【魔王学院の不適合者 3 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~】 秋/しずま よしのり 電撃文庫

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《勇者学院》との交流のため人間の都を訪れた魔王学院の生徒たち。しかしこの平和な時代にあってなお、彼らの胸の内には魔族への敵意が燻っていた。
互いの力を測るために学院対抗戦が行われるが、アノスたちに先駆け戦った魔王学院三回生は、勇者側の卑劣な罠の前に敗れ去る。その上さらに敗者の名誉を踏みにじる勇者たちに対し、暴虐の魔王とその配下たちが下す決断は――!?
そして、二千年を経ても癒えぬ魔族と人間の禍根を目の当たりにしたアノスの前に、ついに偽りの魔王がその姿を現す。
暴虐の魔王が新時代に刻む覇道の軌跡――怒涛の第三章《勇者学院編》!

ああっ! これはやられた。まったく予想だにしていなかった展開だった。ある程度のところまで話が進んだら、察することが出来るものなんだけれど、これに関してはギリギリまで「思い込み」に思考を縫い留められていて、気づかなかったもんなあ。ミスリードといえばミスリードなのか、これ。
そう言えば、明言はされていなかったですもんね。
そもそもアノスの存在を上書きした偽魔王の存在からして、思っていたのと全く異なる展開でしたし。いや、面白し!
勇者学園のやられ役たちのやられっぷりも、これぞやられ役の見本!とも言うべき見事なやられっぷりでしたし。こういう噛ませ役って結構絶妙なバランスが要求されるんですよね。いい具合に増長しきってこっちを見下してきてそれなりに強く卑怯でムカつく性格や態度で、自分が負けるなんて欠片も思っていないのを、圧倒的に叩き潰してプライドやらなにやらを徹底的にへし折る、盛大にぶっ飛ばしてヒィヒィ泣かす、というカタルシス効果を最高に発揮させるのって、どこかバランスが悪いとどうしても色褪せる部分が出てきてしまいますから。その点、この敵どもの憎ったらしさとやられたときの無様さ、こっちの圧倒的な余裕っぷりとファンユニオンの煽りっぷり、相手のズルしていた教師のグヌヌっぷりといい、いやはや素晴らしいコラボレーションでありました。
悪役の小物さ加減って、程度によっては主人公サイドまで格を下げてしまいますし、話自体陳腐にしてしまいかねない要素ではあるんですけど、まさにさじ加減によってはこれだけ引き立たせてくれるんですよねえ。
今回の話に関しては、その人間族の残した執念や偏執的なまでの狭量さこそが、それに相対し続けた勇者の心を追い詰め、彼を思いつめさせ、絶望させたという重要な物語におけるファクターでもあったわけで、人間たちの負の側面を煮詰めたような悪意と執念の塊たる存在の、あの嫌らしさおぞましさは勇者がなぜその選択を選んでしまったのか、なぜそこまでしてやり遂げようとしたのか、という想いに共感や理解を生じさせるだけの、それはもう嫌悪感を催すもので、よくまああれだけけたたましくネチョネチョとしたものを丹念に描けたなあ、と感心するくらい。
だからこそ、アノスの友情の清廉さが、そして今世で得た肉親や慕ってくれる人の愛情が、アンカーとして響いてくるわけですが。
そう考えると、あとは頑張れ的に色々と丸投げして三千年して生まれ変わったらかなり好き放題自由にやってるアノスは……いやまあやるべきことはちゃんとやってるか。
でも、勇者さまはこれまで鬱々と頑張ってあれこれ計画を練って頑張って、何かと身の回りにも不幸がありつつも頑張ってきた分、幸せになりなさいよー、と応援してあげたい。ファンユニオン、こっちも応援したれ。祝福したれ。
それにしても、アノスのファンユニオンたちは活躍の場もあるし、なにかと目立つ場面も多いし、と下手するとヒロイン姉妹より計り知れない存在感出してて、愛されてるなあw

物語的にはこの三巻で区切りがついたような感じもあるのだけれど、まだまだ続くようで良かった。ただもう不適合者扱いってこうなるとされにくいんじゃないのかな、これってw

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