【キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 4】  細音 啓/猫鍋蒼  富士見ファンタジア文庫

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危険任務の手当として休暇を与えられ、リゾートへやってきたイスカたち。水着でバカンスを堪能するはずが、イスカにとって因縁の少女と再会したことで、雲行きは怪しくなる。「一年ぶりですわね。わたくしと皇庁へ来ていただけませんか」かつてイスカが救った魔女、皇庁第3王女シスベル。アリスリーゼがイスカを欲したのと同じように彼を誘うシスベルには、誰にも言えない秘密があった。たとえ血を分けた姉であっても。一方、妹がイスカについて調べていることを知ったアリスリーゼもまた、この砂漠のオアシスへと向かっていて…。剣士と魔女たちの運命は、戦場に更なる火花を撒きちらす。
危険手当で60日の休暇「命令」! 許可じゃなくて命令! 自主的にサービスで働くことも、事実上上司から強制的に自主的に働け!ということも「命令」なので出来ません、という趣旨の命令! ちゃんと休暇くれるだけでも真っ当なのに、60日ってバカンスかよ! しかも、命令ですよ!? 知らなかった、帝国軍ってホワイトだったのか!
ただねえ、短期間に危険任務に繰り返し従事したということで休暇を貰ったイスカたちなんですけど、これまでの話を振り返ってみるとそんなにイスカって働いている印象ないんですよね。
というのも、アリスと出会う機会を得るがためにコヤツってばしょっちゅう帝国を出て海外である中立都市へと遊びに行ってるわけですよ。毎回、遊びに行ってるわけですよ。毎回、休暇に女の子と逢い引きしてるんですよ。
こいつ、休んでばっかだな、と思うのも無理ないじゃないですかー。まあサボっているわけではなく、ちゃんと規定のお休みをとっているだけなので悪いことは全然ないのですけれど。むしろ、正しい労働者の在り方なのですけれど。そうだ、もっとしっかりどんどん休むが良い。
でも、イスカくんって前回捕虜になってたときもあれ高級ホテルの最上階で食っちゃ寝してたと考えたら、やっぱり働いているよりも休暇を満喫している方が多いんじゃなかろうか、この主人公め。
むしろ、同じチームのジンの方がいつも地味にずっとまめに働いているような。今回のバカンスでも一人あまり浮かれずに警戒を怠らず常在戦場の心がけを忘れずにいますしねえ。
一方で、真面目な顔して妹姫に逆ナンされてるイスカくん。
いや、それはそれとして妹ちゃんがお姫様にも関わらずあまりにもぼっちすぎるんですけど。まさか、帝国に捕まっていたの身内家族含めて誰も知らなかったってどういうことなのー!?
普段から引き篭もり気味だったとはいえ、敵国に捕虜にされてるの同じ城に住んでたはずの女王やアリスたちが全然知りもしなかった、というのはいくらなんでも存在感がなさすぎる。もちろん、謀略の類であり意図的に情報封鎖されていた、というのはわかるんですが、仮にも皇女が一人いなくなって何も問題が起こらないくらいに情報封鎖が出来てしまった、というのはそれだけシスベルと周辺とのつながりが薄かった、ということですもんね。食事や衣装、身の回りの世話などたとえ引き篭もりだろうと関わる人は決して少なくないはずだろうに。
この子、そもそも城でどうやって暮らしてたんだろう。まあ明らかにあの側仕えの人が怪しすぎるんだが。
これで、自分を助けてくれたイスカを唯一の信頼できる助けとして求めに来た、というのもまあ夢見がちというかなんというか。ネビュリスの誰も信用できないにしても、短絡的だなあ、と。
それだけ、精神的にも追い詰められていたということなのかもしれませんが。
まあ、短絡的というか夢見がちというか、実は何も考えてないだろう、というのはイスカもまあまあ似たようなものなのですが。ネビュリスと帝国の講和を実現させようともくろんでいるのはまあいいとしても、その方法として皇族の一人でも捕まえたらまあ何とか話し合いに持っていけるだろう、それから先は特に考えていないけれど、というにはさすがに考えが甘すぎやしませんか、とイイたい。
実際問題、彼が逃したシスベル、あのまま捕虜になったままだったとしてとても講和へと話が進んだとは思えませんし。いいとこ泥沼の総力戦一直線じゃないかしら。敵国をどうこうする以前に、自分の国である帝国の首脳部の意図や方針なんかもまともにわかってないわけですしねえ。
上層部の意思決定に働きかける立場を得ているわけでもなく、現状ではミスミス隊長の魔女化をどうやったらごまかせるか、という眼の前のことに汲々としているわけですから、まだ登るべき山の麓にすらたどり着いていないんだよなあ。
もっとも、アリスやシスベルという山の峰が向こうから寄ってきているのも確かなのですが。
アリスとシスベルの仲もなんとももやっとするもので。女王継承のライバルでもあるわけですから、信用し難いというのもわかるんですけど。アリスもあんなあからさまに不気味がってたら、シスベルもただでさえ能力のお蔭で不信を募らせているのですから、歩み寄るのも難しいよなあ。それでいて、シスベルに危害が加えられていたらアリス激おこなわけですから、なんともチグハグな感じではあります。アリスの皇族としての立場ゆえの考え方と、ただの姉としての在り方の錯誤が彼女の中で不協和音として自分でもコントロール出来ない形でかき乱されているのかもしれませんが。
でも、シスベルのあれだけ熱烈なアプローチに対して、イスカけっこう冷めてるというか突き放してるんですよね。そんなにアリスの方がええんかい! なんか、対応が違うんですけど!?

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