JK堕としの名を持つ男、柏木の王道 (角川スニーカー文庫)

【JK堕としの名を持つ男、柏木の王道】 永菜 葉一/kakao 角川スニーカー文庫

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最強の会社員、爆誕。闇堕ちしたJKたちを社会人パワーで蹂躙&救済!モテまくる!?有栖川グループ社員の柏木啓介はある日、社長の思いつきで備品として聖ルルド学園へ送り込まれる。そこでは資産家令嬢のJKたちが『借金返済ゲーム』と称し、殺し合いをさせられていた。大人として見過ごせず、柏木は備品枠でゲームに介入。生徒会の久遠寺玲花を倒し、泣かし、救済する。
「サービス残業だ。お前たちは俺が救う。あとは任せろ」
「こんな大人、初めて…っ。オジサマ、素敵!あたしを抱いて!」
絶望したJKたちを救うため、柏木の快進撃が始まった。会社員と女子高生の新たな王道、ここに開幕!

めちゃくちゃおもしろかった!
これ、あらすじ詐欺、とまでは言わないまでもえらい矮小化されてますね。そもそも、社長の思いつきで派遣、という風になってますけれど、いや確かに思いつきなのかもしれませんけれどそんな軽い決断ではないのです。
聖ルルド学園という学校は「没落寸前」の企業の子息を受け入れて、その借金まみれの子供たちに命がけのギャンブルをさせている、という場所なだけに、本来なら世界に冠たる大財閥である有栖川グループは関わることが不可能。なのに社長ってば、子供たちが殺し合いのゲームをさせられていると知って、それを叩き潰すために、入校資格を得るために自分のグループを文字通り「没落寸前」にまで自壊させて、その上で自分の娘である姫乃をこの命がけのゲームに送り込む、という凄まじいことをやらかしてるんですよね。これで姫乃が失敗して負けてしまうと、有栖川グループ社員全員が路頭に迷うというとんでもねーリスクがw
あと、姫乃ちゃん、なんも知らされないで送り込まれてるあたりはご愛嬌w
自分が何やらされて、何を背負わされてしまったか、どんな場所に送り込まれてどんな立場に立たされてしまったのかを知った時の阿鼻叫喚は見ものである。まあ、そんなんでギャーーー!ってなってる暇もなく、柏木さんのやりたい放題に巻き込まれて白目向いて「ぎゃーーー!」ってなってるので、悩んでいる暇もなかったのは幸いなのかもしれません。
もっとも、あの父をしてこの娘。早々に覚悟を決めてしまって、この狂った外道学園をぶっ壊し、苦しめられている生徒たちを助けるのだ、といわば父の思惑に全面的に乗ってしまうのですが。
柏木さん、自分のことを社畜社畜とのたまって、常識や良識やその他諸々を蹂躙してってますけれど、実のところ彼って会社の家畜じゃないんですよね。会社に仕えているのではなく、彼の根源原理って入社式で出会い言葉を交わしてその在り方を知ってしまった、姫乃に仕えているいわば騎士の類なのではないだろうか。
それはそれとして、正しくかつて世界を股にかけた「24時間働けますか」系ジャパニーズビジネスマンの正当な後裔なのですが。正当というかサイボーグ化して論理回路を金槌で三回くらい全力で叩いたようなナニモノかなんですけど。
とりあえず、社畜はそんなお前みたいなターミネーターじゃないから!
社畜ならこの程度誰でも出来る、とのたまうエピソード&技能、全部ターミネーターしか出来ないから! 多分にターミネーターでも出来ないようなことも混ざってる気もしますが。
ともあれ、ひたすら独自の社畜理論を振り回しながら、速やかにやりたい放題やりたおし、リードの持ち手であるところのお嬢こと姫乃が振り回され引っ張り倒されそのまま引きずられてボロボロになって涙目になりながら、結局の所上司らしく或いは飼い主らしく、責任を持って社畜を解き放ち、あらゆる理不尽をさらなる社畜的理不尽をもって吹っ飛ばす、という爽快痛快コメディアクションという作品でした。
むちゃくちゃやりながらも柏木さん、完全に大人なので女子高生は子供扱いなんですよね。あくまで庇護する対象であり守るべき子供であって、異性扱いは一切しないのであります。子供相手ならなにしてもええのんかい、というくらい無茶苦茶している場面も多々あるのですが、とりあえずは保護者対応でありお父さん目線、お兄さん目線、大人目線で一貫している。それが、柏木さんというキャラのやりたい放題でありながら無軌道でない揺るぎない安定感に繋がっていた気がします。
まあ、そういう大人のオトコの下心のない包容力と、絶対に助けてくれるというヒーロー的な存在感……ヒーローというよりもターミネーターな感じもしますけど、そういうの見せられ、実際助けられ、守れてしまったら、年頃の女の子からすればたまったもんじゃあないんですよね。
あらすじだと、えらいチョロく女子高生堕とされてる感がありますが、かなりガチで生死の境目、或いは人間としての尊厳の境界を跨がされそうになった場面で、少女たちが一世一代の覚悟を完了したそのときに、そんな覚悟や責任から許され解き放たれる形であのターミネーターに助けられたというか蹂躙されたというか、まあそんな感じで人生ひっくり返されてしまったわけですから、そりゃ惚れますがな、てなもんである。決して軽くはない、命を賭け女の誇りを賭けるに相応しい本気の恋なのだ。
そんなピチピチの女子高生の本気の本気からすれば、大人の男による子供扱いなんてのは許しがたい暴挙なわけで……。
コードネーム『JK堕とし』はJKの本当の怖さをまだ知らない、のだ。それは、学園を裏から操る
悪意と邪心の徒との対決と、果たしてどちらが苦戦することになるのか。
まあ、やっぱりあの凶悪な社畜のやりたい放題に、JK涙目で阿鼻叫喚の地獄絵図、というありさまが容易に目に浮かんでしまうのですが。

永菜 葉一作品感想