魔術破りのリベンジ・マギア 1.極東術士の学園攻略 (HJ文庫)

【魔術破りのリベンジ・マギア 1.極東術士の学園攻略】 子子子子 子子子/ 伊吹のつ HJ文庫

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二十世紀初頭――めざましい科学技術の発展の裏で、人類は確固たる魔術文明を築き上げていた。世界のパワーバランスすら左右する“魔術師"を育成する機関「セイレム魔女学園」。
そこで起きた怪事件解決のため、凄腕術士・土御門晴栄(つちみかど はるな)が米国の地に立つ! 「あらゆる状況を想定し戦術を千変万化させていく――これが、陰陽師の戦い方だ」
北欧神話・死霊術・吸血鬼、様々な魔術体系を東洋魔術でブッ飛ばせ! ハイエンド魔術バトルファンタジー、ここに開幕!!
お、これは現代魔術モノとしてはなかなかガッツリした出来栄えの作品じゃないでしょうか。既存の魔術をとりあげた作品って案外少ない上に、しっかり資料を取り込んだ上でエンタメ作品として魔術という要素を再構成できてる作品ともなるとなおさらに。その上、一つの魔術大系だけではなく、古今東西の魔術を集めてきて、ごった煮のように扱うとなると【レンタルマギカ】くらいまで遡らないと、ちゃんとしたシリーズ物として成立したのってないんじゃないだろうか。
舞台が外国、というのも尚良。ヨーロッパという旧大陸ではなく、アメリカという新大陸で世界中から持ち寄られた魔術の集体として「セイレム魔女学園」という、伝統ある組織ではなく新たに立ち上げられた魔術育成機関が舞台となるというのは、新鮮さを感じられる。作中でも旧態然とした在り方とニュージェネレーションとの相克というテーマが随所に据え置かれているけれど、現代魔術モノという作品ジャンルの観点からしても、地に足が着いていながら、何か新しい観点を、という意欲を感じるだけにこの芯をブレさせることなく掘り下げていってほしいものである。
そしてまずもって、主人公が良い。女装男子というカテゴリーらしく、段々自分から女装という趣の深みにハマりつつあるところもさるところながら、晴栄の良いところはその情の厚さだと思うんですよね。そして、その情の深さ、情の厚さは彼の原動力となっている「信念」とはまったく別のところで稼働しているのである。
彼の骨の髄まで染み込んでいるだろう激情と生き様によって裏打ちされた信念を、だが彼の情厚さは時として黙念と折り畳んで後ろに回すことを可としてしまうのである。
ただのお人好しとは貫目が違う。漢の揺るぎのない優しさが、この女装男子からは泰然自若と滲み出ているのである。
かっこいい。

惜しむらくは、事件にタイムリミットがあったせいもあるんだろうけれど、ヒロイン二人、ティチュにしてもフランセスにしても、親交を深める時間が殆どなかった、フランセスに関しては殆ど初対面だろうそれ、というくらいの接触時間しかなかったんですよね。たった一日、たった一週間、そんな僅かな時間を掛け替えのないものとして描くことは十分可能である。その僅かな出会いと交流の時間を持って、命をかける戦いに挑めるだけの絆を得ることもあるでしょう。どういう作品は山ほどある。ただ本作に関しては、え? まだそこまで仲良くなってないんじゃない? 関係が醸成されてないんじゃない? という段階で事件のクライマックスまで突入してしまったので、陥れられたヒロインのため、狙われたヒロインのために、黒幕を暴き出して決戦へと挑む、という観点での盛り上がりに関しては、ややものめり込むだけの想い入れがまだなくて、テンションがあがりきれなかった部分があるんですよね。せめて、もう少し日常パートというか、普段の生活で交流が深まってお互いのことをよく知って、一歩一歩相手の内面へと踏み込むような密接さへと至る手前、くらいまで言ってたらもっと個人的には盛り上がってたんですけどね。いかんせん、特にフランセスは接触が短すぎた。
一巻というスタートゆえに情報やキャラ紹介など詰め込むものが多かったこともあるだろうし、次からもっとどっしりと腰を据えてキャラ個人や関係性を掘り下げていったり、ストーリーを展開していくのなら、たちどころにスケールアップしていきそうなポテンシャルをひしひしと感じています。なので、期待大ですよ。