【女神の勇者を倒すゲスな方法 6.「なんと、我と結婚したいと申すか!?」】  笹木さくま/遠坂 あさぎ ファミ通文庫

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女神の脅威は去り、世界に平和が訪れた―とはならず、信じるものを失った人間社会は乱れに乱れていた。勇者不在からの魔物の跋扈、きな臭くなる国家情勢。白エルフたちの合コン問題、残った女神教の腐海化、リノちゃん同世代の友達がいないなど、難問が山積みとなっていた。人間と魔族の平定に奔走する真一だったが、アリアン、セレス、リノちゃん女性陣からのアピールも過激になり…真一が選んだ答えとは?ゲス参謀の異世界攻略譚フィナーレ!
一冊まるまる後日談、というのはこのご時世では贅沢な作りである。ただ、物語のテーマ上でも悪い神様を倒しておしまい、めでたしめでたしというのは随分と投げっぱなしではありましたから、世界の秩序である女神教の信仰をぶっ壊してしまったあとの新しい秩序、未来への筋道というものをきっちり描いて見せてくれたのは丁寧なお仕事だったと思います。
それでも、まだ十代の真一が自分の死後を考えてあれこれと世界中に仕込みを備えていく、というのはまだ若いのにもう最晩年のフィクサーみたいな境地を伺わせていて、いやちょっと枯れすぎじゃないですか!?と思ったり。
準備を整えていくことに越したことはないですし、軍師参謀大政治家の端くれとしたらその「備え」こそが肝心、という考え方は真っ当ではあるんだけれど、まだ普通に生きれば短くても半世紀近く現役、頑張ればさらに30年くらいマシマシで現場で働けるだろうに、さすがに気が早すぎやしませんか、と言いたかった。ここが、彼がどこか生き急いでいると感じさせられる部分だったのかもしれない。
大切な人を唐突に失った経験は、いつ誰が居なくなってもおかしくないという諦念を真一に植え付けていたのだろうか。長寿であるリノの未来に人間である自分やアリアンたちが居なくなったあとの時代が訪れることは確定しているんだけれど、どうにも「無くなった」あとのことばかり気にしていたような気がします。それは数々の備えにも伺えるんですよね。常に何事にも最悪の展開が訪れることを想定していて、それに備えた対処策、緩和策を用意して回っている。政治家に楽観論は禁物であり、彼の備えはすべて現実的、と分かっていても、なんともモヤモヤしたものが募ってくる。
真一には、一個人としての幸せが足りていなかったのではないだろうか。
だからこそ、これからなのだろう。これから、一人の青年として幸せを得て、自分の人生というものにゆっくりと腰を据えて向き合って欲しいものである。その必要性を、彼を愛する女性たちはちゃんとわかってくれているようだから、その点はほんと不安には思っていないんですけどね。安心している、と言っても良い。
理想の楽園とは程遠い、しかし着実に希望を積み上げていける優しい未来図。現実として様々な困難が立ちふさがっていることは、戦後処理で駆け回る真一の策謀が炸裂しまくり、協力者とも共犯者とも言える各国の首脳部とのつながりも機能して着実に成果と備えを積み上げながらも、だからこそ痛切に難易度を感じさせられるものだったけれど、それでも希望を感じさせてくれるというのはなんとも柔らかい気持ちにさせてくれる。
真一が、地球に残していってしまった家族にちゃんとメッセージを送れた、というのも気の利いた、というかなんというか、ケジメをつけられてよかったんだろうけれど……あれ、いきなり過ぎて後々両親じわじわとダメージくるだろうなあ。たとえ異世界で息子がちゃんと幸せになれたとわかっていても、親としては寂しいですよ。
その点、アリアンを見守れる赤竜さまは幸せ者です。まあこの人も将来、見送らなければならない立場だけに、その辛さもあるのでしょうけれど。
最後は、真一のガチのゲス要素が出てしまって、そこでタイトル回収しなくても、と思わず苦笑。いや、その結末は予定調和で誰もが望んでいたものだったはずなんだけれど、そのやり方はゲスすぎますよ、真一さんw

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