【野生のラスボスが現れた! 9】 炎頭(ファイヤーヘッド)/YahaKo  アース・スターノベル

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私(ルファス)が夢から目覚め、力を取り戻したころ女神(アロヴィナス)は龍を起動させ、世界(ミズガルズ)をリセットすべく動き出していた。ところが覇道十二星天、七英雄、魔神族――敵味方関係なくミズガルズに住まう者たちは力を合わせて対抗し見事に龍を退けた。

龍を倒されたことでついに女神が動き出すとあらゆる神話の神々たちを従えて強力な攻撃を仕掛ける。
しかし私は気づいていた。この世界には『完全オリジナル』はなく、全てのルーツが『地球』にある。女神には本当の意味での『未知を創り出す力』はない。

つまり……

「其方は恐らくは元々神などではなかった。そう――其方は地球人だ、アロヴィナス」

その瞬間、女神は笑みを消す。
それは初めてルファスを『敵』として認識した合図で――!?

勇者・瀬衣と、十二星乙女・ウィルゴの後日談を綴った大ボリュームの書き下ろしストーリー「野生のEXボスが現れた!」収録!
インフレさんが、インフレさんがお亡くなりになられておる!?
創造神(笑)のアロヴィナスとの最終決戦。なんかもう色々な方向に向かって杜撰で残念極まりないアロヴィナスでしたが、そのでたらめな力に関してだけは本物。未知を創り出す力こそないものの、それ以外なら何でも出来る、という力を備えてしまったのが彼女なんですよね。
その上で、彼女は基本的には善良で結局自分の欲得のために自分の得た力を振るうことはなかったわけです。ただ、人を幸せにしようとした、それだけは間違いなく。しかし残念なことに、アロヴィナスという人は……アホだったのですw
彼女のアバターであったディーナがあれほど優秀極まりないキャラになったというのに、本体の方のどうしようもなさは他の追随を許さずして本当にどうしてこうなった、というようなダメっぷりですもんね。それでも、並び立つものが存在しない無限の力が彼女の好き勝手を許してきてしまったわけで、だからこそ強引に力技でアロヴィナスと同じ地平にまで駆け上ったルファスの無茶苦茶っぷりも際立つのである。
そして発生する究極のインフレバトル。宇宙をビッグバンで生み出しさらにそれを崩壊させた力で攻撃するような、そんな宇宙の誕生と崩壊を×100したものをぶつけてくるような、いっそ陳腐にすらなってしまう上限のない戦い方。インフレバトルも行き着く所まで行き着くと、子供の遊びであるタッチバリアごっこになってしまう。相手の攻撃よりも強いバリアを張れば、そのバリアを貫ける攻撃を、さらにその攻撃を防御できるバリアを。そんなルールも反則もない設定だけを積み重ねていく子供の遊び。そこに行き着いてしまうのだと。
最初からラスボスがフィールドをうろついているような、ミルガルズというこの世界そのものが物理法則を無視してインフレバトルを推奨しているような世界観で、物語もそれに乗っかる形で際限なくバトルをインフレさせていったわけですけれど、究極的最終的に宇宙創生からあらゆる想像の範疇にあるスキルで攻撃し無効化し、という結局スケールだけ極大した子供のお遊びのような形に辿り着くという結末は、インフレバトルというものを野放しにして暴走させた結果ではなく最初から最後まで見事に制御しきった形になっていて、そのへん非常に面白かったんですよね。統制されたインフレとも言うべきか。
一方で、そんなインフレしていくばかりのバトルから距離を起き、力に寄らない強さを示し続けた存在として瀬衣くんという本当の意味で勇者となった少年を、ちゃんと存在感を最後まで示しながら立たせ続けることに成功したのは、なかなか凄いことだったんじゃないでしょうか。ルファスも絶賛してしましたけれど、瀬衣くんこそが最初から最後まで女神アロヴィナスのシナリオに逆らい続け、彼女の脚本を破綻させた立役者だったわけですし、ルファスたちに本当の強さの価値観を示してみせた救世主だったわけですから。
見事に自力で、主人公の一人になってのけたんだよなあ、彼は。ルファスだからこそ、そんな瀬衣くんの在り方は痛快で爽快に思えたのでしょう。
しかし、あれだけ女っ気のないむさ苦しいパーティーでの冒険を余儀なくされていたくせに、最終的にちゃっかりと乙女座のウィルゴとイイ仲になっていたのはさすがであります。基本化物しかいない中でウィルゴだけまっとうな美少女枠だったもんなあ。番外編として、二人が結ばれるまでの甘酸っぱい書き下ろしエピソードまで描かれちゃってまあ。
瀬衣くん、ルファスのお気に入りだけに寿命きても何らかの形でミルガルズに引き取られそうなんですけどね。ルファス、ウィルゴも猫可愛がりしてるから地球での生活が終わってもウィルゴを独り身で置いとくとかしないでしょうし。
しかしこの番外編、相手が龍とはいえ主要キャラ総出演で袋叩きはちょっと可哀相じゃありませんか、というくらいオーバーキルだったようなw
そして、シリーズ通して地味に痒い所に手が届く活躍をシていたカルキノス。蟹ってば、結構美味しいポディションでしたよね。終盤に仲間入りした連中の出番の少なさに比べて。まああの防御の固さがかなり使いやすかったというのもあるのでしょうけど、エセ外人みたいなキャラクターが意外とわかりやすく濃かったのか。魔神王とポルクスがまさかの甘酸っぱい関係になってしまうのはさすがに予想外でしたけど、苦労し続けたお父さんが最後幸せになれるというのはいい話じゃないですかー。

ハチャメチャなようで実に統制されたストーリー展開。ディーナの暗躍はあれ本当に見事の一言で、最初見せられた設定をひっくり返される大どんでん返しは、異世界憑依モノとしては特筆に値する展開だったと思います、あれは凄かった。その上で、結構たくさん登場するキャラクターがみんなキャラ立ちしていて、コメディタッチながらもガッツリと腰を据えて進むシナリオは読み応えあるもので、いやあ本当に面白かった、面白かったです。やりたいことを全部やりつくしたものを見せてもらえた満足感を味わわせてくれる名作でした。

7巻 8巻感想