蒼穹の騎兵グリムロックス ~昨日の敵は今日も敵~ (電撃文庫)

【蒼穹の騎兵グリムロックス ~昨日の敵は今日も敵~】 エドワード・スミス/美和野 らぐ 電撃文庫

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大空で戦う「王禽騎兵」の少年少女たちは、命の限り飛び続ける――

大翼鳥に乗って戦う“王禽騎兵”が戦場の花形とされる時代。多くの優秀な騎兵たちが鎬を削る中、風よりも速く、竜よりも力強く、誰よりも蒼空を華麗に舞う少年と少女がいた。
ジュスト共和国が擁する第五七王禽騎兵隊の隊長、ラゼル。ガサツで好戦的ながら、どこか憎めない真っ直ぐな少年。
アンケルニア帝国が誇る白銀乙女騎士団の隊長、ミスラ。気さくで面倒見もいいが、ひときわ負けん気が強い少女。
背負う国家も、生まれ持った性格も、まったく異なる二人が、譲れない信念をぶつけ合いながら戦う、爽快かつ痛快なスカイバトル・ファンタジー!
彼らの乗騎である王禽と呼ばれる大翼鳥(ガルラ)がこれ、実にかっこいいんだなあ。ちゃんと人の言葉を理解している賢い鳥たちで、ただの乗り物扱いではなくしっかりと相棒しているのだ、これが。
むしろ乗ってる人間より聡いんじゃないか、と思われる場面もあるくらいだし。なにしろ、メインの二人がいい意味でも悪い意味でも「バカ」だからねえ。
昨日の敵は今日も敵、というサブタイトルは伊達ではなく、かつて敵同士であり宿敵同士であった二人の男女がロミオとジュリエットのように思いを通じあわせて相いれぬ恋を芽生えさせてしまう、なんてロマンスは全然ない。それは、繰り返される大人げない隊長同士のいがみ合いに隊丸ごとの衝突に、なんとか緩衝材となろうとしたりトラブルを収めてまわる両隊の副官同士がはじめてしまっている。
隊長に振り回され苦労しあう同士の共感が、いつしか道ならぬ恋へと発展していくモリシュたちのロマンスは、上があまりにもガチャガチャと額突き合わせてぶつかり合っているだけに、なんかもう君ら頑張れ、という同情混じりの声援を送りたくなってしまうところだ。
ともあれ、そりゃもう仲が良いとは間違っても口に出せない、というか普通に仲の悪いことこの上なしのラゼルとミスラなのであるが、ライバル同士宿敵同士、いざ大空にあがれば相性はピッタリなんですよね。似た者同士でもあるだけに、波長が合うのである。その実力をお互いに知っているからこそ、認め合う部分もある。敵同士であるからこそ、誰よりもわかってしまうところがある。
特に、ガルラを駆るということに関しては。
なるほど、正しくライバル……好敵手してるなあ。
まあでも、誰もが見上げながら感動するような一騎打ちを繰り広げながら、子供でもしないような罵り合いを絶え間なくぶつけ合っている姿を見ると、大人げない以前にまだガキだろうこの二人、と苦笑してしまうのですが。
それでも、地上ではちゃんと、いや空でも隊長として見事な貫禄と見せている二人だからして、それだけ子供になって全力ではしゃげる相手というのはお互いしかいないなのかもしれません。不倶戴天であるからこそ、唯一無二の相手である。しかして、その本気の衝突の中に色気に関するものは一つも見当たらないあたり、さて子供同士のはしゃぎ合いからの発展性があるのかないのか。

エドワード・スミス作品感想