【白魔法クラスの大忍術師】 藤木 わしろ/紅緒  MF文庫J

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魔法を忍術で圧倒する学園暗躍ファンタジー、開幕!

インペリウム魔法学園。大陸で唯一の魔法学園にして、大陸を分かつ六国が六系統の魔法を武器に神樹の魔力、ひいては次の世界の覇権を争う戦場でもある。
しかし、そこに現れる一つの影──全魔法士の仇敵"ニンジャ"。
「ユウマ、お前には魔法学園に行ってもらう」
「いや、俺ニンジャなんだけど!」
なぜか魔法学園に潜入することになった名門一族の次期当主・御影ユウマは、入学試験を飛び越え例外生として白魔法クラスに所属することに成功する。
そこで工作の最中出会った美少女魔法士・アルフティアと行動を共にすることになり……!? 大忍術師の暗躍譚、開幕。

そうだよな、そうなんだよな、忍者とは陰に潜み闇に忍び、人知れず暗躍する影の軍団なのである。スーパード派手な忍術で大暴れ、というのもまた一つの忍者像であるのだけれど、忍びの者として誰にも知られずに影から手を伸ばして暗躍するというのもまた立派な一つの忍者像なのである。
本作の御影ユウマはまさにそんな影のモノ。裏で暗躍、謀略調略情報操作に人心誘導、後方撹乱に終止していて決して表には出てこないんですよね。表で動き回り活躍するのも、戦闘で大暴れするのも、ヒロインであるアルフティアのお役目。ユウマはせっせと情報をかき集め、状況を把握し下準備を整えして謀を蓄えて、あとは仕掛けを御覧じろ、とばかりに開幕の発破を掛けるわけである。彼の恐ろしいところは、受動的な行動が一切ないところなんですよね。新参者で魔法学園の実態も各国の実情もまだ正確に把握して居ない段階から早々にかなめとなる部分の情報は手に入れて、それ以降も状況の掌握に勤しみ、望むべく結末を選んだ段階で、あらゆる状況、関係者の行動から考え方までその結末に至るように誘導していくのである。各人は、みんな自分で考えて動いているつもりなのに、それぞれがそう考えそう動いてしまうように、発言で思考を誘導したり状況を整えたりしているわけだ。人呼んで人遁の術。わかりやすいド派手な攻撃力ある忍術も使えるっぽいのだけれど、そんなのが問題にならないくらい「怖い」使い手だよ、この主人公。
一方でその一連の謀略が完成をみるトリガーとなる部分を、このユウマはアルフティアがその誇りと生き様をかけて望んでいる騎士らしい在り方を貫き己にも周りにも示してみせたとき、に設定しているあたりが心憎いんですよね。結果のためにその人の在り方を捻じ曲げたり、意志を抑え込んだり、信念を歪めてしまうのではなく、むしろ心折れて現実に屈しそうになっている彼女に、自分らしくあれ、一番自分が胸を張れる生き方をしてみせろ、と発破をかけて、それをやり遂げることで彼女に誇りが誇りを取り戻せて、勝利を手に掴む結末を手繰り寄せられるように、謀略を編み込んでいる。ユマのキャラはいつもふざけていて、実際悪党、性格もネジ曲がっていて享楽的、と一見タチが悪いようにも見えるんですけれど、この陰惨ですらある謀略に一風清々しさと痛快さをもたらしているのは、そこに彼の誠実さが伺い知れるからなんですよね。忍者は契約者を裏切らない、相手が裏切らない限りは、その心意気まで汲んで誠実に契約を果たす。それを誠実と言わずして、なんというのか。
いやあ、これはティアをチョロいとは言えませんわー。ティアからしたら、破滅するしかなかった自分を救ってくれたユウマは王子様以外のなにものでもないのですから。おまけに、初っ端からお嫁さん探しという目的の一つを暴露して、そのお相手候補として絡んでいったわけですからねえ。
定期的にクラスも動いていくみたいなので、六国6クラス全部回るんだろうか、これ。ともあれ、期待のシリーズ、はじまりました。

藤木わしろ作品感想