【幼馴染の山吹さん 2.文学少女は文の上をゆっくり歩く】 道草よもぎ/かにビーム  電撃文庫

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見事“青春の呪い”を解いた灯里と喜一郎の前に呪いの精霊・小春が再び現れ、新たな青春ミッションを告げる―。『文学少女が望む理想の出会いを果たし、彼女の物語を完結させろ』文学少女にしてたった一人の文芸部員・瀬尾美咲と、さっそく接触をはかる灯里と喜一郎。果たして呪いが告げる彼女の物語とは!?そんな二人の前に…「創研部と文芸部の部室、取り替えっこしない?」創作研究部部長・立河すみれが現れ、さらなるトラブルを巻き起こす!?一度しかない高校生活を、僕と彼女が全力で駆ける青春ラブコメディ第2巻。

……うむ。これね、なかなかラストシーンが印象的なんですよ。古い文学作品なら、こういう〆方ってあるのかな。イメージとしてはそんな感じなんですよね。
そして、そのラストは呪いの精霊の嘆きであり、見方によっては「彼女」にとってのバッドエンドを示唆しているようにも見える。もちろん、ここで描かれた物語は美咲にとって決して無為などではなく、最後に立河さんにも言われたように確実に良い方向へと影響が出ているのです。
しかし、彼女の中に芽生えたもっとも大切で輝かしいものが、無残に潰えたのは小春のセリフからも明らかなのです。
この青春の呪いの精霊は、決して青春や少女たちの恋のものがたりを嫌っているものではありません。それどころか、一巻で見せたように彼女の呪いは呪いでありながら祝福の面もありました。一度目の山吹さんとキィくんの間に育まれ、そして記憶消去によって消されてしまった想いは、しかし記憶が失われてもなお確かに残され、今二人はかつての疎遠な関係から脱却し、仲の良い幼馴染という少し前では考えられない距離感へと近づき、もう少しでその向こう側へと飛び越えようとしています。
喜一郎は、山吹灯里との幼い頃の約束をちゃんと覚えていて、それを果たすことに何の疑いも持っていません。それは、小春にとって自分の呪いが祝福へと繋がっているのだという証明でもあったのではないでしょうか。
しかし、ここで繰り広げられた呪いの第二弾は、はたして誰かにとっての祝福足り得たのでしょうか。文学少女の物語は確かに完結し、終わったままきっと眠りにつくのでしょう。そこには何の意味があったのか。小春は、このとてもキレイな青春の夢が消えていく様を嘆き、その主である美咲はついに何も知らぬまま。肝心の灯里と喜一郎の物語にとっても、文学少女の青春の夢は何の意味があったのか。この本編において、山吹さんって特にらしい存在感を示していないんですよね。肝心なときには席を外しているし、そこで頑張る喜一郎はそこでは美咲のために、或いは文学少女の物語に関わる登場人物たちの本気の青春のために頑張るのだけれど、その中に山吹灯里は居ないのである。せめて、喜一郎と灯里が二人なくてはならないコンビを組んでこの問題に挑んでいたら、これは二人の物語でも在った、と言えたのかもしれないけれど。少なくとも、端緒はその形をとっていたし灯里もまた奮戦はしていたのだけれど、どうしても灯里と喜一郎の二人が一緒に手に手を取って頑張る、という構図にまでは届いていなかったように思う。どうしたって喜一郎が主体で有り続け、文学少女がその対象であり、灯里はお手伝い、という範疇にとどまっていたようにしか見えなかったのである。
だから、この本編は山吹灯里という幼馴染と喜一郎の物語としてはほとんど存在価値を見いだせない寄り道であったように思えてしまう。そして、そのヒロインである文学少女にとっても、その青春の夢のもっとも輝かしい部分は呪いによって掻き消されてしまったのだ。
すべては、最後の小春の嘆きに集約される。まるで、そのセリフをこそ書きたかったかのように。小春にそれを言わせたかったかのように。さながら、そのセリフに至るためにこの一冊があったかのように。
これこそが。青春の苦い味わい、というものであろうか。

一巻感想