聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク> 20 (GA文庫)

【聖剣使いの禁呪詠唱<ワールドブレイク>20】 あわむら赤光/ refeia GA文庫

Amazon
Kindle B☆W

完全崩壊にむかう亜鐘学園で、諸葉は六翼会議の首魁“炎王”熾場亮と再びの対峙を果たす。かつて学園で並ぶ者なき英雄として活躍し、諸葉以前にランクSへと到達した『もう一人の少年』。誰よりも冷静でありながら、誰よりも燃えさかる魂を宿した若き戦士は、いかにして悪魔になり果てたのか?そして今、灰村諸葉を前に練り上げた必勝策が狡猾な牙をむく…。むかいあう超最強VS超最強!!燃やせ。凍てよ。天地にせめぎあう炎と氷。在りし日の悔恨をくべ、竜をも呑みこむ火が燃えあがる!!語られざる物語が明らかとなる、学園ソード&ソーサリィ第20弾!!
ほぼ熾場視点から語られる第20巻。敵キャラ視点で話が進む、というのはかなり珍しいと思うんだけれど主人公の諸葉が熾場さん視点だと完全にラスボスなのはなんともはや。そもそも熾場さん、敵の首魁というには強キャラ感を自分から消しているような人だったから、やたら反則級の諸葉相手だとこう見えてしまうのもわからなくはない。そもそも、戦闘それ自体にはあまり意味を見出すタイプじゃないし。
それに、亜鐘学園黎明期の殉職者が出まくっている環境最悪の頃の悪戦苦闘を見せられると、熾場さんの自身への無力感が伝わってくるんですよね。どれほど力を蓄えても、守りたいものを守れなかった熾場さんにとって、自分の力を誇るなんてとても無理なんだろうし、それに比べて、犠牲者を出さずに仲間たちを守ってみせた諸葉への羨望や憧憬もよくわかる。
それにしても、マリさん校長先生、本当に苦労したんだなあ。黎明期の学園の状況というものは本当に酷いもので、教育方針も敵に対する戦術も何も確立されていないまま現れるメタフィジカルに対して無為に投入されて、次々に死んでいくまだ未熟な学生に過ぎない子どもたち。学園上層部は権力欲に取り憑かれてそもそも生徒を護るという発想もない。
ここからマリさん、ただの学生、ストライカーズの隊長という立場から学園の実権握って、諸葉が入学した頃にはあれだけの態勢を整えてみせてたんだから、本当に大したものである。しかも、それ以前に熾場さんと宇佐子の出奔という事態まであったんだし。
あのマリ校長のトレードマークである魔女の帽子の由来の話もあって、熾場さんと宇佐子が彼女にとってどれだけ大事な存在だったか、今更ながら納得させられる。そりゃあ、あの二人が目の前に現れたら、黙って攫われるとは言わないけれど、逆らう気力みたいなものはなくなってしまうかもしれない。まあそれだけではなく、彼らが完全に悪堕ちしていないという信頼もあったのだろうけれど。
自分を悪辣極まる悪魔と標榜する熾場さんだけれど、どれだけ自認していても人の良さが滲み出てしまってて無理があるんだよなあ。それに、宇佐子がそんな悪魔みたいな輩についていくはずがない、という信頼もありましたし。そんな彼らが、明らかに悪極まっている駿河の下に黙ってついている、というのが違和感ありましたけれど、そういう絡繰りを用意してたのか。田中先生もそっち側に加わっててのね。
田中先生の方は、どうしてインビジブルみたいなのになってたのか不思議ではあったんですよね。一族ぐるみなのかと思ってたら、田中息子の方は何も知らなかったみたいだし。
いや名前が田中太郎ってどれだけあからさまに偽名なんだ、ってそれでしたから古来からの暗殺者一族、みたいなノリなのかと思ってました。まさか、本名だったとは。
しかも、回想聞いてたら特別な事情や理由があったわけじゃなくて、結構なんとなくで今のポディションに収まっちゃってたんですねえこの人。で、後戻りできないところまで泥沼にハマってしまったと。元々善人以外のなにものでもないだけに、余計にしんどかっただろうなあ、この現状。
ともあれ、ここまで来て熾場さんが独自に動き出した、というのは展開としては興味深い。なんとなく、それやらかしてしまったんじゃ、という思いもあるのだけれど。宇佐子さん、ぽわぽわ癒し系キャラのくせに、めっさ幸薄そうなだけになおさらに。

シリーズ感想