【異世界拷問姫 7】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

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いつか遠い遠い昔の御話と、呼ばれるかどうかもわからない醜悪な物語。

終焉を超えたはずの世界に、何の前触れもなく異世界からの【転生者】にして【異世界拷問姫】を名乗る禁断の存在――アリス・キャロルが現れる。
彼女は【お父様】のルイスと共にエリザベートに苛烈な選択を突きつける――
「会わせてあげる、エリザベート! この私が会わせてあげるの大事な人に!」
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る至高のダークファンタジー第七弾。
誰かの物語が終わったところで続くものはある。
かくして、新たな舞台の幕は上がる――演者達が、望むか否かに拘わらず。
もう泣く。エリザベートの抱く想いを想像するだけで、その切なさに、哀惜に、胸をかきむしられそうになる。
どれだけ、カイトとヒナに会いたいだろう。どれほど焦がれ、どれほど願い、どれほど祈っているのだろう。その上で、わかっているのだ彼女は。もう二度と、生きて彼らに逢うことはないのだということを。結晶に閉じ込められた彼らの姿を見守ることは出来ても、その声を聞くこともその肌に触れることも、もう二度と叶わないのだと。エリザベート・レ・ファニュは知っている。
あの幸せな時間はもう二度と戻ってこないのだと。
それを安易に、いや安易ではないのだろう。奴らには奴らの論理があり正義があり意義があり覚悟があり信念があり、怒りがある。
それでもなお、エリザベートにもう一度二人に逢わせてあげるなんて誘いをかけるなんて。そのために世界を裏切れなんて。
いったい、何を踏みにじっているのか、彼らは理解していないのだろうか。理解してなお、指し示しているのだろうか。いずれにしても、そう彼女の言葉を借りるならば。
「胸糞悪い!!」
これに尽きる。尽き果てる!
「穏やかで凡庸な、夢のようなひと時があった。そして、終わった――それでよいのだ」
「他でもない奴が望んだ。余を生かし、世界を守ると。ならば主たるもの決意を尊重しよう。今までの日々こそ罪人には過ぎた奇跡で幸福であった――もう戻らぬ。それでよい」

もうあの日々は帰らないと。戻らないと。終わったのだと。エリザベートの口から言わせ、それでよいのだと、言わせた奴らがどうしても許しがたい。
夢を見させろなんて言わない。言わないけれど、本人の口からそれを言わせることはないじゃないか。どれほどの想いをもって、もうよい、と口ずさんだのか。それを思うと、本当に泣けてくる。
エリザベートはカイトとヒナを本当に愛して慈しんでいたのだ。彼らと居るとき、彼女は本当に幸せだったのだ。たった一人取り残されて、眠る二人を寂しそうに見守りながら、彼女の愛は続いている。幸せは終わっても、いつまでも続く。
でも、彼女はもうたった一人なのだ。そのエリザベートの尊く誇り高い在り方を、セナカイトの世界中の痛みを背負い負の感情で打ちのめされ、それでもなお決して他者にその報いを向けることのなかった生き方を、踏みにじろうとしているのだ、彼らは。
同情に値する正当なる復讐者。彼らを弾劾できるものは、加害者たる世界には存在しないのだろう。
それでもなお、エリザベートの振るった弾劾の言葉こそが本質を貫いている。
「他者を踏み躙るために、弱者を名乗るな」

許せない。しかし嫌えない。ルイスとアリス、その在り方があまりにも悲痛で縋るような絶望に苛まれている姿が、憐れだからだろうか。あり得たかも知れない、カイトの結末の一つだったからなのか。彼らは虚無だ。感情を込めて睨みつけ見つめれば、穴に落ちるように吸い込まれていく。強い感情を抱けなくなる。

眠るカイトは、確かに世界を守り、淀んだ人の心に清涼の風を吹き込んだ。今なお、彼の存在が人を変えるきっかけとなり、世界を変えるきっかけとなり、愚かで救いがたいものを良き方へと変質させる踏切台になっている。
それでも、それでも、世界は終焉を逃れて良き方向へと進んでいるのかと言えば、決してそうとは言えないのが現実というものなのだろう。
もはや、ポイント・オブ・ノーリターンは通り過ぎた後だったのか。あ
亜人種の純血主義に秘められた悲壮とも言える祈願も、刻々と定まりつつある霊長の帰趨も、もはや個々人の意志や働きではどうにもならないところで決まりつつあるものなのかもしれない。その結果として起こり得る惨劇は、人が人である限りもう止めることは出来ないのだろうか。
エリザベートがこぼしたこらえ難い絶望の吐露が、改めて胸を突く。
リュートとアインの夫婦が迎えつつある結果は、諸手を挙げて祝福するべき幸いであるはずなのに。
微笑ましく甘やかなジャンヌとイザベラの睦言も、幸せなカップルとして何事もなく続いてくれれば、それでいいのに。
ラ・クリストフが幼き頃に抱いた夢が、万人の幼子の中で同じように輝く世界であれば、良かったのに。
獣人の姫たちの顛末が、聖人の見事なまでの最期が、あまりにも独りなエリザベートが、哀しくて切なくて、なんともたまらなく心揺さぶられる新たなる惨劇の開幕でありました。
世界は、救われてなお、未だ救われるに足らぬものなのか。
はぁ……なんかもう、ラ・クリストフが色んな意味でいい人いいキャラすぎて辛い、辛い。
つらすぎるので、亜人のお嬢さんにならって、もうジャンヌとイザベラのイチャイチャ見てひたすらキャーキャー言ってたいです、キャーキャー♪

シリーズ感想