りゅうおうのおしごと! 7 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと!7】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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「文句があるならかかってこい! 八一!!」
 清滝一門の祝賀会。師匠である清滝鋼介九段から叩きつけられたその
言葉に、八一は衝撃を受ける。
 順位戦――名人へと続く階段で、昇級のチャンスを迎えた八一と、降
級の危機にある清滝。師匠の苦しみを理解しつつも八一は己の研究を信
じて破竹の進撃を続ける。
 一方、棋力のみならず将棋への熱をも失いかけていた清滝は――
「衰えを自覚した棋士が取れる手段は二つ……」
 残酷な運命に抗うのか、従うのか、それとも……?
 笑いあり涙ありの浪速ド根性将棋ラノベ、号泣必至の第7巻!

これもう、何を言えってんだよぉぉ。もうあかん、あかんて。こんな、世界一かっこ悪くて世界一かっこいいおっさんの話とか、泣くよ! マジ泣きだよ! いやもうマジで泣いちゃったよ、どうしてくれんの!? ラストの対局の、あの熱さとかもうなんなんだろう、すげえよ、ほんとになんかもうたまらん!!
将棋はボードゲームである。とかく必要なのは頭脳の回転だ。しかし、その知力記憶力をフル回転させるには凄まじい体力が必要となる。特に順位戦の持ち時間は6時間。一人6時間である。それはそれは果てしない戦いが、精根尽き果てるまで繰り広げられるのだ。
だからこそ、老いは覿面に実力へと作用していく。女性棋士の誕生の壁となっている大きな要員のひとつもまた、男女の体力差とも言われている。作中で、八一が銀子の弱点として指摘しているのもまた、その体力の無さだ。
自分も四十間際となって痛感しているのだけれど、人間本当に年齢このあたりから気力体力が目に見えて下り坂になっていく。いやもうマジで。おっさんもね、実際におっさんになるまで言葉ではそういうものだと理解していたつもりだったけれど、事実そうなってみると本気で「びっくり!」するから。え?なにこれ? と頭が体においつかない感じであかんくなってくから。若い人には絶対に伝わらないだろうけれど。こればかりは、直面してみないとわからないだろうし、実のところ体力の低下に直面した今になってなお、わけがわからん!! 
いや、こんなことを力説しても仕方ないのだけれど、ともかく棋士の全盛期というのはなんだかんだと二十代三十代、いや十代が一番そうなんだ、という強い声もあるほどで、かの異次元たる羽生善治ですら、最盛期は終わってしまった、と言われている。まあ、この人が本当にバケモノなのは、その最盛期が過ぎ去ってしまったはずなのに、まだバリバリにあっちゃこっちゃ蹂躙して暴れまわっているからで、ほんとなんなのこの人人間なの!?状態なわけですが。
であるからこそ、五十代へと差し掛かった清滝師匠の衰えは顕著であり、それはもろに順位に現れ、棋譜に現れ、精神面にすら浮き上がってしまっていたわけです。
折しも、将棋界は今まさに革命期。将棋ソフトの出現とその活用法の発展によって、研究は加速に加速を重ね、それについていけない棋士たちはA級だろうと九段だろうと容赦なく振り落とされていく、まさに未曾有の激流が荒れ狂う激動の時代の真っ只中。そして今、その突端を突っ走っているのが、九頭竜八一竜王であり、幾多の若き棋士たち、命を削って這い上がろうとしている奨励会員たち。
そう、古き棋士たちはその背中を若者たちに見せ、追わせるどころか、追い抜かれていった若者たちの背中を、清滝師匠のような棋士たちが見送るしかないような現状が、今厳然と現れてしまっているのである。
古いものは追い落とされ、見捨てられ、放置され、忘れ去られていくのか。
何もせねば、そうなってしまうのでしょう。現状に妥協し、諦め、情熱を失い、炎を消して、遠ざかっていく背中に背を向ければ、そうなるのでしょう。
だがしかし、だがしかし、師匠はそうではなかった。そうならなかった。そうしなかった。
現実は覆らない。自分が遥か遠くに取り残され、今若者たちの背中を見上げるしか無い存在である事実は覆らない。それを、この人は苦しんで足掻いてみっともなく無様で情けない有り様を露呈し、八つ当たりで老害を晒し、しかしそんな自分の最低さを、愚かさを、情けなさを、認め受け入れ、恥じ入り、置物と化したプライドを勢い良く放り投げ、このおっちゃんは生まれ変わったのだ。新生したのだ。新しい時代の流れに乗ったのだ!!
だが、生まれ変わろうとおっさんは厳然としておっさんなのである。どうしたって、おっさんは若者にはなれない。新しくなんてなりきれない。おっさんは、どうしようもなくおっさんなのだ。
その事実に改めて直面した時、おっさんはついに真に目醒めるのである。新しきおっさんに。古きからこそ蓄積されてた経験と、若者たちとの親身の交流のよって吹き込まれた新しい風を併せ持った、古きと新しきのハイブリッドなネオおっさんに。
それは、師匠のその行動は、活動は、新たな棋士としての在り方は、まさに新風となって将棋界をかき回す。将棋ソフトの隆盛をきっかけとして将棋界そのものを覆い尽くそうとしていた、何かを置き捨てたまま多くを取り残したまま景色そのものを一変させようとしていた局面を、反対側の古きものからの逆襲という形ではなく、まさに古きと新しきを両の足場として次のステージへととても多くのものが、沢山の振り落とされるものを出すのではなく、まともな人間が住めなくなる世界になるのではなく、将棋を指す棋士たちの住まう世界全体の階位が一つあがるかのような。
これもまた、革命の風!! すべてを吹き飛ばす暴風ではなく、まるですべてに生命を吹き込むような優しくも頼もしい風!!
でも、そこに吹き荒れるのはやはり、熱波である。戦う棋士たちの、生命を櫛る鬩ぎ合い。勝ちたいという意思を握り込んで殴り合う凄まじき闘争。だからこそ熱い。だからこそ面白い。だからこそ、そこに感動が生まれるのである。見るものを涙させる物語が生じるのである。そこに自分も立ちたい、たどり着きたい、その世界の中に飛び込みたいという根源の衝動を生じさせる輝きが発せられるのである。

まさに、歴史に残る名勝負。伝説として残るだろう戦いでありました。
見ているだけで、ただただポロポロと涙が溢れて止まらない一戦でありました。

嗚呼。

幾ら尽くしても語りきれないものがある。そしてそれは、読めば一瞥を以て伝わるのだ。だからこそ、一読あれ。
傑作である。




それはそれとして、デンジャラスビーストを銀子ちゃんに着せてデンジャラスする八一は、がちで変態である。言っとくけど、中学生相手も十分ロリコンだからな!! あと、銀子さんもノリノリすぎである。絵師のしらびさんもノリノリすぎである。おっさんの熱さにアテられておっさん描きすぎた反動か、熱量がそのまま銀子ちゃんにも注がれてしまった結果かわからんけど、もう自重してはいけない。もっとやれ。

熱い物語の中で何気にメインから外れてしまっているせいか、ちょっと陰に入っているけれど、天衣の快進撃がひたすら続いている。月夜見坂さん、ヤラレ役極まってきてるんじゃないだろうかw まいど、鮮やかにぶっ飛ばされすぎですじゃ、大天使。しかし、この快進撃は反動がありそうで怖いんだなあ。八一が、なんか天衣の弱点みたいなの気づいている素振り見せてたし。
でも、角頭歩の奇襲戦法は、ちょうどアニメ四話で天衣が新世界でメタメタにやられてしまった戦法でもあって、それをここで持ってくるか、となかなか感慨深い。

最近、銀子ヒロインの対抗馬って、アイじゃなくて創多くんなんじゃないか? という疑念が生じ始めた。ってか、創多くんが八一に一喝されてキュン死しておられる!!  この竜王、小学生なら男女関係なく見境なしか!! 

シリーズ感想