【ゴブリンスレイヤー外伝2 鍔鳴の太刀《ダイ・カタナ》(上)】 蝸牛くも/lack  GAノベル

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――始まりが何であったのか、もはや知る者はいない。
いずれにせよ《死》が大陸中へと溢れ出したのは、そう遠くないある日のことだった。
時の王が御触れを出した。『《死》の源を突き止め、これを封じよ』。
大陸中の勇士たちが立ち上がり、そしてその尽くが《死》に飲み込まれて屍を晒した。
その中で、ある一党の言葉だけが残る。
『北の最果てに、《死》の口がある』。
誰がそれを見出したのか、もはや知る者はいない。その冒険者も《死》の前に消えた。

《死の迷宮(ダンジョン・オブ・ザ・デッド)》。
曰く――迷宮からは無尽蔵に怪物がわき出す。
曰く――迷宮には怪物どもと共に無限とも思える富が眠っている。
曰く――迷宮の最奥には魔神の王が存在している。
死神の顎そのものである奈落の淵へ人々は集い、いつしか城塞都市が生まれた。
冒険者たちは城塞都市で仲間を募り、迷宮へ挑み、戦い、財貨を得、時として死ぬ。

君は冒険者だ。
悪名高き《死の迷宮》の噂を聞きつけ、その最深部へ挑むべく、この城塞都市を訪れた。

大人気ダークファンタジー「ゴブリンスレイヤー」の外伝第2弾!
これは、蝸牛くもの描く、灰と青春の物語。
「灰と青春」って実質ウィザードリィの代名詞みたいなものになってるなあ。
本作はゴブリンスレイヤーの世界観でありながら、ゴブリンを殺す物語ではなく、本編から10年前に達成された魔神王討伐、それを成した六英雄がパーティーを結成し初心者としてはじめてダンジョンへと挑む姿を描いた物語である。
ゴブスレ本編にも登場する「剣の乙女」もまだ初々しい女司教として出てくるのですけれど……、彼女って一体どのタイミングでゴブリンに蹂躙されてゴブリン恐怖症になってたのか知らなかったのですけれど、そうかーこのパーティーと出会う前の初の冒険で被害にあってたのか。
ある意味、ゴブスレ本編でゴブリンスレイヤーさんに助けられなかった女神官が辿ったかも知れない道が、彼女の歩いた道だったのか。
体を蹂躙され心を痛めつけられ、その視力を奪われ。これを最初の冒険で味わいながら、それでも諦めることなく魔神の王を討伐するパーティーを少しでも支援しようと場末の酒場で鑑定屋として働いていた彼女。その芯の強さはきっと途方も無いものなのでしょう。一方で、彼女は傷ついた少女でもあり目的のために自分を奮い立たせながらも、怯え震える事は抑えられず、小鬼ごときに傷つけられた己を卑下せずには居られない。
そんな彼女をすくい上げ、冒険の仲間として対等の存在として迎え入れた彼らは、確かにライトスタッフであったのでしょう。もちろん、同情もあったのでしょうけれどその境遇に惑わされず、剣の乙女となる彼女の強さを見失わなかった。同時に、彼女の傷ついた部分を無視もしなかった。
メンバー見てみると、心身ともにフォロー上手な面々が従姉の魔術師に半森人の斥候、蟲人の僧侶と揃っていて、みんな精神的にも頼りがいのある面々が揃ってたんですよね。主人公である湾刀使いの「君」も無頓着なようでそっと誰かの弱い部分を支えられる気遣い上手だったりするので、精神的に不安定な面があった女司教と女戦士の二人が居ても全然そこから崩れる感じのしない、安心感が段違いだったんですよね。
当然、ダンジョン初心者なニュービーのパーティーとして、経験も不足していて当人たちも不安たっぷり、と初々しいところは多分にあり、実力もまだまだこれから、というところだったのでしょうけれど。能力的なものよりも、精神的な安定感と堅実さが初心者パーティーとは思えないものを醸し出していたのも確かなんですよね。
良いメンバーに恵まれたパーティーだったのでしょう。
それに、最初から目的がダンジョン深層の攻略であり、この世に蔓延る死の空気を払拭する、魔神王の討伐、という所がハッキリしていたのもイイ方に作用してる感じなんですよね。初心者パーティーの掲げる目標としては浮ついていると言って過言ではないものの、英雄願望に突き動かされた暴走しがちな若者たちと一線を画した地に足がついたありようが、このパーティーからは感じられたわけです。
遭難したパーティーの救援や初心者狩りを討とうという正義感なんかも、採算度外視でともすれば浮かれている、と捉えられてもおかしくない選択のはずなんですが、不思議と彼らの場合は無謀な行いではない手の届く範囲に精一杯手を伸ばしているように見える。
結構、傍目には初々しいやり取りしてるんですけどね。

てっきり、ヒロインは剣の乙女リリィかと思ったら、夜中に自然と顔を会わせる女戦士の方がどうもヒロインっぽい。彼女は彼女でなにやら出自に謎があり、初心者狩りと戦いになる折には何か事情を感じさせ得る憂いある顔を見せている。彼女が抱える不安は何なのか、まだまだ知らない側面を垣間見せる彼女だけれど、「君」に見せる信頼感は艶っぽく小悪魔じみた言動とは裏腹に真に迫ったものがあり、段々と心が近づいていっている様子がなんとも面映い。
しかし、ここから一気に魔神王討伐まで行ってしまうのかしら。まだまだ初心者の枠から脱してはいないと思うのだけれど。

蝸牛くも作品感想