【やがて恋するヴィヴィ・レイン 4】 犬村 小六/岩崎美奈子 ガガガ文庫

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ガルメンディア王国に戻ったルカはファニアとの約束を果たすため暗躍を開始。テラノーラ戦役、ウルキオラ暴動、ドル・ドラム戦役で傑出した戦果をあげたことにより、ルカは民衆からの絶大な支持を得て反体制勢力の中心人物へとのしあがっていく。一方のファニアは王政に身を捧げる覚悟を決め、ルカに蜂起を思いとどまらせようと煩悶していた。ふたりの思いはすれ違ったまま王国はついに革命のときを迎える―。
「民に君臨し、民を搾取し、民のために我が身を捧げる、それがわたしの誇りです」。
風雲急を告げる恋と会戦の物語、第四巻。
ヴィヴィ・レイン……可能性として何らかのシステムとか概念か何かなのか、と考えたこともあったのだけれど、ちゃんと人の名前だったのか。
って、今回一気に怪しさ大爆発な人物が浮かび上がってきちゃったんだけど、え? このタイミングで露骨すぎない?

ファニアと再会するために、彼女との約束を果たすために、ついに革命の旗印へと名乗りを上げたルカ・ヴァルカ。ただの戦場の英雄という御輿じゃなく、自らの言葉で未来を示し、人を導き、反体制組織の幹部たちを懐柔し、利益誘導をして組織間のパワーバランスを調整し、と名実ともに革命勢力の指導者へと駆け上がっていくルカ。こういうの苦手なんだけれどなあ、と気乗りしない様子だったくせに、いざ機運が盛り上がり民衆の不満がどうあっても爆発してしまう状況になって、それをコントロールするためにその苦手な分野に自ら飛び込んでいくこの男、大したものなんだけれど、それ以上に苦手とか言ってるくせにやってるうちに革命指導者として揺るぎない才覚と実力を示しちゃうんだから、こいつなんなんだろう、天才? いや、これでスラムで這いつくばって食料を探し回っている頃から本だけは手放そうとしなかった読書家であり、元々インテリでもあるんですよね、ルカって。ほんとそうは見えないんだけれど。
それでいて、理想だけで羽ばたこうとしない一歩一歩歩いて進んでいく現実主義者でもあり、ただ一人の女性との約束を守るために世界を変える決意を固めた情熱家でもあるわけだ。
はたして、これだけの出来物を歴史のいたずらが災厄の魔王と呼ばれるまでの人物に仕立て上げてしまうのだから、なんかもうたまったもんじゃないよなあ。ルカの性質からして、魔王なんて呼ばれたの結果論か、風評の類なのかと思ってたのだけれど、あのラストの展開を見るとどうやら魔王と呼ばれるに当然の所業へと走ってしまう模様で……いや、でも気持ちはわからないでもない。
あんな、いちばん大事な時にいきなり頭から水ぶっかけられるような真似されて、怒り狂わない男がいるだろうか。もう、怒髪天ブチ切れまくって正気も吹っ飛ぶわ、というようなことをやらかしてしまったのが、かのジェミニ先輩であります。
ほんとにもう最高にして最低のタイミングで、やってくれましたねこの人。ルカに嫌がらせするために全身全霊を賭けている男の面目躍如というべきか、ルカを煽るにこれ以上ないタイミングでさすがとしか言いようがない。
まあルカとファニアも、ファニア自身がこんな時になにやってるんだろう、と思わず自問してしまうような状況で積年の想いを爆発させてしまっていたわけだけれど、いやほんとにこんな時にそんなことしてて大丈夫なんかー!?とは思った、思うよ! だって、いつ民衆が暴徒化して突入してくるかわかんない場面ですよ、状況ですよ。それでもなお、辛抱たまらんかったというルカなんですよね。そりゃあねえ、何年も何年も戦火くぐり抜けて戦って戦って戦友失いながら実際革命までこぎつけて、心身すり減らしてようやく辿り着いてみたら、相手のファニアさんてばグダグダと今更になって建前ばっかりで本音を押し殺して聞かせてくれなくて、もう「だらっしゃーー!!」と爆発させてしまうのもわかる、わかる。ファニアと同じ調子でグダグダし始めずに、本音本心本体ぶつけ合わなきゃはじまらんわー、とばかりに押し切ってしまったルカはえらいです、大したもんです、男です。こういう果断でバッサリしたところ、いい主人公だと思うんですよねえ。
決して悩まず考えないわけではなく、立ち止まっていいタイミングではとことん思慮に耽溺し、想いにふけって迷って悩んでいるんですもの、彼は。
ファニアと結局どうすればよかったのか。その結論を出す時間はありませんでしたけれど、あの全部捨てて逃げる、という選択肢はあのジェミニの執着を思えば、あまり良い選択ではなかったんでしょうね。結局、どこまでも追いかけてきそうですし。ジェミニめー。
……お兄ちゃんの元皇太子さまの方は、あれだけファニアに執着してたのに実際会って自分に目がないとわかるとのたうち回った挙げ句ですがあっさりフラれたと受け止めて諦めて、ルカとファニアを応援してくれるようなさっぱりした人なのに……。いや、あれをサッパリと言っていいのか激しい疑問を覚える変人っぷりではあるのですけれど。それ以上に面白い人すぎて、この皇太子いったいどこへ行こうとしているキャラなんだろう。
アステルの残り時間もそろそろ本格的に余裕がなくなってきた状況で、ルカとジェミニの本格的な対立がはじまってしまう。ヴィヴィ・レインの正体にも徐々に近づいているけれど、風雲急を告げっぱなしだな、これ。

シリーズ感想