【魔弾の王と凍漣の雪姫(ミーチェリア)3】 川口 士/ 美弥月 いつか  ダッシュエックス文庫

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ライトメリッツを襲ったアスヴァール軍を撃退し、エリオット王子を見事に捕らえたティグルたち。ジスタート王国はエリオットを利用して、アスヴァールの内乱に介入することを試みる。遠征軍の指揮官に任命されたのはミラとソフィーの二人だったが、その人選にはいくつもの思惑があった。
同じころ、アスヴァールの王女ギネヴィアは、自らの野心をかなえるためにブリューヌ王国を訪れていた。ブリューヌは黒騎士の異名を持つロランに、あることを命じる。
野心家たちが入り乱れ、混迷渦巻くアスヴァール島で、ティグルとミラの前に新た
な強敵が立ちはだかる。戦いの先で二人は何をつかむのか――。
アスヴァールって前作では特に元ネタがどこに国とか意識していなかったのだけれど、今回はハッキリとイングランドがモデルとわかる描かれ方になっている。とはいえ、大陸側に領地を得る過程など歴史的推移に関してはイングランドのそれとはだいぶ違っているので、史実のイングランドと重ねて考える必要などこにもないのでしょう。ただ聖剣カリバーンが実在し円卓騎士団がかつて存在したというのはかなり重要になってきます。
このシリーズだとジスタートの戦姫たちが携えている竜具とティグルが持つ「黒い弓」以外にも魔物に対抗できる伝説の武器が各国に一つ以上はあるみたいなんですよね。いや、実際に国ごとにあるかはわからないのですけれど、ブリューヌには現在ロランが所持しているデュランダルがあり、こっそりギネヴィアがくすねていたカリバーンと、色々と登場してくるんですよね。そして、それらは実際に得意な力を秘めていて、魔物たちと相対せる力を持っている。ギネヴィア王女は前作ではタラードが下剋上した時の旗印というか神輿という扱いで特に自己主張していなかったのですが、今回のシリーズでは兄弟の争いに割って入る形でブリューヌに助力を求めて女王として立つために第三勢力として名乗りを上げて、さらにカリバーンの所持者として戦場に立つことに。前は立ち絵すらなかったのに、今回は挿絵にもバンバンと登場して戦姫はジスタートの専有ではありませんぞ、とばかりに大活躍。泳げなくて溺れるロランを自ら海に飛び込んで助けたり、と活発に動いてますし何やらロランにご執心。さらに彼女に指針を与えたのが昔ブリューヌを訪れたときに出会ったティグルのお父ちゃんというのだから、ティグルにも縁があるわけで面白いポディションになってきてるんですよね。
ジスタート側は前回ライトメリッツにちょっかいかけて捕えたエリオット第二王子を傀儡にして後押ししアスヴァール王に仕立てようと、ミラとソフィーの軍を派遣させたわけですけれど、ブリューヌ側も王様がけっこう積極的に動いていて、ギネヴィア王女を支援してロランたちの騎士団を送り込んで来てるんですよね。彼女が女王になればよし、そうでなくてもガヌロンの暗躍の裏付けを取りにかかっているところなど、ブリューヌ王がかなり意欲的なんですよ。この方、元気だったらこんなに政略にも謀略にも手を伸ばせる人だったのか、と感心する次第。
とはいえ、現状ミラについているティグルとしては、アスヴァールの地で故国と対立する陣営に立ってしまったわけで、これ困るよなあ。
幸い、魔物トルバランが暴れまわっていたお蔭で渋々共闘しなくてはならなくなったエリオット王子側とギネヴィア王女側。でも、トルバランが動き出してなかったらティグルとしては非常に苦しい立場に追い込まれてたんじゃないだろうか。とはいえ、ティグルの行動もブリューヌ王の指示でもありますし、王命に違反しているというわけでもないんですよね。その点を押し出してティグルってばミラの元から離れる気は一切なかったようですけれど。ミラの味方をし続ける、という点に関してはティグルはどう情勢が変わっても譲らない覚悟はあるようで。ある意味ブリューヌという国もアルザスという故郷も、今のティグルにとっては重くはあってもミラよりは軽い、という比較になってるっぽいなあ。親父殿が生きていて、弟が生まれているという前作からの変化が、ティグルの気持ちを想像以上に軽くしているように見える。
しかし、エリオットはあの退場の仕方はなかなかひどいと言うか可哀相というか。さらっと彼なりの王になりたい動機やギネヴィアにはちゃんと告げなかったけれど、王位を得たらどういう国を作るかというものに伝統を廃してやりたい指針を持っていたようなので、それを誰にも告げず知られず秘めたまま、結構雑に退場させられたのはなんとも無残な話であります。これ、何気にミラとソフィの失態として本国から怒られちゃうんじゃなかろうか。まー、ジスタート王がどれだけ本気だったかどうかだけど。
しかしトルバランはこっちでもやはり強大な敵でした。変な異能ではなく、純粋に化物としてのパワーで押してくる、ってレベルを上げて物理で殴るそのものなので、ちょっとどうしようもない所ありますもんね。しかも、トルバランの特性として竜具を眠らせてしまう、というのがあるのでこっちの特殊能力で押し切るという手段がとれないですし。
デュランダルを装備したロラン、という人類最強の近接戦闘型人間がいなかったらまともに太刀打ちすら出来なかったんじゃなかろうか、今回。前作ではついに実現しなかったロランとティグルの同じ戦場、同じ敵を前にしての共闘、という夢のタッグマッチが見られたのは感慨深いにも程があります。剣のロランと弓のティグルのタッグってそれもう無敵じゃないですか。
それですらもトルバラン相手だと負けそうになったわけですから、どれだけ強かったんだ、というところ。ロランが為すすべなく吹き飛ばされる場面とか想像だにしなかった。

前作ではアスヴァール王になったタラードだけれど、今回は今も第一王子の麾下にいるようで。おとなしくしているようなタマではないですけれど、ギネヴィアはカリバーンの力もあって自力で女王へと登極しそうな勢いですし、傍らにはすでにロランを配しているわけで、タラードはどうなるんだろうホント。
そして、竜を乗りこなせるようになりつつも、竜騎士ドラゴンライダーになったらなったで意外と実際に竜に乗って戦うって難しいというか戦いようがないことに気づいて愕然とするザイアンくんw
竜に乗っての偵察って何気に戦局に重要な価値をもたらしそうな兵科ではあるんですけれど、公爵の御曹司が担うのって確かに微妙ではあるんだよなあ。テナルディエ公爵が危惧しているように、かなり危険でもありますし。どうするんだ、ザイアンくん!

シリーズ感想