【Re:ゼロから始める異世界生活 10】 長月 達平/大塚 真一郎  MF文庫J

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魔女教大罪司教『怠惰』を討伐し、エミリアとの再会を果たしたナツキ・スバル。辛い決別を乗り越えて和解した二人、しかしそれは新たな波乱の幕開けだった。避難した村人の半数が戻らず、不安に揺れるアーラム村。同じく戻らないロズワールやラムとの合流を目指し、スバルたちは一路、『聖域』と呼ばれる地へ向かう。そこでスバルたちを待っていたのは、一筋縄ではいかない住人たちと、妖しげに笑うロズワール。―そして、夢の草原に佇む一人の『魔女』だった。「ボクの名前はエキドナ。『強欲の魔女』と、そう名乗った方が通りがいいかな?」大人気Web小説、過去と誓いの第十幕。―過去と現在の交差する、新章突入!

いきなり10巻からの感想で大変申し訳ありません。ウェブ原作の方は結構先まで読んでたものですから、原作の方積んじゃってたんですよね。取り敢えず一巻から読もう読もうと思ってるうちに段々と原作読んでるあたりに書籍版の方がかなり近づいてきちゃったものですから、これはあかん、埒が明かん。途中からでも読み始めないとはじまらない、と焦った結果アニメ版が終わったあたりから割り込むことにした結果、この10巻からと相成りました。それでも最新刊は19巻まで進んでるし、短編集や外伝までわんさか出ちゃってるし、と果たして追いつけるのか怪しくなってきますけれど、取り敢えず読み始めることは出来たので着実に進展はできるはず。
というわけで、聖域編の開幕であります。
自分、ウェブ版読んでたときはガーフィールの容姿に関する描写をちゃんと読んでいなかったのは見逃していて、ガーフィールのこと筋肉だるまのごっついマッチョな青年だと思いこんでたんですよね。なので、声のイメージも低いバリトンかガラガラ声でわけのわからん慣用句やことわざ言ってる感じだったんですよねえ。何気に聖域編終わるまでまったく気が付かなかったり。ようやくおかしいな、と思い出したのは次の章で街に出た頃から。はっきりと、あれこれ勘違いしてたぞ、と気づいたのはミミが登場してから、というありさまでした。
なので、ちゃんとガーフィールが小柄な少年というイメージでこの聖域編を読むのは初めてなので、その意味では結構新鮮なんですよね。ずっと強面に絡まれてるイメージでしたから、相手がかなりきつい面相とはいえ、少年相手だと色々と感じるものも変わってきますし。

さて、これまでの【Re:ゼロから始める異世界生活】がスバルがどうしようもないクズから一端の男の子に成長する物語だったとしたら、ここからの聖域編はエミリアが一端のヒロインとなるための物語なのである。実質、ここまででレムの方がヒロインとしての人気が高いのは、これ当然といえば当然のことなんですよね。レムが気合入ったヒロインムーヴを成し続けていたのに対して、エミリアの方はスバルに崇め奉られはいるのだけれど、スバルが好きになるだけの根拠となるものがエミリアからはまだ見えなかった。というよりも、エミリアというヒロインがどういうキャラクターなのか、どういう女性なのか。表層は伝わってきていても、彼女の本質というものはまだ描かれていなかったのである。
正直、この聖域編で自分にとってのエミリアの印象ってほぼ百八十度ガラッと変わってしまった、というくらい彼女……エミリアという少女のありとあらゆる中身が曝け出され、暴き立てられ、容赦なく蹂躙されるのである。
その意味では、スバルもまたまだエミリアという子のことをわかっていないとも言えるし、エミリア自身も自分とまだ向き合えていないのである。
なので、スバルがエミリアというヒロインに相応しい騎士になれるか、という物語のベースとなる部分が、エミリアが騎士スバルに相応しいヒロインになれるかどうか、が問われることになってくるのである。
もちろん、まだまだスバルも騎士を名乗るには未熟の一言でまだまだ成長していかなければ、メンタル的にもね、ならないのだけれど、エミリアは今の段階だとそんなスバルにすら引けをとってしまうところにいるのである。それを如実に語っているのは、まさにロズワースがスバルに与えた評価と彼に語ったエミリアに関する言葉だ。スバルは、まだそのことをわかっていない。まだエミリアの弱さも、彼女の負っている傷も、恐れも何も知らない。まだ彼は恋する少女のことを何も知らない。
知らないからこそ、知るために歩み寄る、そのための資格をこれまでの戦いでようやく獲得したといえるのが今のスバルであり、それをある意味証明したものが今回の強欲の魔女の試練だったのではないだろうか。
スバルの両親、すごい人達でしたねえ。あんな凄い人たちだったからこそ、スバルは自分の歩むべき道を見失ってしまった、と言えるのかもしれませんが、あの両親に見守られていたのならいつかはスバルもあのまま過ごしていても立ち直ることが出来たんだろう、と思えるような二人であり……スバルがどれだけそんな両親のことを尊敬して愛していたのかが伝わってくる、幻でした。
あのスバルの号泣は、ほんと胸が震えてしまった。彼は、本当の両親には再会できておらず、あの人達は今もスバルが突然行方不明になってしまい、心を痛め嘆き悲しんでいるとエキドナに言われずとも誰よりもわかっている、痛感している上で、ああして胸を張れるのは、張れたのは、両親に伝えられたと言ってのけられた彼は本当に偉いやつだと思うのです。
まあだからこそ、今までとはまた全く異なる形でエミリアと乖離していってしまうのですが。勇気と気合と根性が求められるのは、決して主人公だけではない……まあスバルは実際他に類をみないくらい凄まじい勢いと回数で千尋の谷に繰り返し突き落とされるわけですけれど、そんな彼のヒロインやるからには甘やかされるわけにはいかないのである。大変だぁ、こりゃエミリアさん。