【俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する 4】  藍月 要/閏月戈 ファミ通文庫

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遂に魔導具の祖ジーリンの元へ辿り着いた幹人たち。彼女によると、現在この世界は崩壊に向かっており、それを食い止めるための研究中らしい。しかし、そこへ彼女の研究を妨げる極等冒険者が現れる! そしてその相手をザザが務めることになり、幹人たちはザザのために“最強の武器”の製作に取りかかる。果たしてオオヤマコウセンはジーリンに迫る脅威を取り除き、世界崩壊を止めることができるのか!? 高専生たちの普通じゃない英雄譚、衝撃の終幕!
この高専の子たち、理系らしく何事も理屈理論を前提にして考えはしているんだけれど、それ以上に原動力が好奇心であり、それ以上に熱いパトスが迸ってる連中だなあ。人と人との関係は理屈じゃなく感情だ、というのを体現している。
熱い想いこそが人と人を結んで、彼らを良きチームに仕立て上げ、異世界に迷い込むという難事を乗り越え、その異世界で様々な冒険を繰り広げ、偉業を成し遂げることに成功したのでしょう。
チームワークというか友情というか、その厚さが彼らを支え、異世界に新たな絆となる人間関係を築くに至ったと言えるのではないでしょうか。
しかし、感情だけでは、想いだけではどうしても覆せない論理がこの世には存在するものです。その絶対的なコトワリの壁に彼らはぶち当たることになり、故にこそ彼らの根幹となる想いは軋みをあげて悲鳴をあげることになってしまったのでした。
感情の爆発とは、ただ叫ぶとか喚かせるとかじゃないんですよね。それは限界まで膨れ上がった末の破裂であり、堰き止められた挙げ句の決壊。耐えに耐え、我慢に我慢を重ねてそれでも抑えきれなかった想いが吹き出すということなのでしょう。その描写が、素晴らしかった。フッと限界のラインを越えた瞬間が物理的感触として実感できたかのように、溢れ出た激情が伝わってきたんですよね。照治の慟哭を前にしたジルの、あのもうどうしようもなくなってしまった、たまらなくなってしまった想いの発露なんか、読んでるこっちまでなんかもうたまらなくなってしまいましたもの。
今回はストーリー展開がかなり強引に押し潰したような唐突感があり、その壁となる極等級冒険者のおじゃま虫してくる理由もかなり無理矢理感があったんですが、それ以上に登場人物たちの切実なまでの想い、必死さ、渦巻く感情の勢いが凄まじく、その熱さに首根っこ掴まれて最後まで引っ張り回されたような感じでした。
これ、前巻からその傾向ありましたけれど、最終的にヒロインってザザでも魅衣先輩でもなく照治だったんじゃなかろうか。この人がこの巻、全部持ってっていたもんなあ。
ザザはひたすらカッコよかったですよ、うん。そして何も語らぬ覚悟を貫いた塚崎ちゃんは良い女でありました。

感情ではついに越えられなかった大きな理屈の壁を、しかしその感情によって形成された情熱こそが理論に理論を積み重ねることで、越えられなかった壁を超えるに至る塔を作るのだと思えばこそ、ことわりを切り開く理系の研究者たちこそ、何よりも感情に身を任せた人種なのかもしれないなあ、などと思った良作でありました。

シリーズ感想