【最果ての魔法使い 2】 岩柄イズカ/咲良ゆき  GA文庫

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ギルメアと千年越しに決着をつけたアルカ。彼は闘いの後に訪れた、束の間の日常を過ごしていた。そんなある日、アルカはとあるきっかけで訪れた島にて、失われた魔法を使う少女、ミアと出会う―「この力って―すごいの?」ミアの保護も兼ねて、共に暮らすことになったアルカは、彼女との絆を深めていく。しかし、ミアの魔法に引かれるように、強大な魔獣がアルカ達に襲い掛かる!「私とアルカなら―絶対にだいじょうぶだから!!」アルカとミア、二人の魔法が交差するとき、運命の輝きが迸る

うわー、そう来たか。そう来ましたか。
あとがきのほうでもはっきりと物語のテーマについて書いてらっしゃるのですが、一巻であれだけ描ききった物語の中で芽生えていたものを、2巻でここまで膨らませて広げてみせるとは、贅沢なテーマの使いっぷりじゃないですか。
前巻のラストシーンでの「彼」の中に芽生えた思いというものは、アルカの圧倒的な物語が進むなかでも印象的なものだったのですが、こう繋がってくるとは思わなかった。

過去からの因縁に決着をつけて、それでもフィルたちのお蔭で生き残ることが出来て、この未来の世界を「現在」として生きていくことになったアルカ。
彼にとっての千年ぶりの日常がはじまったのである。
その日常のパートナーとなるフィルとの関係は穏やかな家族然としたものであったものの、アルカ自身がまだ気持ちを千年前に置き去りにしているような部分があるのか、微妙にヤキモキさせるものだったんですよね。アルカに一身に恋するフィルに対して、アルカもフィルに対して好意を持っているし彼女を女の子として意識しているものの、彼女の好意に応えようとする姿勢はあくまで「優しさ」に基づくものであって、彼からフィルを請い求める情動があるかというと微妙なところだったのでした。
そこに現れたミアという幼い存在。アルカとフィルという二人の間に現れた、娘とも妹ともつかない庇護スべき存在は、三人揃って家族という枠組みを強化して、アルカとフィルの関係をも徐々に動かしていくことになるのである。
ともすれば、アルカのフィルに対する見方もアルカ自身が千年を経てきた老成した精神の持ち主なだけあり、彼女のことを妹や娘みたいに見ている部分もあったと思うんですよ。一巻のであった頃なんかは特にそのへん顕著でしたし。幼い子供たちのまとめ役だったフィルは、残された子供たちの中では年長組で唯一の保護者であったのですけれど、それでも子供たちの中に含まれている存在でしたしね。アリスたちという年少組がいたとはいえアルカからするとフィルはどちらかというとアリスたちの側に含まれる子だったはずなのです。
その認識を自力で覆していき、弟子となり、頼れる存在としてアルカに焼き付けていったのはフィルの努力と根性の結果ではありましたし、多少は意識させるまでにたどり着いたところなんぞ大したものだと思うのですけれど、やはりそこからさらに進めていくには時間がそれなりに掛かったのではないでしょうか。
しかし、ミアの存在は明確にアルカとフィルの二人で守る、という立ち位置を生み出すことでよりパートナーとしてのフィルをアルカに意識させることになったと思うんですよね。
ミアのあの率直過ぎる質問や、子作りネタなんかもフィルをそういう対象としてどうしても見にくかったアルカに、フィルの「女」の部分を強く意識させることに大きく作用しているようでしたし。
まあ、個人的にはここにお目付け役であり、フィルのお父さん役でもあったナビが一巻のあの存在感とは裏腹に殆ど目立った出番がなくなっていたのはちと残念でしたが。
今回については「お父さん」役は別にいましたからねえ。
アルカからすると、ラストに明らかになった真実は果たして許容できるものだったのか。でも、彼は飲み込んで事実を受け入れてるんですよね。その精神は高潔でありますが、果たしてそれだけだったのか。
「彼」の中に芽生えたもの。ミアに対する愛情が生まれたきっかけ、その心の誕生の要因を思うとアルカは絶対にそれを否定できないんですよね。いや、アルカはなぜ「彼」がそういう心を持つに至ったのかは知らないのか。
でも、それが生まれたのは確かに、アルカの戦いが原因であり、アルカに使命を果たさせたアルカのかつての仲間たち、アルカが愛した幼馴染をはじめとする愛しい人たちの献身の姿こそが、萌芽の苗床だったんですよね。
彼らの犠牲が、世界を救い、アルカを生きさせた。そこにもう一つ、本来絶対に在り得なかっただろう世界を滅ぼすはずだった怪物に、心と愛を育んだのだとしたら。
単に、怪物を滅ぼすだけ以上の価値が……犠牲に価値なんざ認めたくもないけれど、でも彼らの犠牲が無駄ではなかった以上に、確かな遺るものがあったというのなら、それはやはり尊いものだったんじゃないだろうか。
彼らの犠牲は、アルカを生き残らせ、アルカに生きる意志を取り戻させてくれただけじゃない。ミアという存在を残してくれる結果となったんじゃないだろうか。そう考えるなら、ミアは「彼」の宿った愛情の結晶というだけじゃない、アルカの大切な人たちの残してくれた忘れ形見とも言えるんじゃないだろうか、そう思ってしまうのである。

エピローグを見ると、まだまだ続いていきそうな展開が待っているので大変楽しみです。

1巻感想