【終末なにしてますか? もう一度だけ、会えますか? 07】 枯野瑛/ue 角川スニーカー文庫

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一人の少年が作り上げた舞台で、一人の少女が英雄となった。
〈獣〉に対抗できる黄金妖精(レプラカーン)の存在は明るみとなり、浮遊大陸群(レグル・エレ)が小さな守護者に沸く一方、38番浮遊島に侵食の足音が迫る。
「黄金妖精(レプラカーン)をしてくるよ。先輩たちには、ちと悪い気がするがね」
パニバル・ノク・カテナは、〈十一番目の獣(クロワイヤンス)〉に呑まれた39番浮遊島に立つ。
その力の限りを尽くして、〈獣〉との戦いへと臨むために。
これは作られた英雄たちの、終わりに近づく物語。

フェオドールの思惑通りにレプラカーンは闇から闇に消費される存在から、陽のあたる場所で活躍する存在へとなったわけだけれど、陽に当てられたら影が出来るわけで、その負の部分についての手当はどうにも片手落ちに見えて、やりたかった事はわかるけど中途半端だよフェオドール! と声を張り上げたくなってしまった。まだやらなきゃいけない事が残ってるじゃないか。なんでここで退場しちゃってるんだよ、君は。むしろ、ここからのほうが彼の能力が必要な場面が多かったろうに。フェオドールの上司だった被甲種のおっさんのフェオ不在への愚痴とも嘆きともつかない呟きに、強く共感を抱くのである。
ヒロインであるラキシュが死に、主人公であるフェオドールが退場して、しかしまだ浮遊大陸群を襲う危機は続いていて、兵器から英雄になったとはいえ黄金妖精たちの戦いは続いていく。
これまで第二部はティアットとラキシュがメインに描かれていた中で、今回はちびっ子四人組の中の不思議少女だったパニバルが主人公として描かれる。
小さい頃から何を考えてるのかわからない不思議ちゃんだったけれど、彼女が主人公として描かれてその内面まで明らかにされると、わりとみんな勢い任せな四人娘の中でこの子が一番色々と考えている子だったのかもしれない。
まあ、彼女の自己分析が正しかったのかについては、大いに疑問符がつくけれど。黄金妖精の「死霊」としての側面を強く持っていて、生命に対する関心が乏しくその内側に虚無を抱えている。だからか、自己保存についても興味がなくて自分を費やすことに躊躇いがない。なんて、自分で考えているけれど、果たしてそうなんだろうか。
むしろ、ラキシュの死に対して意識せずポロポロと泣いちゃっている時点で、他の妖精たちよりも生き死に対して敏感であるような気すらするのである。自分の生命に頓着しないところも、見方を変えると残されたコロンやティアット、後ろに続く後輩たちを犠牲にしないためという強い目的意識が眠っているようですし。
黄金妖精たちの持つ自分の命に対する無頓着さって、もっとアンバランスな唐突さを内包してる感じなんですよね。それに対してパニバルのそれは傍目には素晴らしく危なっかしく見えるけれど、内面的には極めて一貫しているように見える。
わりとアイセア似なところあると思うんですよね、パニバルって。その上でアイセアよりも考えすぎて自己完結してしまっている風でもある。自分はこういうモノだ、と答えありきで決めちゃっているような。
パニバルの考えるパニバル・ノク・カテナってどこにも泣くような真似をする要素は無いんですよ。パニバル・ノク・カテナは泣かないし悲しまない。喪うこと、欠け落ちることを既に知っているパニバル・ノク・カテナは、未来を望まない。既に幸福であることを知ったパニバル・ノク・カテナは過去を振り返るだけでいいのだ、と。幸せなまま終わることを望むのだと。
彼女自身はそう語っていて、でも彼女は実際こうして泣いている。表紙のように泣くのである。

パニバルが飛ぶシーンは、墜ちるシーンは、まさにクトリのあの瞬間とおんなじなんですよね。
でも異なるのである。パニバルはこのとき、決して「世界で一番幸せな女の子」ではなかったのだから。

だからその代わりに、パニバルを待ってたのは成れの果てでしかなかった黒瑪瑙ではなく、本物の英雄だったのでしょう。
決して作られた英雄なんかではなくて、もはや「死霊」としての黄金妖精でもない、特別な存在にティアット・シバ・イグナレオは成ったのである。
かつてのリーリァ・アスプレイでも至れなかった道。クトリもラキシュもヴィレムも掴めなかった場所。
この娘は、きっと望んだ未来を掴むことを叶えられる英雄になるに違いない。そう信じることが出来るシーンでした、ティアット登場シーンは。優しきセニオリスじゃなく、呪いから開放されたモウルネンの適合者として、またモウルネンをあんなふうに使える聖剣の使い手として、この娘こそが本当に英雄になることが出来るに違いない。


しかし、今回一番衝撃だったのはフェオドールのお姉ちゃんのオデットでしょう。第二部入ってからずっと裏で暗躍している一方で、何をしたいのかがわからず浮遊大陸群の置かれた現状を知らないまま邪魔ばかりして一体なんなんだ、と思っていたのですが……。
おいおいおいおい、もしかしてじゃなくオデットこそが一連の事態の核心に近いところで奔走していたのか!? ネフレンがああなったまさにその時に、オデットもそこに居たなんて。
ってか、怒涛にように溢れてくる情報がえらいことになっているし、クラスター爆弾のように散りばめられる伏線がとんでもないことになっている。リィエルからして、あれって思いっきりキーパーソンになっちゃってますよね、よく眠るようになってることも含めて。
トドメに最後のアレである。うははは、ブラックアゲートだけならまだしも、そう来たか。そうひっくり返してきたか!
参った、ここに来て一気にブースト掛かってきたんじゃないですかこれ!?

シリーズ感想