【メイデーア転生物語 1.この世界で一番悪い魔女】 友麻碧/雨壱 絵穹 富士見L文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

魔法の息づく世界“メイデーア”。辺境貴族の令嬢マキアは、騎士の少年トールとともに、魔法を学ぶ日々を過ごし、強い絆を育んできた。ところがトールが異世界から来た“救世主の少女”の守護者に選ばれたことで、二人は引き離されてしまう。トールの不在に動揺するマキア。だが王都の魔法学校に行けば、再びトールに会う機会がある。彼に抱いた想いの正体を知るため、マキアは最高峰の魔法学校を目指す!これは“世界で一番悪い魔女”の末裔マキアが、自身の想いを伝えるための、長い物語のはじまり。
かつてこの作者さん、「かっぱ同盟」という名義にて富士見ファンタジア文庫から【メイデーア魔王転生記】というシリーズを出してらっしゃったんですよね。結局全2巻しか出なかったのですけれど、ウェブ版では元々【俺たちの魔王はこれからだ。】というタイトルで大長編としてすでに完結しているのですが、それはもう壮大な物語だったわけですよ。
なので、本作は新装版として改めてシリーズ化されたのかと思っていたのですが、あらすじ見るとなんか違うんですよ。F文庫版の【メイデーア魔王転生記】もウェブ版からトール視点でだいぶ改稿がされてたんですが、なんかそれどころじゃない展開の変化があらすじから伺えて、あれもしかしてこれただの新装版じゃない? と思ってた所で実際内容を読んでみて、度肝を抜かれたわけですよ。
あれ? なんか全然ストーリー違うよ!? キャラの立ち位置もなんか全然違うよ!? というかこれもう殆ど新作じゃね!?
というわけで、おそらく基幹となる設定や過去の歴史とかは共通しているであろうけれど、それ以外の大部分をザラッと総浚えして改めたと思しき、全く新たなメイデーアワールドのはじまりなのでした。
ってか、マキちゃん主人公じゃないですかー!
紅の魔女本人ではなく、あくまで紅の魔女の末裔という意識のマキアさんですが、そのとりあえずはガンガン行こうぜな生き様は変わることなく、その方向性も離れ離れになってしまったトールに再び会う、という一点に絞られてしまったためにそのパワフルさが目標に向けて集約されてしまうことに。
凄いぞマキちゃん、初っ端から恋する乙女全開じゃーないですか。理不尽な理由で引き離されてしまった想い人、そんな境遇に打ちひしがれるのではなく、自力で彼のもとに辿り着いてやる、と俄然やる気を出してガンガン頑張ってしまうあたりがこの娘の可愛らしさなのですが、少なくとも儚さとか薄幸さとは実に縁がなさそうな生き様である。今のところは。
本来ならトールがその制御役というか手綱役として機能していたのだろうけれど、その当人が傍らにいないのなら止める人はいないわなー。
ただ彼女の前世となる現代日本の様子からしても、マキちゃんが決してパワフルなだけの少女でなかったことはわかるんですよね。この娘は、色んな意味で一番大切なものを掴むことの出来なかった、掴もうと手を伸ばすことが出来ずに少し離れたところからじっと見つめる娘だったのだ。それをずっと後悔したままで、うちに抱えこんでしまい込む娘だった、というのを忘れないようにしてあげたい。それは、前世の女子高生だった頃だけの特質なのか、それともそれとも。
ともあれ、今のマキナは一貫している。トールに会いたい、という願いに一途でいられている。その願いに迷いはなく、だからマキナは一心不乱にガンガン突き抜けられる。そのパワフルさについていける人はそうそういなくて、紅の魔女の悪名を引き継ぐ家名もあってか彼女に近づく者も早々いない。それができるのは、結局訳ありな面々だけなんですよね。
というわけで、マキナを中心に揃ったパーティーは曲者ぞろい、或いははぐれ者揃いというべきか。
ここで早々にレピス嬢が出てきてマキナの傍らに寄り添うとは思わなかったけど。あの義肢の設定や空間魔法についてのあれこれからしても、彼女の基本的な設定も変わっていないっぽいけれど、留学生なんかやってるからには裏方ではないんだよなあ、多分。

まだ魔王も魔女も目覚めることはなく、賢者だけがすべてを知っていて見守っている、という状態か。それでも、徐々に紐解かれていく伝説となっている過去の物語。叶わなかった恋の物語。
今、こうしてマキナもトールもお互いを求め合い恋い焦がれている。再会なって今まで溜め込んでいたモノがようやく「恋」という名の想いであると確信するマキナ。でも、運命はその想いを伝え合うことをまだ許しはしないのだ。
すっごいラブストーリーしてるよなあ、濃度半端ないよなあ。まだ、前前前世な要素も殆ど出てきてないにも関わらず、現段階でこの熱量である。
しかし救世主なアイリさん、えらい邪魔者なポディションに収まっちゃって。夢見がちで現実ではなく自分の願望を直視するような在り方は随分ヘイトを集めそうなキャラになっちゃってるけど。ウェブ版でも同じく日本から召喚された救世主の女の子が登場するのですが、ほぼ別キャラになってますね。これは、背負っているバックグラウンドも全然違ってくるんだろうか。

なんにせよ、本当に元の作品と全然展開が異なっているだけに、果たして話がどう転がっていくのか全然見通しがつかないのがこうなるとワクワク感を後押ししてくれる。この段階ですでにメインの二人に恋の自覚がある、というのもラブストーリーとして強力な牽引力になりそう。今後の展開が実に楽しみな新シリーズと相成りました。

友麻碧作品感想