【真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 4】 ざっぽん/やすも  角川スニーカー文庫

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勇者のパーティーから離脱したルーティを追い求め、辺境ゾルタンの遺跡に人類最強の英雄達が集結する。卑劣な策略を巡らせ自らの野心の為にルーティを連れ戻そうとする『賢者』アレスと、妹の身を案じる『導き手』レッドの再会は遂に全面対決へと発展し!?世界を救う役割を強制された『勇者』である事を拒み、兄を愛し一人のルーティとして生きていく事を決意した少女による戦いの結末や如何に。宿命を背負う妹と役割から外れる事を選んだ兄。世界の運命を担った兄妹の、新たなる幸福な日常がはじまる―。

アレスの末路が本当に酷い。賢者の加護って、スキルという点では優遇あるけれどなんていうんだろう、システム的に魔法使いと僧侶の呪文の両方を使えるというだけで、知性に優れているというわけではないんですよね。賢さに補正が掛かっているわけではないので、本当の意味での賢者とは程遠い。それでいて、加護だけは文字通り賢き者「賢者」でなければ出来ないような行動や判断を衝動として要求してくる。賢者の加護を与えたからには賢者である。賢者であるからには、その行動や考えは常に正しいものである。という現実を完全に無視した押しつけを強要されている。本質的にアレスって、ダナンと対して変わらない程度の頭の悪い人間っぽいんですよね。それどころかダナンのような直感や本質を見極める目がないので、ひたすら賢者の衝動に突き動かされるバカという始末の悪い有様になっていた。身の程にあっていない加護、という意味ではこれほど酷いものもないでしょう。賢者でありながら、加護というもののいびつさを疑問に思うような賢さすらもなかったがゆえに、加護に押しつぶされてしまった、というべきなのでしょうか。
せめて、ルーティのように自分の加護に悩み苦しむような感性があればなんとかなったのかもしれないけれど。それにしても、加護をもたらしてくれているという神は、デーモンが作中で語っていたように人というものをまったく理解していないんでしょうね、これ。賢者にしろ、勇者にしろ、加護が人を助けるものとして機能しているのではなく、人間が加護の乗り物みたいになっている。
名前のない加護、という初期化された無の加護みたいなものをルーティたちが発見したおかげで、それによって元の加護が緩和されて今の所、勇者の加護の衝動は抑えられてルーティは普通の女の子に戻れているわけですけれど、加護という存在に対しての根本的な対処がなされないと結局対処療法なんだよなあ。古エルフの遺跡など、勇者製造の情報は出てきているし、デーモンたちの動きも世界征服云々ではなく、もっと世界の構造そのものに対するものになってきているようだし、大きな動きに乗れるだけの要素は出てきているのだけれど、そうした話になってくると肝心のスローライフはどうした、ということになるので、作品としての主題を果たしてどうするのか。
とりあえず、リットとは名実ともに結ばれて、ルーティも妹として小姑としてお兄ちゃんの恋人への承認許可は出してくれそうなので、このまま辺境に引っ込んでいること自体には問題はなくなったのだけれど、さてどうなるか。
ルーティも、辺境まで兄を追ってきたときはどうなるかと思ったんだけれど、思った以上に穏当に終わって良かった。最初のコロなんか、勇者の衝動抜きでえらい病んでる節もありましたし、場合によってはリットととんでもない修羅場になるのでは、と恐れるところだったのですが、ティセが期待以上にルーティの大切な部分を占めるようになってくれて、お兄ちゃんしかいなかったルーティの空隙を埋めてくれたんですよね。ティセが傷ついた時のルーティのショックの受け方なんか、他の仲間が傷ついてもそうはならないだろう、という激しいものでしたし。結局、ティセと二人で辺境暮らしはじめるみたいですし。
しかし、今回もティセのぺっとのうげうげさんが前回に引き続いてMVP級の働きを見せてくれて、なんちゅうイケメン蜘蛛なんだうげうげさんは。今回はただのモブの小物敵キャラだったゴドウィンがいちばん大事なところで根性見せて、逆転の目を作るきっかけを生み出してくれたりと、こいつ何気に一番美味しいところを持ってったんじゃないだろうか。
それに比べて、本当にアレスは残念なところしかなかったのが何ともかんとも。

さて、事件も終わりうるさいストーカーもいなくなり、世界は相変わらずピンチだけれど後は知らないや、とばかりに落ち着いたはずだったのですが、先にギデオンを探してパーティーを離脱したにも関わらず、ダナンやテオドラにも遅れを取って今までどこでなにしてたんだ、というエルフのヤランドララがようやく再登場。本当にどこで何してたんだ、この娘。

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