本年度のライトノベルに関しては、読了済みの本の感想記事を書き終えてから取り掛かる予定で、例年通り来年になりそうです。
今年は仕事がギリギリまで食い込んだ上に、最後の最後に徹夜連闘案件になってしまいやがって、色々と予定が崩壊してしまったのですが、何とか少ない年末年始の休みを利用して立て直していきたいです。
というわけで、毎年毎年書こうと思っていながら出来なかった、今年読んだウェブ小説からオススメ作品を紹介、というのを是非やってやろうというわけでこの記事であります。
と言っても、カクヨムやpixivの方は殆どカバー出来ていないので、オリジナルの方は小説家になろう。二次創作作品の方はハーメルンから、という事になってしまうのですが。
当初は書籍化した作品は除外しようか、とも思ったのですが選んでみると意外と少なかったのでそのまま行きます。
一応、二次創作作品の方も触れようと思っていたのですが、とりあえずこちらから。

<小説家になろう>から

狼は眠らない】 (支援BIS)

いきなり書籍化作品であります、失礼。来年1月に刊行予定となっている骨太の本格ファンタジー。なにせ作者があの【辺境の老騎士】を書いた人であるから当然で、隻眼の歴戦冒険者レカンを主人公とする冒険譚でありながら、彼が巻き込まれるあるいは自分から首を突っ込む政治的な駆け引き、企み、謀略を食い破る読み応えある快刀乱麻のハイファンタジーとなっている。脅威の毎日更新。世界観の勇壮さと奥深さは他の追随を許さない傑作である。


魔王は世界を征服するようです】 (不手折歌)

長い休載期間を経て、この夏からついに復活。そこからのあまりにも激動過ぎる展開にはひたすら息を呑み続けている。主人公ユーリ・ホウを見舞う悲劇と飛躍。当初からタイトルと内容の乖離には不思議を覚えていたのだけれど、ここに来てまさにタイトル通りの展開になってきて、それが余計に胸を突くんですよね。そこに至るまでの展開は「マジかーマジかー」と思わず口ずさんてしまうようなものが続いてしまって、凄まじいの一言でした。


少女の望まぬ英雄譚】 (ひふみしごろ)

人の心を理解できない、何より心が怪物な少女。というキャラクターが主人公であるのは珍しくはないのですが、本作に瞠目させられたのはそんな化け物でしかなくおそらくはそれで終わるしかなかった少女に、周囲の人々が根気よく愛を与え続け、ついには少女に「心」というものを生じさせたことなのでしょう。主人公の精神構造が怪物で化け物の物語は、結局最後までその心は周囲の人間たちと通じ合うことなく、乖離したまま大きな溝を作ったまま進んでしまうものなんですね。それをここの登場人物たちの中の理解者たちは本当に根気よくその埋められないはずの溝を埋めていくのである。
主人公のクリシェが怪物でありながら根底で素直で良い子であるのも大切なのですが、それ以上にベリーをはじめとする周囲の少ない理解者たちが、彼女の考え方を全否定せずに受け入れた上で愛を注いでいく姿が、本当に尊敬に値する尊さなんですよね。
無償の愛を注がれ与えられることで、少女は心を理解し、愛を知り、歪みを内包したままながら、人の世界で生きていけるだけの魂を得ていくのである。そうして、少女は怪物から正しく英雄になる。


現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変】 (北部九州在住)

【大友の姫巫女】の作者さんの新作シリーズ。戦国時代や第二次世界大戦以前の世界を舞台にした歴史改変ものは多々アレど、本作が凄いのはその舞台として現代、それも昭和ではなくバブル崩壊後からリーマンショックまでのごく最近の二十年弱を描こうというのだから凄い、というか出来るのかそんなこと! と仰天してたら凄いよ、この二十年の様々な大事件が(主に財力と権威と政治力で)改変されてく! 現代でも歴史改変モノって出来るのか、というかごく最近起こった事件などもちゃんと「歴史」なのだというのを今更思い知らされるようで感動すら抱かせてもらいました。微妙に現行の日本とは異なる歴史を歩んでいる世界なのも興味深く、財閥が残っていたり北日本にかつて分離独立して赤化してた国があったらしく(併合済み)と某御大の名作【征途】の残り香みたいなのが残っているあたりがまた乙だったり。


戦国異聞 池田さん】 (べくのすけ)

戦国を舞台にしたものとしては、本年度のクリティカル。信長の乳兄弟である池田恒興の逆行物。中の人はおらず、あくまで池田恒興当人が時間逆行してやり直しをしているのだけれど、何故か林 秀貞をはじめ幾人かの武将が少女化してたり、池田さんが語尾にニャーニャーついてしまったりしているのだけれど、あくまで真面目な戦国ものであります(当社比)
この池田さん、正史では武辺一辺倒の人だったものの、信長命のまま無念の死を遂げた上でやり直しの機会を得たことで、こりゃいかんと謀略政略計略経略の人へと大転換を遂げるわけです。この戦で決着をつける前に戦争を決定づけてしまうえげつないやり口が、その軽快かつポップな語り口と相まってめちゃくちゃ面白いんだ、これが。独自の戦国当世論も非常に興味深く、悲劇的な展開を迎える幾つかの歴史もどんどん変わっていってて、今一番好きな戦国モノとして追いかけております。


全肯定奴隷少女:1回10分1000リン】 (佐藤真登)

もう好きーーー!!
現在ヒーロー文庫で【嘘つき戦姫、迷宮をゆく】をシリーズ刊行している作者さんの現在進行系連載作品なんですが、これがもう好きーーー!!
全肯定奴隷少女というタイトルからして何とも独特で、特に第一章はその特異性を前面に押し出して短編連作みたいな形ではじまるのですけれど、いやそれもメチャクチャ面白く掴みとしては最高なんですが、真に面白さが爆裂しだすのは役職やジョブ名で描かれていた登場人物たちの名前が表記され、物語が物語として動き出してから。
そこからがもうヤバい。ヤバイなんてもんじゃないくらいヤバイ。これほど威力のあるラブコメをデンプシーロールされたのは、長い読書遍歴の中でも果たして幾度在ったかというくらいのインパクト。特に登場当初はいけ好かないばかりだった女魔術師のあの娘が、名前が出て、想いを抱いて、本気になったときのあのエピソードたるや、読んでるこっちの自我が崩壊しかけた!! マジで!!
ガチのマジでヤバかったんだから!!
女魔術師の人気度があれで爆裂したのも当然すぎる結果であったのですが、それでもなお人気一位を堅固した奴隷少女ちゃん。あれと伍するだけの魅力を持っているヒロインがメイン、というだけでこのラブコメの暴力的なまでの破壊力を保証しているのではなかろうか。
あと、全肯定奴隷少女のダブル・ミーニングにはやられました、うん。
現状もなお、オーバードライブ中。最高かよ!


最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ】 (紙城境介)

最近刊行された【継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない】のメイン二人のイチャイチャっぷりで、読者を七転八倒させた作者の、もう一つの全力全壊で描かれたイチャイチャもの。イチャイチャものってなんだよ!?
いやもう凄いんだって。悶絶モノなんですよ、これがまた。連れ子が元カノ、で致命傷を受けた人は本作を読むと体が消し飛んでしまうかもしれない。
果たして、自分が後輩属性というものに目覚めてしまったのは完全に本作のせいである。
という至高のラブコメものであるのとは別に、この作品の最も素晴らしいところはゲームを全力で本気で楽しみ遊ぶゲーマーたちの物語である、というところなのでしょう。ごく最近の回のワンシーンなのですが、最終決戦を前に一度ログアウトして急いで飯かっ喰らって自室へとかっ飛んで戻ってく主人公に、事情を知ってる妹が頑張ってと声援を送り、行ってきますと勇躍する息子に両親が目を白黒させて、どうしたのか、こんな夜からどこに行くのかと問いかけて、それに妹のレナが自慢げにこう言うんですね。
「お兄ちゃんはね――これから、世界を救いに行くの」
このシーンが、もう胸がキューーっとなるほど来るものがあってねえ。好きなんだ。本気で真剣にゲームで遊ぶ、心から楽しむというその最高の姿を体現する廃人ゲーマーたちの傑作冒険譚なのです。


何も銑十郎元帥】 (神山)

戦前史における仮想戦記や歴史モノというのは、どうしても軍人視点で描かれてしまうのだけれど、本作の凄いところはよほど膨大な資料と知識を以って描いているのか、渦中の歴史の動乱期を政党人、官僚、知識人、財界人、新聞記者という観点から導き出しているところなんですね。いや本来なら国を動かしているのは政治家であり官僚であり財界の人間であり、国の世論に影響を及ぼすのは新聞社であり知識人たちであり、それは戦前だって何も変わらないはずだったのです。それを改めて思い出させてくれるように、知ってる名前そして膨大な知らない名前の当時の国の動向にいろんな形で関わっていた人の名前が出てきて、その上で動きまくる躍動しまくる。そう、歴史とはこのように無数の多種多様な人たちの様々な思惑が絡み合って形成されていくものなのだ。一部の軍人がどう動いたってどうこうなるようなものではないのでしょう。
とは言え、主人公はあくまで「何も銑十郎元帥」なんて言われる林銑十郎(中身あり)。こいつが本当に食わせ者でクセモノで、幾多の切れ者軍人、官僚、妖怪政治家たちから白目で見られ、こいつ何もしていないんじゃ、と思われながら、何気に密かに目立たず歴史の流れに手を加えているあたり、凄まじさすら感じるんですよね。多分、後世で果たして評価されるのか怪しいくらいの暗躍っぷり。正史を知らなければ、どうやって日本が奈落へと墜ちていくのを回避したのかなんて気づかんだろうなあ。


冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた】 (門司柿家)

アース・スターノベルから既に書籍化されている作品なのですけれど、これがまた実にパパ味が味わい深い作品でネエ。40を越えて老境に足を踏み入れかかった元冒険者の父親と年頃の娘という父娘関係の描き方が素晴らしいんですよ。
娘のアンジェリンは長らく故郷を離れて暮らしていたものの、凄いパパっ子。ファザコンではあるんですけれど、それは実に真っ当な父親への愛情であり、また父親であるベルグリフの方も本当の娘として(実は拾い子)アンジェのことを慈しんでいる。なかなか、この手の真っ当な親子の情愛というのを描けている作品というものは限定されますし、何よりベルグリフの穏やかで年輪を感じさせる懐の深い人柄がいいんですよねえ。人生の先達であるおじさんであるが故の渋み、他者への優しさ、痛みや辛さを飲み込む大らかさがもうカッコいいんだ。若い頃に片足を失って仲間たちと離れてドロップアウトした、という挫折の経験を乗り越えたが故の人物の大きさ、人徳というものをひしひしと感じさせるキャラクターなんですよね。そして、片足を失ってなお鍛錬を怠らず、むしろ若い頃よりも熟達した達人になってるあたりとか、渋い渋い。
そんな魅力的な大人であるベルグリフが、娘の活躍に目を細め、帰ってきた娘を優しく迎え入れ、またこの年で新たな冒険の旅に出て新鮮な感動を得たり、若い頃にたもとを分かってしまった仲間たちと再会を果たしたり、結ばれなかったかつての恋ともう一度向き合ったり、とおじさんとなった後であるが故のムーブメントが満載で、色々とたまらん作品なんですわ。


スフィーと聖なる花の都の工房 〜王立アカデミーのはぐれ綴導術士〜】 (み)

スケールのデカさと設定の緻密さ大胆さ、度肝を抜く怒涛の展開に跳ね回る魅力的なキャラクターたち、という意味においてはそんじょそこらの商業化作品が目じゃない完成度とポテンシャルを誇る超弩級のファンタジーが本作なのである。
初っ端から口開けっ放しになるような、作者の頭の中をほじくり返して閲覧したくなるくらいのストーリーが展開されるんですよね。アクション演出のビジュアルイメージなんかも凄まじいの一言ですし、アレンティアさんの薔薇の道なんてめっちゃカッコ良すぎるくらいですもの。
圧巻は直近の第三部。ここの王との対面から魔王使徒との決戦の密度の濃さとスピード感には唖然としっぱなしで震えが止まらない圧巻圧巻圧巻の描写で埋め尽くされてましたからね。
動きの目立つ戦闘シーンのみならず、王さまとの交渉シーンですよ、あれは痺れた。アレンティア隊長とキアス先輩を両脇に従えて、フォマウセンとともに立つスフィーリアの揺るぎのない立ち姿にはもう身震いしましたよ。あの凄まじい緊迫感とスフィーの格好良さ。痺れた、本当に痺れた。その後のノルンティ・ノノルンキア戦たるや筆舌に尽くしがたい凄まじさだったわけですけれど。なんなの、あのスケール感!?
とにかく読み応え、面白さに関してはずば抜けたシリーズでした。惜しむらくは半年以上更新が止まっているところなのですが、どうやらエタっているわけではなく執筆はされているようなので新作投下を首を長くして待ちたいところであります。pixivに投稿されていた短編はおかげさまで発見できましたし。


転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?】 (紙城境介)

も一つ紙城境介さんの作品を紹介させていただきましょう。他のこの方の作品が明るいイチャイチャラブコメであるのに対して、これは愛のダークサイドを徹底して追求したヤンデレワンダーランド。
いや、タイトルだけで凄まじいヤンデレに付きまとわれることになるのは想像できるでしょうが……果たしてその想像はおそらく容易にぶっちぎられるでしょう。
まさに想像を絶する狂気が舞い降りてくるこの恐怖。なまじ、通常モードの物語が秀逸すぎて、それ自体でとてもおもしろい名作ファンタジーとなり得るだけの作品だっただけに、途中からの大どんでん返しには比喩ではなく血の気が引くことになってしまいました。
死ぬかと思った。
魔王よりも邪神よりも恐ろしい(ガチで)ヤンデレと、本腰入れて戦うということが如何なることなのか。それは途方もない地獄で、絶望的なんて言葉が歯に浮くような悪夢。
これは、そんな災厄に必死に抗う主人公と、彼を愛するツンデレ妹とのグラン・ギニョル……と見せかけて、そこにとどまらない大転換を遂げることになるんですよね。勇躍、名乗りを上げるもうひとりの主人公。たった独りの抵抗者。それは奪われた初恋を取り戻す少女の物語。
と、大いに盛り上がっているさなかでこちらも半年更新停止中。ただ、作者の紙城さんは活躍中でありますので、いつかは更新再開されると信じています。