僕専属のJK魔女と勝ち取る大逆転〈ゲームチェンジ〉 (HJ文庫)

【僕専属のJK魔女と勝ち取る大逆転〈ゲームチェンジ〉】 六升六郎太/ 装甲枕 HJ文庫

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魔法が実在する世界。魔法の乗り物を用いたレース競技で、かつて「最強」と呼ばれながら引退した少年・明日葉進也はある日、東雲早希という魔女と出会う。自分とペアになってレースに復帰してほしいと進也に頼む早希だが、魔女の才能に恵まれなかった彼女の魔法は「進也に3秒先の未来を見せる」だけのささやかなものだった。しかし彼女の魔法に意外な可能性を見つけた進也は、伝統あるレース「大如月祭」での一発逆転を目指す―!!

魔女王の呪いによって「操縦」という技能が魔女の中から失われてしまった世界。なので、「加速する箒(アクセラレーション・ブルーム)」という箒の乗り物を乗りこなすには、魔女と普通の人間がペアを組まないといけないわけだ。
箒と言っても、挿絵を見る限り掃除用具の箒じゃなく、完全にレーシングカーというか小型の二人乗り飛行機である。魔女はその魔力を燃料にして箒―ブルームを駆動させ、それぞれの魔女が持つ固有の魔法によって妨害ありのレース競技で競争相手を妨害し、人間のドライバーがブルームを操縦する、という仕組みになっている。
レースである以上、ドライバーの技量というのは無視できないと思うのだけれど、何しろレースでメインとなるのがド派手な魔法の方なので、ドライバーの方はまったく注目されず、世間から評価もされない。そのために、進也は幼馴染の魔女蘭奈とのペアを解消してブルームレースから遠ざかっていた。
彼としては、世間から評価されない事は我慢できても、パートナーである蘭奈が幼馴染としての自分を強く求めて一緒にいることを望んでいながら、操縦者としてはまったく評価もなにもしていなかった、というのは耐えられるものじゃなかったのだろう。
だからこそ、操縦者としての技量とブルームレースの経験を見込んで求めてくれた東雲早希の三顧之礼に応え、そこから魔女と操縦者としての関係から東雲早希と明日葉進也という個人の信頼関係を深めていき、本当の絆を育んでいくことになるわけだけれど、そこでちょっと気になったのが進也の代わりに蘭奈のパートナーとなった一人の女の子なんですよね。
少なくとも、操縦者としては何の想いも抱いていなくても進也は幼馴染としては蘭奈に強く求められていたのです。そばに居てくれるだけでいい、というその意図がどこにあったにしろ、強く求められてはいたのです。
でも、その子はただの据え物。操縦技術はもとよりパートナーとしても代用品。蘭奈は、再び進也とパートナーになるんだと公言し、次のレースで勝利すれば進也にパートナーとして戻ってくるように約束までしてしまうわけです。そうなれば自分はお払い箱。自分が進也よりも操縦者として優秀であることを証明しても、それは蘭奈の勝利であって、自分は彼女のパートナーから外されてしまう。
そんな立場で、全力を尽くして蘭奈の勝利のために戦う少女カエデ。
物語が進也と早希の底辺から這い上がる展開へと集約されていたので、スポットらしいスポットが当たらなかったんですけれど、彼女の心情は非常に気になるものでした。図らずも、進也のホームグラウンドであるゲームセンターで進也と出会い、交流があっただけに尚更に。
初っ端から心折れていて、レースの最中にもポキポキ折れてしまう進也に比べて、というか比べるのもおこがましいほど、このカエデという小さな女の子のメンタルって作中最強レベルだったんじゃないでしょうか。彼女がどういう思いでレースに挑んでいたのか、その内面もう少し描いてほしかった。なんか、メインよりもそっちの方が気になってしまって。
レース自体は、ここぞというときに繰り出す魔法という妨害要素が、一度使用してからのインターバルの時間なんかもあって、ゲーム性が高いものでした。それぞれの魔法も特徴的で、レースの戦略性に大きく関わってくるものでしたしね。確かに、蘭奈の魔法はあれ、操縦者の技量とかどうでもよくなるものだわなあ。
ただ、肝心のレースの臨場感というか、その光景が目に浮かぶ、とかスピード感をリアルに感じる、という点にはいささか描写に乏しいものがあって、もうちょいって感じでした。レース描写がもっと迫力あったら作品としてももっと面白さが増したと思うんですけどね。