【学園者! ~風紀委員と青春泥棒~】 岡本 タクヤ/マグカップ  ガガガ文庫

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青春全部入りの学園物語、開幕!

青春のすべてがここにある! ……かもね。
「先輩、最高の青春時代をおくるためには、どうすればいいんでしょう?」
「……はァ?」
椎名良士は高校二年生にして、学園の平和を守るトラブルシューター、風紀委員会の一員だ。
生徒同士の揉め事の仲裁や、教師には頼れない相談ごとを請け負い、学園内で起こる事件に翻弄される日々を送っていた。
そんな椎名の前に現れたのは、帰国子女の新入生、天野美咲。
青春というものに対して斜に構える椎名と、日本の学園生活を知らないがゆえに理想の青春に憧れる天野は、ひょんなことからコンビを組むことになる。
「思春期のガキを三千人、学校なんて狭いところに押し込めりゃ、そりゃ色んなことが起きる。いいことも、悪いことも」
入学シーズンの巨大学園を舞台に、個性的な生徒たちに翻弄されながら、次々と起こる事件を解決すべく学園内を走り回る椎名と天野。
果たして二人は最高の青春時代を掴み取ることができるのか。

リア充もぼっちも、モテも非モテも、優等生も不良も、文化系も体育会系も、みんながここで足掻いてる!
恋も友情も出会いも別れも勝利も敗北も甘さも苦さも、全部入りの青春学園物語、開幕!
風紀委員の新機軸だなあ、これ。この学校の風紀委員って、取締官や治安維持要員ではなくて、自分たちではトラブルシューターって言っているけれど、日本語で言うならいわゆる調停人なんですよね。かといって生徒の分際で揉め事トラブルを颯爽解決、なんてふうには行かないわなあ。それでも、足で稼ぎ頭を下げて周り、話を聞いて考えて損得勘定を計算して、と地道に働くことでどうにかこうにか、みんなが納得する形で物事を収めて調整していく。決して言うほど派手ではない仕事で、何気にトラブルメーカーで愉快犯気質の風紀委員長が首を突っ込んできて中途半端に大事にしようとしたり、さらっと多彩な人脈を駆使して助けてくれたり、と余計なのか何なのかわからない手出しをしてくるけれど、そう概ね派手ではなく地道な活動してるんですよね、風紀委員。と言っても、委員長除けば主人公の椎名に此度新入生で入ってきた天野の二人コンビだけが実働員なのですが。
しかし、トラブルはどこにでもあって、あらゆる種類の人間が抱えている。三千人も所属するマンモス学園である。様々な属性の生徒たちが存在しているのだ。でも、普通どれだけたくさんの生徒が所属していても、一人の生徒が活動する範囲というのはどうしたって自分のグループの近縁のみになる。しかし、あらゆるトラブルが持ち込まれる風紀委員は、いわば学校のあらゆる場所、あらゆるグループと関わり合いになる組織だ。
青春のすべてがここにある、というお題目は決して伊達ではないのである。
作品の雰囲気は明るく軽妙で、ポップともいうべきノリで繰り広げられる。でも、ギャグやコメディという領域には足を踏み入れていないんですよね。これだけ明るいノリなのに、しかし常にストーリーはシリアスに、真剣に展開していく。そこで描かれるのは、直球勝負の「青春」をテーマにした物語だ。逃げず茶化さず、真っ向から青春というお題目に挑戦しているのが本作【学園者!】なのである。
最後まで読み終えて、改て全体を振り返ってみると、本作のクオリティの高さに圧倒される。いやもうなんだろう、この絶妙なバランス感覚によって整えられた青春活劇としての完成度は。
本作の作者である岡本タクヤさんというと、【異世界修学旅行】で極めてレベルの高い異世界で青春するコメディ!を見せてくれたものですけれど、舞台を変え題目を整え直し、ひたすら一点集中で青春モノというものを突き詰めて描くと、ここまでのレベル、ここまでのクオリティのものを描き出せるのか、と正直震えたほどである。
惜しむらくは、ラストの展開がとても情緒的で主人公を含めてこの作品に登場した主要な人物の誰もが抱えていた孤独に繋がる展開の妙がある話であったのに対して、強烈さとかインパクトには少々欠ける落ち着きを得てしまっていたところか。いやそれも、しんみりと噛みしめるという意味では人それぞれの好みによるだろうし、決して惜しむようなものではないのかもしれない。
個人的には、椎名くんと三島香澄ってあれ実はプライベートで関わり合う分には滅茶苦茶相性いいんじゃないだろうか。今までは生徒会の人間と風紀委員の人間という立場同士だったり、クラスメイトとしても入学当初のトラブルから特定の立ち位置に立ってしまった椎名と、ほど最初からある種のカリスマ的な存在だった三島って、立場を踏まえてのかかわり合いしかしてこず、近く頻繁に接触があって遠慮もないわりに、一線とか壁というほどのものじゃないのだけれど、立ち位置立場を踏まえての関わり合い方しかしてこなかったようにも見えるこの二人。でも肩書とかそういうの全部取っ払ってしまって、ほんとに一個人、プライベートでのお付き合いとなったら滅茶苦茶相性良さそうな気がするんですよね。何気に趣味とかもあってるみたいだし。
色んな意味で対等で、色んな意味で特別なこの二人の関係は、物語が続くならもう少し突き詰めて見てみたい気がする。
その意味では、椎名と元気いっぱいな天野の関係って、前作の【異世界修学旅行】の沢木とプリシラの関係と似たものがあるかもしれないなあ。今の所恋愛関係に発展しそうに微塵もなさそうなところが。まあ今の所、という冠がつくけれど。何しろ、天野が堪能したい青春というものの醍醐味の一つこそ、恋愛なわけですし。
ともあれ、読み味が非常に滑らかで同時に読み応えもたっぷりという、実に読み甲斐のある傑作青春モノでありました。一応この一巻で格好ついているとはいえ、魅力的な登場人物がたくさんいますし、是非、続きが出てほしいものです。

岡本タクヤ作品感想