【いつか仮面を脱ぐ為に ~嗤う鬼神と夢見る奴隷~】 榊一郎/茨乃  角川スニーカー文庫

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戦場にて、英雄の少年は奴隷の少女に一目惚れをする―。ウォルトン王国の最終防衛用兵器―“護国鬼神”の異名を持つ少年・レオ。敵国ネプツニスの使い捨て魔力供給源として、特攻魔導兵器に組み込まれていた少女・フェルミ。二人は出会う。が、露わになる敵は―美少女妖精で!?大層な二つ名とは裏腹に、兵器として引き籠もり生活を送っていたレオは、あっさりとその可愛さに心奪われ―!?英雄と奴隷が紡ぐ、歯がゆくて不器用な恋の物語。

本作、敵の外道さやレオを始めとする登場人物たちの過去、人種間の差別意識やネプツニスとの戦争の残酷さ、護国鬼神に求められる冷酷残虐さなど、舞台設定はダークな要素で敷き詰められているいわば「黒榊」作品なのですけれど、面白いことにキャラ同士の掛け合いや騎士たちなど一般市民のノリは徹底したコメディ寄りなんですよね。これほどコメディなノリ全振りなのって、「まかでみ」や「アウトブレイク・カンパニー」以来なんじゃなかろうか。それでいてストーリー展開そのものはやっぱりダークそのものだったりするので、そのダークさとコメディがブレンドされて何とも不可思議な空気感になってて面白いんですよね。
珍しく、榊作品の主人公としては感情豊かでドタバタノリに自分から相乗りしていくタイプの男の子、というのも作品全体のリズム感に躍動を与えている気がします。榊作品の主人公、特に男の子はどこか面白味のない真面目な子が多くて、どうにもノリにノレない子が多かっただけに。それに、マリエルのセリフじゃないですけれど、とても可愛げのある男の子なんですよね、レオって。なれない人間関係にあたふたどたばたする姿、ハリエットにイジられてる姿とか、色々と擽られてしまうのもよくわかる。彼の執事として幼い頃から付き従ってるハリエットも、あれ性格がSというよりもレオの反応の良さについついイジってしまうのが習慣習性になってしまったんじゃなかろうか。
生真面目だった騎士のマリエルも、なんか速攻で影響受けつつありますし。
まあマリエルの場合、ただの生真面目騎士じゃなくてやたらと押しが強くてグイグイくる礼儀正しい傍若無人さが面白キャラになってる所があるのですが。護国鬼神という国の機密にして禁忌の存在に政略結婚することになって、その在り方に対してどう解釈するべきか理解するべきか受け止めるべきか、もっと迷って恐る恐る接してくるかと思ったら、びっくりするくらいガンガンいこうぜとグイグイくるところとか、なかなか新鮮でヒロインとしても存在感示してたんじゃないでしょうか。
むしろ、メインのフェルミの方がそのバックグラウンドからしても仕方ないのですけれど、キャラ的にもまっさらな所からはじめたので出遅れ感があったり。
いや実際、敵の黒幕さんってば急ぎすぎじゃなかったですかね? レオがフェルミに入れ込むまでは実のところもう少し時間があっても然るべきだったんじゃないだろうか、というくらいには二人の仲が深まる期間がちと短かった気がしますし。まあレオは実質一目惚れみたいなものですし、フェルミも真っ白な分塗りつぶされるのは早かったとも言えるのでしょうけれど、フェルミがあれだけ頑張れるだけの積み重ねはもう少しだけ欲しかったかなあ、と。このへんは好みかしら。二人のエピソード、十分と言えば十分とも言えなくもないですし。
しかし、最近先生R元服な作品の方手掛けたせいか、えっちい展開に今までよりも妙に雰囲気というか艶というか色気があった気がします。さすがだ。

榊一郎作品感想