お前(ら)ホントに異世界好きだよな ~彼の幼馴染は自称メインヒロイン~ (電撃文庫)

【お前(ら)ホントに異世界好きだよな ~彼の幼馴染は自称メインヒロイン~】 エドワード・スミス/ ERIMO 電撃文庫

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異世界なんて、現実にあるわけないだろ。フィクションだよ、フィクション。幼馴染の亜希奈はアニメやラノベが趣味で異世界ラブ!なようだが、まったく俺には理解できないわ!!しかしある日、現実とは思えない場所、異世界と呼ぶしかない空間に足を踏み入れる。これはもう「実在した以上、現実だ」と考えざるをえないだろう…。世界神会議から「異世界へ転移して戻ろうとしない者を帰還させてほしい」と依頼された俺は、神々の代行者として、亜希奈とともに様々な異世界へ出向くことになる。現実主義者の俺が、異世界の平和を守ることになろうとは…!
いいなあ、この幼馴染関係。どちらかが一方的に片方を引っ張るのではない、お互いに知らない世界へと導き合い、閉じた扉の向こう側に引っ張り合い、行きつ引かれつ支え合い助け合う関係だ。主人公の功刀匡一郎も、彼のメインヒロインである浅木亜希奈も本質的には一人で生きられるくらい自立し独立した人間であるように見える。誰かに依存する必要を内包していない人間である。だからこそ、面白いことにだからこそ、違う可能性を見せてくれてそこから生じる危険性から守り、錯誤を乗り越えて導いてくれるお互いを、もう無くてはならない存在だと思ってるんですよね。それこそ、彼が、彼女がいないと生きていけない、と思うほどに。必要性がないのにそこまで求め合う関係というのはつまるところ、余分から生じる希求である。それこそ、最も混じりけのない純粋な求めであり想いなんじゃないだろうか。
幼馴染という関係は密接であるほど依存性が垣間見え、どちらかが寄りかかった、或いはどちらもが寄り掛かりあった関係であることが見受けられるのだけれど、匡一郎と亜希奈ほどお互いに引っ張り合いながら、クルクルと回ってあっちこっちに自由に楽しそうに跳ね回る関係はなかなか見たことがない。実に素敵な二人である。カップルであり相棒であり、パートナーである。
異世界を駆けずり回り、各地で元の世界に戻らずに居座っている現世界人を連れ戻すエージェントの仕事(バイト)をはじめることになった二人。案内人は、仕事が出来る女を自称し自認し疑いもしない極めつけのポンコツ女神ミカリアで、頼りにならないことこの上ない。なかなかハードなミッションであるはずなのだけれど、何しろメインの二人が実に安定していてお互いに足りない部分を過不足無く補い合う関係なので、多少ポンコツが状況をしっちゃかめっちゃかにしようと動じないのが実に安心なのである。いやこれ、実際匡一郎と亜希奈どっちかに比重が寄ってたらもっと面倒くさいことになっていたと思うんだけれど、能力的な部分だけじゃなくてむしろメンタル面。片方が気づかなかった部分をもう片割れがさっさと気づいてフォローしたり、思考の行き詰まりを補ったり、雰囲気を明るくしたり相手を安心させたりすることに余念がないので、本当に安心して見ていられたのでありました。
彼らをエージェントに仕立て上げた世界神会議も、ミカリアを案内人にするくらいだから大丈夫か、と思う所なんだけれど、神の集った会議にも関わらず考え方が一方的ではなく、むしろ事の良し悪しを一面的に判断しないために、人である匡一郎と亜希奈を代行者として任命したくらい、フラットな味方の組織であり、また匡一郎たちの意見や要請も非常に客観的かつ状況に合わせて柔軟に判断して認めてくれるので、後ろ盾がしっかりしているとこれほど頼もしいのか、と思えてくる。そこがどうして、ここまでちゃんと仕事の出来ないミカリアを派遣してきたのかが本当に不思議なのだけれど、ミカのどうしようもないミスの数々が、結果的に見るとサイコロの良い目としての意味をなしていってたのを見ると、運命神のお導きみたいなところがやっぱりあったんでしょうなあ。あの手の自覚のないポンコツは、現実では本当にたまらん存在なのだけれど。愛嬌は大事である。愛想は関係なく。

エドワード・スミス作品感想