリー第二巻。

さすがにそれは待たせすぎだろう、少年!! とことん突き詰めるそれは誠実ではあるかもしれないけれど、十代の時間ってのはね、凄まじく濃厚で長い人生においても相対的にめちゃくちゃ重くてめちゃくちゃ長くてめちゃくちゃ密度が濃いものなんだ。アラフォーのおっさんからすると、高校生の三ヶ月ってのは大人の三年とか五年くらいに匹敵しかねないほどの代物なんだよ。
もちろん、人生なんてその人のもんだ。その貴重な青春の時間を大事に使うのも良い、無為に垂れ流しにしてしまうのだって実のところ構わない。勿体無いとか言われようがそんなの関係ねえ、あとで後悔するかもしれないし、後悔してからまた時間があってそう言えばなーんもせんかったな、あの頃、なははは、なんて笑い飛ばせるようになるかもしれない。好きに使っていいんだよ、自分の時間なんてものは。
でもそれを、自分だけじゃない、人にまで押し付けるというのはやっぱりひどい話なんだと思う。それだって結果として相手も受け入れてくれるかもしれないし、いい思い出として遠い未来に笑い飛ばしてくれるかもしれない。実はそうやって待たせ続けて誠実に考えて出した結果だったからこそ、先々までうまくいくだけの「説得力」「意味」「意義」そして「確信」を得られたのかもしれない。本気で心から手を取って、後顧の憂いをなくして進んでいけるだけの「なにか」を生み出せたのかもしれない。何が正しかったなんて、結果でしかわからないし実際は結果を見てすら判断できないものなんだろう。
だから、それは正解だとか間違っていたとかそういう範疇の話じゃないのだ。ただ、それは酷い、という話なのだ。その実感を、彼と彼女は噛み締めていくことになる。彼女の方は、それを違うものに昇華するかもしれないけれど、少年、君はそれを焼き付けておくべきなんだろうな。
それにしても、いやもうここまで生活感、というのとも少し違うか、毎日を普通に過ごしている人たちの呼吸の仕方、息遣いっていうのかな、リアリティなんて言葉にしてしまうとどうにもイメージを固定化してしまいかねないんだけれど、等身大の日常描写が実に生々しいんですよね。人と人との会話の距離感というのもそうですし、自分の家の中での振る舞いとか、身近な人達とのやりとりにおける意識の揺れ方とか、劇的さは一切ないのだけれど、内も外も描写がとても丁寧であると同時に落ち着いているせいか、じっくりしみてくるものがある。
恋愛に対する向き合い方も、ちょっともどかしいくらいに動性が少ないんですよね。でも同時に、悩みに囚われすぎていない。毎日毎日、そればかり考えているというのはやっぱり難しくて、学生生活を過ごす上でやることは多い以上、そこにばかりのめり込んではいられない。それでも、自分の中に生じていく意識について慎重に考察を重ねる、考察してたのかな? とりあえず観察、というくらいかもしれない。それを誠実に重ねつつ確信を得るまで動こうとせず、動いたら動いたで周りの反応に即応できずに置いてけぼりにされてついていけなくて、ついていけよ! と言いたくなるくらいうだうだしてしまったこの少年、ちょっとどんくさいんじゃないだろうか、と実は今思った。若者はもっと軽々しくいけよ! とはなかなか言えないけれどね。過ごした人生が少ないということは、それだけ時間の比重は重いのである。タイプによるのだろうけれど、若いからこそ軽々と動けない人というのもまた少なくないのだ、きっと。
里奈の方に期待があったのかは定かではない。健一の視点からするとそうした素振りらしいものは見当たらなかったけれど、他者の内面というのはうかがい知れぬものである。いくら親しくなり家族同然となり、一緒にいることを自然と思うようになったとしても、見える深度も深まっているかどうかまでは定かではないのである。
少なくとも、由梨子の方がまだわかりやすかった。見えているのに微妙に察せられてない気がするこの少年……。お兄ちゃんが、由梨子のこともっと気を使ってやれよ、と説教したの、今更ながら深く首肯せざるを得ない。ちょっとでも気を使えるような人間に成長した要因が、里奈との生活にあったというのは面白いところだけれど。そんな健一の変化というか成長があったが故に、待てた由梨子さん。そこで待ててしまった、ということはこれからもうずっと待ってくれるんだろうなあ。いや、こうなってしまったからには追い立てるか引っ張るか、主導権握って帳尻合わせ続けそうな気もするけれど。なんにせよ、受け入れ続けてくれるんでしょうねえ、それがなんとも羨ましい。
それこそが、羨ましい。

1巻感想