【公女殿下の家庭教師 謙虚チートな魔法授業をはじめます】 七野りく/cura 富士見ファンタジア文庫

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「浮遊魔法をあんな簡単に使う人を初めて見ました」
「簡単ですから。みんなやろうとしないだけです」
社会の基準では測れない規格外の魔法技術を持ちながらも謙虚に生きる青年アレンが、恩師の頼みで家庭教師として指導することになったのは『魔法が使えない』公女殿下ティナ。誰もが諦めた少女の可能性を見捨てないアレンが教えるのは―
「僕はこう考えます。魔法は人が魔力を操っているのではなく、精霊が力を貸してくれているだけのものだと」
常識を破壊する魔法授業。導きの果て、ティナに封じられた謎をアレンが解き明かすとき、世界を革命し得る教師と生徒の伝説が始まる!第3回カクヨムWeb小説コンテスト異世界ファンタジー部門大賞受賞。
謙遜がすぎると嫌味です、なんだけれど彼の場合謙遜や謙虚じゃなく社会の基本レベルを全く把握できていないだけの人なんじゃないかと思えてくる。いや、勉強家の様子からして把握は出来ていないはずはないので、把握しても正しく認識できないだけなのか。
ともあれ、そこだけはなんとも彼の人となりや能力とチグハグすぎるのでどうかと思うんですけどね。
しかし、導入の展開が思いっきり同じ富士見ファンタジアのアサシンズプライドっぽくて、これもトラックに轢かれたり婚約破棄されたり、みたいな定番シチュエーションになってしまうんでしょうか。まあ、魔法が使えない貴族令嬢にワケありの家庭教師がという展開が似ているというだけであれらほどシーンそのものが一緒、というわけではないのですけれど。
幸いなのは、というよりも素直に良かったなあ、と思うのは魔法が使えない公女さまが家族から虐げられたり無視されているわけではなかった、というところ。公女殿下……ティナに魔法以外にもはっきりとした価値のある才能がある、というところのみならず、多分そういうの抜きにして父親である公爵からは愛されていて、使用人たちからも慕われ大切にされているんですね。目一杯の愛情を注がれて、育ってきている良い娘なのである。
これで、家から孤立してたり拒絶されていたりすると、ただ一人の理解者であり受容者となってしまうだろう家庭教師に対する想いというのがなかなかいい具合に歪んだり切実なものになってしまいます。それもまた物語のエッセンスとして大いにアリなのですけれどね。
まあ、そういう切実さがなくても、かっこよくて優しくて頭の良い家庭教師の先生という存在は、これまで彼女を教えてきた教師たちのダメさ加減の比較もあってか、ティナ嬢とその側近候補な使用人のエリーはベタベタに懐いてしまうのですが。
まだまだ子供な二人なので、その懐きっぷりも彼女たちからしたら本気なんだろうけれど微笑ましいものなんですよね。それにしても、いくら子供とはいえ貴族の、それもレディである少女たちにこの男アレンってばナチュラルにペタペタ触りすぎなような気もしますけど。
これ、普段からよっぽど妹にペタペタ触っていて、これが普通になってるんじゃないだろうか。彼の場合、子供相手だけではないというのはもうひとりの腐れ縁である公爵令嬢リディヤに対してもあんまり変わらないのでこれが当たり前になっている気がするぞ。ちなみに、リディヤは殆ど同世代である。
リディヤの方に対してはさすがにティナたちとは若干接し方も違う気もしますけどね。さすがにあれを子供扱いはしていない、というか結構特別扱いしてますよねえ。意識的にそらしている素振りもありますけど、ちゃんと異性として意識している様子もありますし。
ってか、アレン視点から見たよりもリディヤって実際会ってみると彼に対してダダ甘じゃないですか。両家とも、親公認というのがなんとも凄まじいことになっていますが。

なにげに、ティナが魔法を使えるようになった件、アレンが裏技を使ったことが打開の鍵にはなりましたけれど、あれ暴走しなかったら結局どうにもならなかったような気がしますし、そもそも彼女が魔法を使えなかった原因についてはわからないままで何も解決していないんですよね。そこんところ、アレンはちゃんとした方がいいんじゃないだろうか。今は使えるようになっているけれど、原因がわからなければまたいつ使えなくなるかわからない不安定さが付きまとうのに。
ともあれ、二巻はどうにも本命にしか思えないリディヤ回。だだ甘っぷりではティナたちにまったく負けていない様子なので、その意味でもなかなか楽しい。