やりなおし英雄の教育日誌 2 (HJ文庫)

【やりなおし英雄の教育日誌 2】 涼暮 皐/桑島黎音

Amazon
Kindle B☆W

存在しないはずの、六人目の正体は……?

アキの指導により、効率的にその実力を向上させていく救世科の面々。そこに突如現れた転入生リューリは、アキの知る未来にはいないはずの救世衆だった。
しかし、彼女はアキを知っているらしく彼のことを『パパ』と呼んでくる。混乱するアキをよそに、早々にクラスに馴染むリューリ。しかしある日、教え子の一人・イフリアが突如昏睡状態に陥り――。
失敗した未来を覆す、元英雄によるバトルファンタジー第2巻!!
うわぁ、思いっきり振り回してきた。
通常、時間遡行モノってかつて遡行者が経験した過去をなぞりながらそれを改変していく、という道を辿るはずなんだけれど、一巻の段階で結構齟齬があった上にこの二巻ですでに一周目の歴史では起こってなかったことが頻発しているどころじゃなく、遡行者であるアキが「え? なにこれどうなってるの?」というような状況がわんさかと起こってしまい、もう一周目を経験しているなんてアドバンテージは早々になくなってしまってるんですよね。まだ二巻の段階で!!
すべてが未知。さっぱり未知。一度、仲間を全員失い、自身も力を失って、人類が滅びる寸前までの末路を経験した上で足掻きに足掻いてやっとこ魔女の力を借りて過去に戻ってきたのに、結局のところアキは仲間たちのことも含めて、多くを知らないままだった、ということなのか。
やり直し英雄なんてタイトルを冠しながら、やりなおしなんて安易なやり方をまったく許して貰えない主人公のアキ。難易度ウルトラハードモードである。
とはいえ、最低限学園崩壊して教育も中途半端なまま何もわからず最前線に放り込まれる、というルートは回避しているので、決してより悪化している、というわけではないのは安心材料というべきかしら。一巻では登場していなかった救世班の最後の仲間も、思わぬ形ではあるものの姿を見せてくれたわけですし。でも、アミという過去には居なかったイレギュラーが存在しているだけでも相当なのに、ここでさらにイレギュラーたるキャラをツッコんでくるとは。
こうなってくると、過去に遡行してくる前の魔女にあってからのアキの、失われた記憶もかなり気になることになってしまうんですよね。単純に魔女に灰色を教えて貰って過去に遡ってきた、というだけじゃ明らかにないっぽいし。そこで、一体何があったのか。
ともあれ、こうも一周目の歴史があてにならなくなってくると、アキも感傷に浸りながらかつての仲間たちである生徒たちを遠い目をしながら見守るなんて余裕かましていることもできなくなって、目まぐるしく変わる未知の現在に対処するのに精一杯で、その分純粋に先生していたんじゃないでしょうか。だいぶ、大人げない先生ではあるのですがいい意味で壁がなくなってきた気がします。今となっては、かつてのような同じ世代の生徒として学んだ学友として、戦友として並ぶことは叶わず、どれだけ打ち解けても生徒と先生という立場は消えないわけですからね。無意識の壁、というか感慨というべきか、アキがソニカたちに向けていた感情は当のソニカたちにも違和感というか戸惑いを生じさせるものでもありましたから、アキの方にそうした余裕がなくなった分、生徒たちの方からももう居心地の悪さみたいなものも解消されたんじゃないでしょうか。まあ、生徒たちの方もそれどころじゃあなくなった、とも言えるのかもしれませんか。今回はイフリアでしたが、自分たちにまつわる問題による負荷が、仲間たちや先生たるアキへの色々余計なことを考える余地をなくして不純物を濾過していったような感じになったというかなんというか。
いやそれにしても、アキが前回の過去では経験しなかったこと、知らなかったこと、なにがどうなってるのかさっぱりわからんことが本当にわんさかと湧き上がってきて、彼が最初に経験した一周目の過去というのは、殆ど何も明らかにならないまま進行して死滅してしまったんだな、というのがわかってきて、なんとも複雑な思いである。早々、世の中単純なものではなく、目に見えないところでうごめく多種多様な事実と真実が埋まっているんだなあ、と。それらが一斉に地上に這い上がってきたこの二周目は、ある意味一気に世界に起こりつつある出来事の真実に近づきつつある、ということで、ただ過去をなぞりながらチマチマと小さな改変を加えていくような話を初っ端からダッシュで助走してきて思いっきり蹴っ飛ばすようなドラスティックな動きで、なにはともあれ面白し!!

1巻感想