【転生したらスライムだった件 10】 伏瀬/みっつばー  GCノベルズ

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張り巡らされた強欲の罠を打ち破れ!

開国祭も無事に終わり、リムルが次に狙うは西方協議会への加盟。それを切っ掛けとしたさらなる経済圏の拡大だ。
しかし西方協議会の影の支配者犇欲のスキル瓩鮖つマリアベルは、リムルの強大な力を警戒し、手が付けられなくなる前に潰さなければならないと固く決意していた。
思惑が交差する中、リムル抹殺の策略が静かに始まる。

マサユキくんがガチでダンジョン作製の相談役として有能だった件について。実際ダンジョンに潜った感想だけじゃなく、テスターとして非常に参考になる意見や有用なアイデアをポンポン出してくれて、これはマジで「さすがマサユキさん!」じゃないですかー。こればっかりは普通の人間でしかも全然強くないがゆえのマサユキくんならではの視点なんですよね。大物相手にもビビりはしても物怖じしなかったり、楽天的なだけなのかもしれないけれど、ちゃんと自分の意見をはっきり言えるし行動も伴っているあたり、実際出来た子だよなあ、マサユキくん。これはちゃんとお給料払って囲っておいた方がいいんじゃないだろうか。バリバリ仕事するタイプじゃ全然ないけれど、居たらかなり助かるタイプだぞ。
ダンジョンのみんなで相談しながら不具合を潰し、バージョンアップして実働への適正化を進めていく展開、やってる本人たちが何より楽しそうなのでやっぱり見ていて楽しいのだけれど。
さすがに当人たちがモンスターのアバター用意して、ダンジョンの中に入って遊びだすのは楽しみすぎじゃないですかね!w
そりゃ、自分たちで創ったダンジョン、自分たちで体験して遊びたいというのはむちゃくちゃよく分かるけど、この中身が魔王と暴風竜なユニークモンスターたちに遭遇する冒険者たち、たまったもんじゃないよなあw

評議会編は、ほぼラファエル先生無双でありました。リムルの強大さの理由は幾つもあるのだけれど、彼がここまで致命傷を受けずに最適解で乗り越えてこれたのって、ほぼラファエル先生のおかげと思えば、彼の一番の強みが何なのかも自然と理解できるでしょう。リムルが一番わかってるんでしょうけれど。でも、周囲からするとラファエル先生の存在を知らないから、その叡智はすべてリムル本人から出ているもの、と勘違いしてしまうんでしょうね。このリムルの中に存在する、リムル当人とラファエル先生の二つのパターンの存在が、リムルというスライムの存在を分析しきれないものにしているのかもしれません。ユウキは直接リムルとよく接触している分、リムルのことをよく理解していると思うんですよね。でも、その分ラファエル先生という要素を見落としてしまっているということにも繋がり、リムルのことを脅威に思い全然侮っていないにも関わらず、それでもまだ甘く見ちゃっているのがラストの展開に繋がっているのかなあ。
その点、マリアベルの方は単純にリムルに関する情報収集と分析の不足じゃないだろうか。或いは、自身の客観評価と相対評価の不足というべきか。リムルは、ラファエル先生がいる分、自分の足らなさについて慎重に把握しているんだけれど、曰く誰も信用しないマリアベルは結局判断基準が自分しかなかったんですよね。いや、グランベル爺さんが居たんだけれど、そういう方面にはあまり参考にはならんかったみたいだし。そもそも、マリアベルからしてあれって自分の強欲の能力に若干なりとも引っ張られてたんじゃなかろうか。どうも自分の「欲望」に振り回されて冷静な損得勘定、というか損切や妥協、信用という要素を見失っていたようにも見えますし。
てか、裏から操って世界経済を牛耳るぜ、型の黒幕さんが自分から表出てきて自分で手を下そうなんてしちゃたらそりゃダメですわな。

本作を自分が好きなのって、エルリック王子みたいなどうしようもないボンクラでも、斬って掃いて捨てるという扱いにせずに、ちゃんと反省したり自分を顧みたりする余地があるのなら、立ち直れる要素を用意してあげるところなんですよね。ファルムス王国の先王さまなんかもそうでしたし。
リムルが捨て駒にされて呆然とする王子にかけてあげた、これからの人生王様になれなくてもやれることは何だってあるさ、という優しい言葉は何気に染み入るものがありました。
まあ、ライナーみたいなどうしようもない勘違いろくでなし野郎は、相応にザマアされますし。ってか、こいつ優しいリムルさんだけならともかく、怖いヒナタさん相手にイキり倒しちゃったもんなあ。自分で処刑嘆願書に判子押しまくってたような、地雷原の上をタップダンスするみたいな愉快な真似をしてたわけですし、自業自得もよいところw

ラファエル先生の最後の「勝手な」判断は見方を変えるとスキルの暴走であり、リムル自身の制御を超えて勝手にリムルの判断材料となる情報を伏せて、リムルの行動を誘導した、とも言えるのですけれど。
それをちゃんとリムルが「ラファエル先生の思いやり」であり「自分の頼りなさがラファエル先生を心配させてしまった」とちゃんとわかってあげているのが嬉しい所。このあたり、お互い気心の知れた信頼し合う主従という感じがして、今までもずっと良い関係でしたけれど、それ以上に絆で結ばれた感があってじんわりとしてしまいました。リムルは、ほんとラファエル先生が中に一緒にいるので安心してみていられる主人公です。

シリーズ感想