【東京レイヴンズ 16.[RE]incarnation】あざの耕平/すみ兵 富士見ファンタジア文庫

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「この夜が明けたとき、『新しい呪術の世』が幕を開ける」
昭和20年、戦時下の日本。東京を焼く空襲に、土御門夜光と相馬佐月は『双璧計画』の実行を決断する。それは『神』を降ろすことによって帝都を守る結界を築くという作戦だった。極めて壮大で難解で運命的な儀式の決行を翌日に控えた夜。「お待ちしています。幾瀬、幾歳の彼方で。私は―あなたのものですから」月明かりの下で咲き誇る向日葵、響く虫の音―ほんの一瞬の仮初の夏の夜に、幼馴染は約束を交わす。それは彼女の魂を長き旅へと導いて―。時を超え時を繋ぐ陰×陽ファンタジー。
多分、この作品において一番困難で繊細さを要求される部分こそ、「転生」における異なる人物の同一性だったのでしょう。土御門夜光と土御門春虎は異なるキャラクターでありましたし、それにまして飛車丸と土御門夏目は同一人物というのもおこがましいくらいの全く別人でありました。
魂が同一であっても、新しい生を得たからには全く別の人物である、というのが転生モノの大半の扱いでしょう。ただ、本作において魂の転生は時系列的にも一方通行ではなかったんですよね。むしろ、未来が先にあった。それは運命の出会いではあっても、すでに敷き詰められたレールの上を行くものではなかった。往還の旅路だったのでした。
あとがきであざのさんが、この過去編を一つのシリーズを書ききったようだ、と語っているようにわずか2巻ではありましたが、激動の時代を生ききった当時の夜光たちの人生が描き切られてたと思うんですよね。相馬佐月との最後の最期まで絶たれることのなかった友情、共有できた願い、約束。仲間たちと築いた黄金の時間。飛車丸との間に育まれた大切な思い出。彼らが残したものを、いろんな形であっても受け継いでいってくれた同じ時代を生きてきた人たち。そんな想いを引き継いでいった次世代以降の若者たち。
その果てに、春虎たちが生まれた時代があり、彼ら少年少女が懸命に戦った時代へとたどり着いたんですよね。この時代の変遷、まさに目の前で描き出された夜光たちの生き様と、その後の時代を見守り続けた飛車丸の眼があり、そして春虎としてコンとして夏目として懸命に足掻いた東京レイヴンズの物語が描かれたからこそ、ラストの合一になんらの違和も感じなかったのでした。
先ず、土御門混という女性と飛車丸という式神の分けられていた部分が、あの夜光の不器用な告白で合一なされたのが、また時代降って飛車丸がコンとして生きて、春虎たちと寄り添って一緒に生きた上で飛車丸へと戻ったことが、ハードルを引き下げることに成功していたのかもしれません。
それでも、夏目と飛車丸、あんなに違う人物だったのになあ。ここまでスッと、あのラストシーンで納得が行くとは自分でも不思議なくらいで、なんか感動的ですらありました。
ああ、夏目から旅立った魂が、飛車丸となって生きて恋して、そうしてまた夏目に戻ってきたという事実に、むしろ心地よいほどの合致感を得られたんですよねえ。
過去編はじまるまでは、コンと飛車丸と夏目に、とてもじゃないけれどイコールを結ぶなんて出来なかったのに。夏目が復活するにしても、飛車丸が喪われることに凄まじい欠落を感じていたのに。
全部、埋まってしまった。見事なくらいに、満たされた。
その感覚を思い返すと、この過去編は偉大ですらあると思うのです。

そして、二人の魂は再び出会い、未だ見たことのない未来へと進み出す。ちょっともう、びっくりするくらいドキドキしています。ここからどうなるのか。春虎と夏目が、これからどんなふうになるのか。ワクワクが止まらないのです。

それにしても、本当に見どころたっぷりでした、過去編。夜光編。佐月が期待してた以上にイイキャラクターすぎましたよね。ほんと、最期まで裏切らなかったもんなあ。彼に限らず、あの時代夜光とともに生きて輝いていた人たちの中に、悪い人はいなかったんですよね。結果として悪しきを成した人もいなかった。みんな全力で、やるべきことをやろうとしていた。
あの破綻は誰が悪いというのではなく、まさに時代であったとしか言いようがなく、そんな中で夜光が願っていたものが、とてもスケールでかく、一方でその芯となる部分はびっくりするくらいささやかであったことは、なんかすごく納得の行くものでした。あの願いもまた、春虎と夜光を不可分にしてくれた要素なのかもしれません。結局、なんにも変わっていないんだ、と確信させてくれた部分でした。
この東京レイヴンズは、一貫して春虎と夏目の物語であり、夜光と混の物語であった、ということなのでしょう。その意味でも、次からの展開は真の幕開けとも言えましょう。いやもう、ほんと次はもうちょっとだけでも、早く早くと急かしてしまいたいです。早く読みたい!!

シリーズ感想