【ミリオン・クラウン 3】  竜ノ湖 太郎/焦茶 角川スニーカー文庫

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『お前の、思う様にやってみろ』。万感の思いが込められたメッセージと共に、母・東雲不知夜から託された鍵。東雲一真は、その真相の究明と大和民族統一の為に九州総連へと赴くのだが、彼らを迎えたのは予想外の敵だった。
仕掛けられた策略を辛くもくぐり抜けた一真達は、辿り着いた九州総連にて、上級自己進化型有機AI・「アマクニ」、そして呰上三四という少女と出会う。三四に対する周囲の歪な対応に憤る中、徐々に明かされていく真実。その真実に到達したとき、退廃の時代を支配する怪物が目を覚ます!!
竜ノ湖太郎が放つ新シリーズ、波乱の第三幕!!

まさに退廃の時代だ。いや、全盛期ですらこの世の悪を極めたような行状が行われていた、それも享楽や欲望の為だけに行われていた事を思えば、人類が生き残るために成される悪は必定なのか。
それとも、生き残るために悪を成さねばならない人類は、やはり滅びなければならないのか。でも、少なくとも「命」の価値を知らない怪物に蹂躙されるのだけは我慢ならない。それだけは、必ずだ。
しかし、図らずも……じゃなくて図っての事なんだろうけれど【ラストエンブリオ】の方と問われる原罪が重なってしまったわけだけれど、人類史の終焉のターニングポイントであり人類史を救済するための罪として設定されたあちらの「それ」と、この未来の世界で行われている「これ」はほぼ同一にして非なるものなんですよね。未来における破滅を避けるための罪であるあちらに対して、こちらはリアルタイム、現在進行系。当事者の切迫感、危機感は果たしてどちらが高いだろうか、と言えば決まっているのである。それに、あちらは箱庭世界での出来事。問題に直面する者たちは英雄神仏の類であって、人類史を担う存在ではあっても人類史の只中で生きている只人ではない。
一方で、こちらで「罪」に直面しているのはまさにその退廃の時代とかした未来の只中で必死に生き残ろうとしている只人たちなのである。
この点に関して、一真は未だに当事者になりきれていないと言える。彼の価値観はどれほど特別であっても平和だった21世紀が基準であり、来訪者の軛から逃れられたわけではない。
ならばこそ、その罪を受け入れるか拒絶するかを問われるのは一真よりも、この時代で生まれ生きてきた者たちになる。双子たちは、厳しい選択を迫られることになるなあ。幼いながらも、戦士としての覚悟を持って生きている、そして弱き者たちを護り抜く決意を持っている彼女たちを子供扱いするのは間違っているのだろうけれど、彼女たちの善良さを幼さが支えているのならやはり酷と言わざるを得ない。
しかし、一真くん、いい加減入手した情報を誰にも明かさず、共有する相手を慎重に選別しているの、ちょっと巧遅が過ぎるんじゃないかと思ってたし、アウルゲルミルのアマクニに伝えて、という遺言を聞いていながらまたぞろ情報の受け渡しを渋ったのについてはさらに「むー」と顔をしかめたものだったのですけれど……うん、それはちょっと予想していなかった。
ジャバウォック、悪辣すぎるだろう。
死体を利用したトラップが効果を発揮する、ということは死に対する厳かな考え方があるからこそ、であって、それを褒めるような輩にはそもそもそういうトラップは通じない、効果を発揮しない、というのをこの怪物はわかっていないのだろうか。どちらにしても、これを王冠種というには「虫酸が走る」。人類史の存続を問い争う相手として、これを選ぶのはなんというか嫌だなあ。
こういう輩こそ、盛大にぶっ飛ばして欲しいものであるが、果たして新しいミリオンクラウンはそれを見事に成し遂げて、ハッピーエンドを引き寄せてくれるのだろうか。

シリーズ感想