【上流学園の暗躍執事 お嬢様を邪魔するやつは影から倒してカースト制覇】 桜目 禅斗/ハリオ  角川スニーカー文庫

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財界・政界のトップに裏社会のボス…そうしたエリートを親に持つ生徒が集う名門校・星人学園。彼らが“主人”となり、一般生徒を“執事”として従える、煌びやかな学園生活で行われるのは―買収脅迫なんでもありな、実力主義の謀り合いだった!学園での序列=卒業後の人生の優劣!!そこに足を踏み入れるのは執事一家の末裔・片平遊鷹。その秘めたる実力を見いだした財閥令嬢・三神黒露は遊鷹を執事に指名し、序列を決める初戦“学級代表選挙戦”に臨むことになるのだが―遊鷹は定石や校則をも覆す奇策の数々で、並み居る秀才たちを出し抜いていく!!掟破りの主従×学園×頭脳バトル、開幕!第24回スニーカー大賞特別賞受賞作。

タイトルからすると、相当にガツガツと生徒同士で序列争いする学園闘争がテーマの作品に見えるけれど、ぶっちゃけ序列争いにそんな入れ込んでるのって極々一部だけで、だいたいの登場人物はほわほわと過ごしてるぞ、これ。そもそも、黒露お嬢様は総資産百兆(笑)の学園内の頂点であり(ボッチだけど)、最高ランクの人物なのでカースト制覇とかあんまり関係ないし、そもそも遊鷹くんってあんまり暗躍とかしてないし、影から闇討ちみたいなことも全然してないんだけど!?
それ以前に、邪魔してくる人たちを倒していたかというと……逆に敵愾心をうまく和ませて、友達がいなかったお嬢様に友達を作ってあげたり、と倒すどころか友達の輪を広げているような形で収めているので、相当に穏当だったような。
黒露お嬢様も、遊鷹を執事に指名したときは、常に面白いことをして期待に応え続けないとすぐにクビにする、みたいなマウントを取ってきて、クール系完璧お嬢様が退屈と才能を持て余して執事になった遊鷹を振り回すのかと思ったのですけれど、遊鷹くんてば無茶振りされてもわりと飄々とクリアしてしまうわ、黒露お嬢様が実は色々と隙あるわ、自分でフラグ立ててマメに回収してくるわ、そもそもボッチだわ、と人間味の薄い完璧超人の裏側にあった普通の年頃の女の子の部分を着実に引っ張り出してくるんですよね。
黒露お嬢様も、決して実はポンコツ!!なんてものではなく、本当に最優秀で何でも熟してしまう人なのだけれど、人付き合いになれていなかったり、天才ではなく実際は努力型で努力だけではどうにもならない部分には瑕疵があったり、と普通に接していたら気が付かないであろうところが、遊鷹と一緒にいることで引き出されてくるわけで。むしろ、そうした部分が見えてくることで彼女を遠巻きにしていた周りの人間たちが近づいてくるんですよね。遊鷹自身も、すぐに黒露にとって自分の知らなかった自分を引き出してくれて、自分に友達というものを触れさせてくれて、ほんとうの意味で面白い世界を見せてくれた人ということで、掛け替えのない人になっていくわけです。
遊鷹というキャラ、なかなか掴みどころがなくて序盤は優秀なのか凡庸なのか定かではないのですけれど、小ボケを常に挟みながら終わってみたらあらゆる課題を悠々と、期待以上の形でクリアしてるのですから、やっぱり優秀なんだろうなあ。言動はどうにもホントに、ふわふわしてるというか飄々としていると言っていいのかわからない塩梅なんだけど。
ただ、常に主人の「心」に寄り添う執事というスタイルは一貫していて、一見忠実一途とも見えないのだけれど、実際は常に主人のためを考えてあれこれこなしていく姿は、素直に格好良いものがありました。