超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです! 5 (GA文庫)

【超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです! 5】 海空りく/さくらねこ GA文庫

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エルム共和国を成立させ、通貨の発行によってその基盤を確かなものとした超人高校生たち。だが、異世界の人々に国を委譲するための選挙を始めようとした矢先、亡国《ヤマト》の皇女カグヤが現れた。エルムの基本理念『万民平等』をタテに、帝国に苦しめられている自分たちへの援助を求めてきたのだ。
司は旧ヤマト領の扱いについて帝国への介入を始めようとするが――
「俺はその方針には反対だ」
勝人が地球への帰還を優先するため、帝国元帥ネウロとの敵対を避けるべきだと言い出し、超人高校生たちの間に不協和音が流れ始める!
激動の異世界革命物語第5弾!!
世界の一般常識におけるモラルの上昇が平和へと繋がる道、か。これはバカにしたものではなくて、特に時代的にまだ中世であり宗教的なモラルすらも規定されていないこの世界では、現代に即したモラルを普及させていくというのは劇的な効果があると思われる。エルム共和国の国民は司たちの教導によって民主主義をはじめとした現代モデルの考え方への意識も高まっているわけですしね。
もっとも、本来なら数百年のスパンを年単位どころか月単位で進めている弊害は大きい。劇薬過ぎる上に、高まった意識に追随スべき知識などが全然追いついていないんですね。教育がもたらされていない、と言ってもいい。まあこればっかりはなあ。明治維新から百数十年経っても民主主義を持て余している日本や、本家本元である欧州や米国が迷走しているのを見ると、果たして政治システムに成熟などというものが訪れる日が来るのかと疑問に思うことも多い。
本作においても民主主義が万能にして至上の政治システムだと掲げているわけではない。事実、民主的な政治システムの運用を開始した途端、その不具合や悪用されていく様子を一番基本的な部分からだがしっかりと描こうとしている。それを加味した上で、いや民主主義のダメなところをも市民が目のあたりにすることも最初から考慮に入れた上で理想を展開しようとしている司は、まさに国家百年の計をたてることの出来る偉大なる政治家なのだろう。将来の平和と理想のために、ある程度の被害や損害も最初から組み込んでおける、という意味においても。
そりゃあ、現世利益を追求する商人である勝人が、同じ道を歩めるわけはないわなあ。むしろ、歩くほうがイビツになってしまう。どちらかが、本来の本分を捻じ曲げなければならなくなる。友人であることとパートナー足り得るかはまた異なる話なのだ。
個人的には、むしろ帝国元帥ネウロが暗躍している企みの内容は邪魔とすら思えるところなんですよね。これって、どう考えても世界の危機をもたらすものであって、異なる主義主張や生き様を貫いているモノ同士でも一致団結しなければならないシーンを生み出すものであるからして、世界を変革していく物語としてはその手の外からの強制的な協力を必要としなければならない展開というのはちょっと無粋に感じる部分もあるわけだ。そういう横やりがないまま、司が理想を体現していく上で障害をどう乗り越え、現実に向かい合い克服し、時に妥協していくか、という流れの方が興味深く堪能できるのだけれど。
痛快さを求める物語としては、対峙するのはそっけない現実ではなく、心置きなくぶっ飛ばせる悪であることが求められることは大いに理解できるだけに、そのへんどこまで手を広げ、転がしていくのか、さてさて。

シリーズ感想