【魔法学校首席になったら嫁と娘と一軒家がついてきたんだが】 桐山 なると/ 夜ノみつき  ファミ通文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

一般教養で満点を取り、なんとか学年首席になったミジョア。首席になれば狭苦しい学生寮を出て、最新魔法が施された一軒家に住める。うきうきで屋敷に向かうとそこには先住者がいた。教師の手違いにより、魔法の天才&変人と名高いエルキッサにも居住権が出されていたのだ!頑なに出て行かない美人同級生と同棲をすることになったうえ、二人を「おとうしゃん!おかあしゃん!」と呼ぶ魔法生物まで現れて―!?不思議で温かなアットホーム学園ライフ!

主人公のミジョアくん、首席は首席なんだけどこれはこれで超問題児なんですよね。傲慢でプライドの塊、承認欲求も過剰なくらいでとにかく偉そう。まあ嫌なヤツ、と思われても仕方なさそうな男の子なんですよね。これと友達付き合いどころか一軒家に同居とかどうやってコミュニケーション取ればいいんだ、と思う所なんですけれど、凄まじいことにこのミジョアが問題ならないくらいヒロインのエルキッサの方が深刻なコミュ障だったわけで。この娘、日常生活送るのも難しいところのあるポンコツダメ少女なもんだから、ミジョアの方が彼女の面倒を見たり世話を焼くはめになっててんてこ舞いしているものだから、ミジョアの嫌な部分が表に出る暇がなかったんですよね。
それどころか、二人の娘みたいな存在の特殊な植物であるジャスという少女が一緒に暮らすことになってしまったものだから、さらに事態は混沌としていくのである。
ジャスという子、言動が本当に2,3歳くらいの幼女そのもので、自由奔放でちょっとでも目を離すと何をしでかすかわからない、という意味でもホントにリアルなちっちゃい子なんですよ。しかも、出自的に確かにミジョアとエルキッサの子供といえる性質を持っているわけで、決して他所の迷い込んできた子供、というわけでもないのも拍車をかけるのであります。
まだまだこのくらいの子供は手が掛かるし目は離せないし、お喋りでよく動き回り、振り回されっぱなしになるものの、でもひたすら可愛いことこの上ないんですよねえ。
こういう幼女の面倒を見てると余裕なんて消し飛んでしまうわけです。目が回るような忙しさ、とかく夢中になって幼女に構って忙しないといけない。一心不乱であります。そうなると、ミジョアも、エルキッサも普段から自分を鎧ってこうあるべしと着飾ってきたものを着込んでいると、心身ともに嵩張りすぎて幼女についていけないんですよね。だから、そういうの一旦全部脱ぎ去って、どんどん剥き出しの自分になっていく。自分も知らなかった、忘れていた素の自分が出てくるわけで、ふと気がつくと幼女を挟んで二人の距離感がとてつもなく近くなっているのです。近づかないと、世話もできないし、生活もままならないのだから仕方ないですよね。でも、そうやって間近で見る相方となってる少年少女はやっぱり違って見えてしまうんです。他の誰も知らないことを、自分だけが知ってしまう。相手の良いところも悪い所もまるっと受け止めざるを得なくて、この二人の場合そうやって見せあってしまった剥き出しの自分が、相手にとってはとても柔らかく素敵なものに見えてしまったわけだ。剥き出しの自分を見せてしまったからこそ、相容れなくなる人たちもいるのでしょうから、エルキッサにしてもミジョアにしても、それはとても相性が良く、いびつだった自分を慰めて労ってくれる存在だったんですなあ。その鎹となったのが、二人の娘になるジャスなのですが。
建前じゃなく、ホントの意味で家族になっていく三人。嫁と娘がついてきた、というのは決して比喩でも大げさでもなかったわけだ。そうやって二人して落ち着くことで、距離のあったクラスメイトとも何だかんだと今までが嘘みたいに打ち解けて、仲良くなっていくあたり人間関係って不思議で面白いものです。
正直言って褒められたところの少ない主人公とヒロインのコンビでしたけれど、だからこそ一皮も二皮も剥けて成長していく、実に良いホームコメディでした。
いやあ、しかしあのジャスのリアルな幼女っぷりはお見事でした。身近でじっくり観察できる幼児でもいたんだろうか、と思うくらいのちっちゃい子らしい言動だったんですよねえ。

桐山 なると作品感想