ロード・エルメロイII世の事件簿 4 「case.魔眼蒐集列車(上)」 (TYPE-MOON BOOKS)

【ロード・エルメロイII世の事件簿 4 case.魔眼蒐集列車(上)】 三田誠/坂本みねぢ TYPE-MOON BOOKS

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「見ることは、人間の歴史で最初の魔術だ」魔眼のオークションへと招待されたエルメロイII世を待ち受けていたのは、新たなる事件だった。
魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)。それは欧州の森をいまなお走り続ける伝説。とある招待状によって巻き込まれたロード・エルメロイII世は、天体科(アニムスフィア)の一族たるオルガマリーたちとともに、魔眼のオークションに参加することとなる。しかし、エルメロイII世にとっての目的はオークションにあらず。彼にとって欠くべからざる――奪われた誇りを取り戻すことだった。魔眼を欲する者と、魔眼を疎む者。秘中の秘たる『虹』の位階の魔眼とは。幾多の瞳の見つめる中、第三の事件が幕を開く。
オルガマリー所長、この年代だとまだ幼女範囲内!!
とはいえ、このオルガマリー・アニムスフィアはFGOのカルデアの所長をやっていた彼女とはまた別の時空の彼女であり、またエルメロイ教室のメンバーであるカウレスくんはFate/Apocryphaの彼とはまた違う彼なのである。
でも、Apocryphaのカウレスくんも聖杯大戦のあとロンドン塔に来てフラフラしているうちにエルメロイ先生に引っ張り込まれて師事するようになったというので、縁は深いのだろう。
科学や物質文明にまつわる技術を使うことにためらわないなど、魔術師らしくないところはカウレスくん、先生とよく似ているしそのコンプレックスも大いに共通するものがあるだけに、エルメロイ先生としても彼には思う所あるのかもしれないけれど、カウレスくんって魔術師っぽくはないにしても、その探究心や魔術に対する真摯な向き合い方はなかなかキレている、というのはグレイちゃんも評しているところですし、優しい心を持ちながらも魔術師としての非情な判断も出来るという鋼のメンタルの持ち主ですし、他の面でも総じて卒なくこなすんで大変便利な子なんですよねえ。
エルメロイ教室というと、そりゃもう魔術師はヤバイ人種というのとはまったく別の種類のキャラがヤバイ、という子たちばかりなので、その中で常識的で優秀で有能、というカウレスくんのそれは珠玉の価値を持っているんじゃないだろうか、と今回何くれとなく先生やグレイの身の回りを整えサポートし支援しまくってくれていた彼を見てるとしみじみ思うところでありました。これが他の弟子連中だと、エルメロイ先生の胃がマッハでスパークって感じになりますし。
てか、既に不意打ちで登場したイヴェットがその登場だけで大いに引っ掻き回してくれましたしねえ。
こんな弟カウレスくんに当主の座をぶん投げて出奔してしまったというフィオレお姉さん、いったいこへ行ってしまったのか。Apocryphaで、彼女の足の不随は魔術回路によるもので魔術師として生きるのを諦めれば、歩けるようになるという話だったので、こちらの世界の彼女はそちらを選んだということなのか。
カウレスくん、いきなりの姉の出奔で当主の座を押し付けられるわ、フィオレを戻すために命を狙われるわとかなり酷い目にあっているのに、別に姉のこと怒ってる節もないあたり、出来た子だなあ。

さて、ついつい登場してきた見覚えのあるキャラクターについてばかり触れてしまったわけですが、今回はまた舞台となる場所もエキセントリックである意味ドラマティック、そしてファンタジックである。ミステリーものにおいては、ある種の懐旧とロマンを覚えるシチュエーションかもしれない。
トレインミステリー。列車の中の殺人。
いわゆるクローズドサークルと言われる舞台設定の中でも、これが特殊なのは舞台となる場所が動き続けている、というところであり、場合によっては渦中の混乱の中で予定外の場所へと運ばれていく、という他ではありえないトラブルも舞い込んでくるところにある。
本作においても、この上巻の最後において予定外の場所へと続く線路へと乗ってしまい、という展開が待っているのだが、何しろ本作はTYPE-MOONの世界であるわけで、迷い込む場所も尋常ではないところなのだ。というか、話には噂には何度も聞き及んでいたところだけれど、実際にお目にかかるのは初めてだぞ、あそこ!
「魔眼蒐集列車(レール・ツェッペリン)」という単語だけで陶酔してしまうようなワクワク感をもたらしてくれるシチュエーションでありまするのに、他作品からも潤沢に人材を集めた上で魔眼についてなど、エルメロイ先生の講義を聞きながら謎めいた事件の解決を通して、そこに関わる魔術師たちの、おそらく一番柔らかいであろう「人間」としての部分を詳らかにしていく、このシリーズってなんとも贅沢だなあ、と味わいを噛みしめるのでありました。
様々な出来事が既に山程起こっているにも関わらず、まだ実質何も起こってないんですぜ。
下巻の展開が楽しみすぎる。

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