【俺の妹がこんなに可愛いわけがない 13.あやせif(上)】 伏見 つかさ/かんざき ひろ  電撃文庫

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『俺の妹』シリーズ復活! 新垣あやせルートをノベライズ!

高校3年の6月。俺はあやせから、相談を受ける。
「お兄さん、桐乃のことでご相談があります!」
あやせは妹の親友で、俺のことを嫌っている……これからもそのはずだった。なのに相談に乗っているうち、
「わたし、お兄さんにずっとひどいことを――」
誤解は解け、俺とあやせの距離は急速に縮まっていく。
「……へ、部屋で二人きりだからって変なことしないでくださいね?」
「やっぱり! な、何を考えているんですか変態!! つ、通報しますよ!」
あやせとアキバデートをしたり、一緒に妹ゲーをプレイしたり、夏コミに参加したり――どうしてこんなことに!?
これから語るのは、『俺と妹』の物語ではない。――俺とあやせの物語だ。
客観的に見て、妹の友達の中学3年生に嬉々としてセクハラする京介は、アウトですよね? ですよね?
あんまりにもだいぶ前の情報出ていて忘れてたのですけれど、これってゲーム版【俺妹】のゲームシナリオを下敷きにした、ヒロインたちのIFルートなんですね。若干、小説としては章と章、というかエピソードとエピソードの繋がりがぶつ切り感があるのはそういう事だったのですね。ゲームシナリオを下敷きにしている、というのは読んだ後に知ったので、なるほどそうだったのか、と納得した次第。特に、京介の感情の動きが見えないんですよ、これ。あやせの方はコミュニケーションを続けていくうちに、段々と距離感が狭くなっていく過程に関して如実に見て取れるのですけれど、京介があやせの事をどう思っているかに関してはちょっと良く読み取れなかったんですよね。なので、京介があやせのこと大声で「大好きだぜー」と言っちゃうのもそういう台詞を軽々しく告げてしまうのは無思慮じゃないか、あやせに妙な意識を抱かせてしまったりしてそんなつもりもないのに勘違いさせてしまったり、と軽率なんじゃないか、と思うところはあったわけです。もちろん、そんな軽率な言葉こそがトリガーとなってラブコメを進展させるのは定番ですから、その軽々しさが京介を悩みの沼に突き落とすのか、とワクワクしていた部分もあるんですね。
だから、あやせが告白してきたとき、こちらとしては京介は当然驚いて戸惑って一旦保留して彼女の真剣な告白に対して今度こそ真剣に悩むことになるのか、と思い込んでいたのです。
だから、速攻でオッケーだしたときには今回読んでて一番度肝を抜かれてしまいました。え!? 京介もあやせのこと好きだったの!? いつから!? いつの間に!?
そこで若干もやもやしてたんですが、これがゲームシナリオを元にしていると聞いてやっと納得できたんですよね。なるほど、プレイヤーとして京介を操作しながらあやせルートを進めているのと、小説の読者として京介という主人公を追っているのとでは、あやせとのやり取り、掛け合い、デートとか喧嘩とか、二人の間で起こるエピソードに対して感じる距離感が結構違うんですよね。だから、ゲームならあそこでのあやせの告白に対して、京介としてもプレイヤーとしても満を持したような感慨があるわけだ。そこに唐突感ってのはないはずなんですよね。
うん、でもだからこそこの巻、小説という媒体に変換しきれているかというと、できてると言い難い部分があるんでしょう。とはいえ、それはぶっちゃけ京介視点の捉え方というあたりに集約されているとも思うので、気になる人はそれほどいないのかもしれない。言うたらば、あやせの可愛らしさこそが主題であり、重要であるわけですしね。
とはいえ、あやせと京介の繋がりは、いわばあやせがどれだけ桐乃が好きで桐乃と仲良くしたいか、という所を間に挟んでのことで、あやせのハートにアプローチするにもあやせが落ち込んでいるのを慰め励ますのにも、全部桐乃が肯定するという部分を介してのことなので、桐乃を脇によけてあやせと京介がただ二人だけの間で向き合うのはまだなんですよね。
実のところ、黒猫なんかはむしろ桐乃を挟むことこそが最重要だと思うのですけれど、あやせに関しては彼女が桐乃に執着しているが故に、桐乃が関係なくなった時こそが大事だと思うだけに、下巻の推移は非常に楽しみなんですよね。
あやせのチョロさも重さもダダ甘さも、それが全部京介だけに向けられるようになったら、いったいどこまで甘酸っぱくトロトロに蕩けるのか、想像するだに凄いことになりそう、と期待ばかりが膨らんでしまいます。期待値あがっちゃうけど、大丈夫ですかね?

シリーズ感想