【お迎えに上がりました。 国土交通省国土政策局幽冥推進課 2】 竹林 七草  集英社文庫

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新橋のボロビルの地下にひっそり存在する、幽冥推進課。地縛霊を説得して成仏させるという業務にも慣れてきた夕霞。地縛霊の噂が観光名所の集客の妨げになっているので何とかしてほしいと依頼を受ける。現地へ赴いて老女の霊を確認したものの、調査の結果、彼女は「幽冥推進課の業務範囲外」だと上司に言われてしまい…。人々の遺した想いと向き合う、笑えて泣ける心霊お仕事小説第2弾!
うわあ、夕霞えらい危なっかしくなってしまって。
思えば一巻の時の幽霊にビビリまくっていた時は、その分腰が引けていい塩梅になってたんですよね。ところが幽霊に慣れてしまったがために、業務関係なく自分から地縛霊たちの事情にグイグイと踏み込んでいってしまうようになってしまって。感情移入するなとは言わないし、仕事だと割り切って突き放した態度に終始するのも違うでしょう。でも、これが仕事だということを忘れて前のめりにつんのめりながら人助けならぬ幽霊助けに入れ込んでしまう、というのはやっぱり違うし危なっかしくて仕方ないんですよね。
火車先輩と辻神課長が心配するのも無理ないのめり込み方ではあるんですけど、二人とも失敗を経験するのも致し方なし、という心づもりでもあるところがなかなかスパルタだと思う。夕霞の性格がわかっていたら、ロッカーの地縛霊の件であんな突き放し方したら余計に暴走するとわかっているだろうに。でも、あれだけ徹底的にダメ出しして冷徹に突き放しておきながら、夕霞がやるだろう無茶に対するフォローを事前に全部手回ししておいてくれて、何気に彼女が存分に思う通り出来るように手配してくれているのだから、厳しくもこの上なく優しい上司であり先輩なんですよね。
実際、辻神課長が絶賛しているように夕霞はよくやっているし、生霊のお婆ちゃんの件では彼女のこれまでのひたむきさが多くの人を動かして、最後の再会を叶えるに至ったのですから彼女のやり方は間違っているなんてことはないのでしょう。
でも、課長たちが心配しているようにこの課の案件は人の死を間近で見つめ、そして見送る仕事でもあるのです。ただ淡々と見送るだけでも重なっていく負担は大きいでしょうに、この娘は全力で感情移入して旅立つ地縛霊たちにも、幽霊たちと縁ある人達の別れの痛みにも目一杯触れてるわけですしね。いつか擦り切れてしまうのでは、とまだ努め始めて半年経たずに心配されるというのは相当です。そこで幽霊に対する恐怖感がなくなってきて、前にも増して前のめりになってきた日には。
一度失敗を経験させて、というのもよくわかる気持ちなんですよね。
それに、結局夕霞はロッカーの地縛霊の案件についても決して失敗、というような形では終わらせずに済ませてるんですよね。あれは、失敗ではないでしょう。ただ、夕霞にとっては思い描いていた結末ではなかっただけで。あれはあれで地縛霊の方も人間の方も救われた形にはなってると思うんですけどね。それでも、夕霞はあんな辛い思いをさせたいと思っていたわけではなく、ここでちゃんと自分の行為が善意の押しつけでもあったのだと気づくのは偉いと思うんですよ。そうして、悩み苦しみ、でも逃げずにめげないところが根性の女だと思うんですよねえ。
とはいえ、急には性格も生き様も変えられるわけでもなく、次のお稲荷様の案件でもあれかなりヤバイ橋を渡ってしまったんですよね。相手方の受け取り方如何によってはかなりの問題になりかねないところだったし。あれも、お稲荷様の方に感情移入してしまった結果なわけですけど。
でも、誰かが何らかの形で行動しなければ、介入しなければ今回の一件はずっと動かないまま停滞してしまっていたのも確かなわけで。難しいところですよね、こういうのは。
それでも、あのお稲荷様の新たな願掛けを受けての、あの嬉しそうな笑みを思えば……。こういう人と神様の関係ってイイよなあ、としみじみと思うのでした。こういう神様こそ、偉大だよな。
そんな偉大なお稲荷様からお墨付きをいただいた夕霞だけれど、ここでその心根を褒められ、がむしゃらさを褒められ、悩んでも進むが良いと背中を押されて……おかなければ、きっと挫けてしまうんじゃないか、というようなタイムリミットが迫ってるんですよね。
お稲荷様も、だからこそ夕霞の芯になりえるような啓示を送ってあげたのでしょうけれど。
夕霞と火車にゃんこ先輩、ほんと良い関係だけに次の巻は試練だなあ。

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