【新宿もののけ図書館利用案内】 峰守 ひろかず/Laruha  メゾン文庫

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気弱な司書の再就職先は妖怪専用図書館!?

新宿・舟町の住宅街にひっそりと佇む深夜営業の「新宿本姫図書館」。
本を返す時には必ず別の本を添えなければならないという奇妙なルールがあるこの館には、
人間でないものばかりが訪れる――。
人間の身でありながら、訳あって本姫図書館で働くことになった末花詞織。生真面目な館長代理の牛込山伏町カイルとともに、今夜も化け猫や化け狐などの新宿妖怪を相手に奮闘するが!?
気弱な司書と新米館長代理が紡ぐ、優しいもののけ図書館物語。

そう言えば、最近は図書館に行ってないなあ。自前の積本が1000冊超えちゃってるんで、図書館に行く暇があるならそれを崩さないと、となってしまって随分と足が遠のいている。それでも、そのときは既にバーコードで貸出の記録はとっていたし、パソコンで検索も出来ましたけどね。
本の裏付けに貸出カードを挟んで、という形式はさすがに30年前くらいでも既になくなりはじめてたやり方だったんじゃないかなあ。学校の図書館なんかは、当時はそんな形式でしたけどね。
さて、峰守ひろかずさんの妖怪もの、ご覧の通り今度は私設図書館と新宿という土地が舞台となっております。登場する妖怪たちは、知名度のある有名な妖怪とは少し違っていて新宿限定のローカルな妖怪伝説・伝承からの出演になっていて、いやそんな狭い地域の中にこれだけ様々な妖怪の伝承が残ってるの? と、驚くくらいに多士済々な逸話があるんですねえ。もちろん、長々としたお話が残っている妖怪ばかりではなく、ほんの一文だけの正体も具体的な姿形能力も不明なあやふやな存在も居たりするのですが、いやさ妖怪というものは実に面白いものだと改めて思わされるものでした。妖怪学なる学問大系が出てくるのもよくわかる深度と密度であります。
しかして本編のメインとなるカイルくん。彼がまたいいんですよ。
峰守さんって、絶対城先輩もそうでしたけれど他の方が書いたら愛想とか愛嬌とか欠片もないキャラになるだろう
クールでスタイリッシュだったり堅物で生真面目だったりする青年を、ものすごく可愛らしく書くのが本当に上手い! イケメンのシュッとした青年が可愛いって、変に思えるかもしれませんけれど、この人が書くと固い部分が素晴らしく愛らしい感じになるんですよね、不思議!
カイルくんはまさにその権化という感じで、なんていうんだろう……まんまですけれど、「真面目な猫」ってなんかそれだけで可愛げの塊みたいじゃありません?w
内気で気弱なヒロインである詞織さん、他人に意見なんてするの以ての外、という引っ込み思案な女性で前職の図書館司書として働いていたときも、騒いでいる客に注意も出来ず理不尽な理由で契約解除の通達をしてきた上司に対しても文句も言えず、という感じの人だったのに、カイルくんに対しては最初は当然どういう人柄の人なのかもわからず、カイルくんも気を使って遠慮したり気を回しすぎて婉曲になったりとお互い距離感のとり方に悩んでいたところなんですけれど、馴染んでくるにつれてむしろ詞織さんの方が、カイルくんの行動や決断を促したり、背中を押してあげたり、引っ張ったり、とイニシアティブを取る場面が多く見受けられるようになるんですよね。
もちろん、彼女も妖怪相手の図書館業務に勤しむことで成長や見識を得たり、というのはあるんですけれど、何よりカイルくんの人柄がついつい気弱な詞織さんをして、手を差し伸べてあげたと思わせたり、彼の頑張りを支えてあげたい、助けてあげたいと思わせられるようなキャラなんですよ。
なんかもう、可愛いのよ。
妖怪で化け猫なので、詞織よりもずっと年上なのかと思ったら、何気に実年齢年下だったりするのも結構ズルいなあ、と思うところで。いやそりゃ、猫としては大変長寿であらせられますけども!?
それでカイルくんは頼りないのかというと、そんなことは全然なく、いざというときは男らしいですし、詞織が滅入ってしまった時には懸命にフォローして言葉を尽くして支えてくれるんですよね。いやもうメッチャいい男やないですか。
各話も、どこか人情物らしい風情が漂っていて、本を借りたまま返さない化け猫の話とか、狸と狐の落語話なんか、非常に味わい深く楽しいものでした。せっかくなら、本姫さまちょいとだけの顔見せ出演じゃなく、もっとあのギャップをいかしてガッツリ出番確保してくれればよかったのに。
相変わらず読後感が清々しくほんのりと温かい、良い一作でありました。

峰守ひろかず作品感想