物理的に孤立している俺の高校生活 2 (ガガガ文庫)

【物理的に孤立している俺の高校生活 2】 森田季節/MikaPikazo ガガガ文庫

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こ、これが友達のいるベタな夏休みの力か!

波久礼業平には友達がいない……こともない。自慢ではないが、最近友達ができた。彼と同じく残念な異能力という悩みを抱えた、菖蒲池愛河と高鷲えんじゅの二人だ。(高鷲えんじゅは頑なに業平を友達と認めようとしないが)
とはいえ、業平の持つ異能力、無意識に半径1m以内の人間のエネルギーを吸い取る、「ドレイン」はもちろん健在である。相変わらず、物理的に孤立していた。
もの悲しい状況だが、業平にとって久方ぶりの「友達がいる夏休み」が目前に迫っていた。夏休みの計画を立てようとする矢先、彼のクラスに季節外れの転校生がやってくる。さっそく、えんじゅは彼女に狙いを定めようとする。

「よく考えてみなさい。あの子は夏休み直前の時期に、この学校で友達がいない。友達候補として勧誘するには、かなりのチャンスだと思わない?」

確かに一理あるかもなあ、と思った業平だったが、案の定転校生もまた残念すぎる異能力を持った少女であったのだ。しかも、そんな中で犬猿の仲となっている幼馴染・竜田川エリアスと仲直りしろという命令まで下されてしまい――!?

残念系異能力者たちが夏休みを満喫(?)する、青春未満ラブコメ第2弾!!
本作って、明確な言語化したテーマを設定した上で描いてるんだろうか。物理的に距離を置かなければならない業平を主人公として、人間関係の距離感に主眼をおいて物語を書く、みたいな。
今回主に描かれているのは、業平と彼の幼馴染……というには些か微妙に距離感の遠い、敵同士を自認しあう竜田川エリアスとの距離感の再構築。彼女との距離感というのは本当に微妙というか曖昧で、幼馴染という言葉から連想される仲の良さというものは幼い頃からとんとなく、友達というにも縁が薄い状態からはじまり、業平が見せた自身の能力へのスタンスを目の当たりにしたエリアスが自分の能力と業平の能力の対比からくる煩悶から生じた敵愾心が、二人の関係の歴史の大半を埋め尽くしている。
本来縁が薄かった二人が曲がりなりにもお互いを強く意識し続けている要因が、エリアスの敵意にあるという出発点からして複雑で、またエリアスが業平に対して敵意はあっても人格に嫌悪の類いは抱いていない、というのがまたややこしさを煩雑なものにしていて、とにかくよくわからん関係なんですよね。
周りから仲直りしなよ、と言われてもいやそもそも仲直りするような関係じゃないし、とうそぶくのはわりと真剣な返答だったのかもしれない。そもそも、お互いの関係、お互いの距離感について定義付けがなされていないせいで、当人同士もなんかよくわかっていなくて、はっきりしているのはエリアスがどうして業平に敵意を抱いているのか、という部分だけ。いやそれすらも、二人が顔を突き合わせて話し合った結果として浮かび上がってきた事実なのかもしれない。だから結局の所、二人に必要だったのはその関係の定義付け、だったのだろう。
まあ、それに成功したかというと怪しい所なのだけれど。それでも、お互いにもやもやした気持ちを自分だけで抱え込んだままだった現状を、お互いそのもやもやを話すことで共有することが出来たお陰で、相手が自分をどう思っているのかというのをある程度把握しあえた、というのは二人にちょっとした「すっきり感」をもたらすことには成功してるんですよね。
それでもやっぱり二人の関係は定義付けも明確なわかりやすさも固定できず、曖昧模糊としたつまり何なんだろうというほか無い関係として継続してしまうのだけど、敢えて言うならそれって「友達」でいいんじゃない?というところにまでは辿り着いたのかなあ、というところ。

新しく登場した転校生の汐ノ宮さんは、面白いことにこの手の曖昧な距離感の人間関係、というものをさっぱり理解できないタチの人らしく、非常に明確な区分を以って分け隔てないと混乱してしまうようで。ただ、前の学校でそのあたりで大失敗をしているために、はっきりとした基準に基づかない曖昧模糊とした関係や、ふわふわとしたその場の状況や雰囲気、関係によってその言動の意味する所が変わってしまう、というような状況が存在する、そしてそれを自分はうまく把握や認識が出来ないというのをちゃんとわかっている。
わかっているけれど、判別できないのでどうしても空気が読めない言動をしてしまいがちで、えらく慎重な物言いに終始するところがある、というキャラになっているっぽい。
出来ないことをわかったからと言って、それが出来るようになるかと言うとそうじゃあないのが辛い所なんだよなあ。あっさりメイド長を切り捨ててしまったときのように、自認していても自覚できない場合もある。エリアスとの微妙な関係にスポットをあてる脇で、その微妙さを踏みにじり、微妙さに踏みつけられる登場人物を放り込んでくるあたり、何気にピーキーな構成というか、物語の積み重ね方をしてるんじゃないかしら、と思ったりもするのでした。
でもどう話が転がっていくにせよ、物理的に他の人に触れない、というのは女の子と仲良くなるという点については先行き詰んでるんだよね。

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