【航宙軍士官、冒険者になる 3】 伊藤 暖彦/himesuz エンターブレイン

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帝国航宙軍兵士のアラン・コリントは航宙艦が不時着した先の"剣と魔法の惑星"を滅びの運命から救うため、星ごと接収し支配者となることを決意した。
クレリアの忠臣たちと合流しクランを立ち上げ、目的に徐々に近づいていくアラン。
そして、さらなる力をつけるため貴族になろうとする彼だったが、そのためにはドラゴンを狩るのが一番の近道だと知り……!?
異星ファンタジー超大作、第三弾!

アランが運用する探知システムが便利すぎる。個人の戦闘力云々よりも自立ドローンによる索敵によって近隣の動体反応が丸裸なのが強すぎる。常に主導権を握れるし、相手の数から素性から詳細に把握できるし地形状況も全部わかる。戦場の霧というのが此方だけ存在しない一方的な有利さなんですよね。
そりゃ、魔物も盗賊団も狩り放題ですわ。獲物がどこにいるか、出発する前から把握しているから行程にムダもないし、情報支援が潤沢すぎる。
まあそんな索敵システムもあって、盗賊に襲われていた商業ギルドの御令嬢を助けたのをきっかけに、商業ギルドのギルドマスターと懇意になり、魔物討伐や盗賊団撃滅を頻繁に行った結果、冒険者ギルドからも信用を得て、盗賊団相手に壊滅した冒険者パーティーの亡骸と遺品を丁重に扱い盗賊団を討って結果的に仇討ちをしたことをきっかけに街の有力クランのリーダーと仲良くなり、とまあトントン拍子で街の有力勢力と友好を結ぶことに成功するアラン。
ちょうど、クレリアの臣下たちを呼び寄せて彼らを冒険者にして大きなクランを立ち上げようとしていた所だっただけに渡りに船ではあったんですよね。明らかに新興勢力となるだろうアランのクラン、いきなり現れたのではよほど警戒もされただろうし、利害関係に基づく対立も発生していたでしょう。でも、アランたちが先に来て信用を築いていたお陰ですんなりと入り込めた、とも言えるんですよね。
いやだって、あとから来たクライアの臣下たちってもろに軍人なんですもん。規律正しく統制された全員が一定以上の実力を持つ男たちが退去として百人近くいきなり街に現れるんですよ? 普通はなんだこいつらは、ってなるし、見る人が見たらこいつら軍隊だ、というのも一目瞭然でしょう。いきなりどこのものともしれない軍隊が街に入ってきてクランを形成するって、怖いなんてもんじゃないですよ。彼らがその気になれば突然内部から街を占領、とかだって容易にできそうなものですし。
ってか、パーティー登録するときに1班、2班とかいう無味乾燥な名前つけるのなんて軍隊以外の何物でもないじゃないですか。隠そうともしてないし。
これ、アランが自分たちが有用で害意なく信用に値する人間である、というのをよほど浸透させる事に成功していた、ということでもあるんですよね。アランくん、決して街の有力者たちだけではなく、下働きの人たちは浮浪者同然だった孤児の兄弟なんかとも分け隔てなく仲良くなってて、特に意識しているようにも見えないのだけれど、わざわざ敵を作るような真似は一切していないのです。
アランの一番の特徴って、この誰とでも友好関係を結ぶことの出来るコミュニケーション能力なのかもしれない。勿論、基盤となる財力と武力があってこそ、相手に信用してもらえるだけの余裕を持てているのでしょうけれど。
これはドラゴンとの相対にも如実に出ていて、ドラゴン相手に無闇に突っかからないし小難しく理屈をこね回しもしない。わかりやすい基準を立てて、それに沿って行動することで攻撃と対話の使い分けが非常にはっきりとしている。何気に難しかったりするんですよね、このあたり。飄々としているようで、即断即決という面も垣間見えるのがアランくんの側面だったりします。
このあたり、まだセリーナとシャロンでは判断が遅かったり迷いがあったりする様子が見受けられるんですよね。経験の差、でもあるのでしょうけれど。クライアはそこにさらにまだ自信の欠如という要素が介在していたので、今回クランの大規模行動の時に一つの集団のリーダーを任せられて、それをしっかり務められたのは自信を得るのに良い経験になったのではないでしょうか。
リーダーシップを発揮しなければならない、という意味ではクライアは早々にそれを求められている立場でもありますしね。
さて、しかしこのドラゴン一等兵、どういう扱いで物語の中に組み込んでいくんだろう。この場合は人化なんて展開はつまらないことこの上ないだろうし。
ドラゴン、意思疎通は出来るけれど人間の言葉を話すことは出来ない、という状態が逆に妙に可愛げというか愛嬌のあるコミュニケーションになってて、なかなか可愛いです。喋れない、というのはこの場合アドバンテージでもあるんだよなあ。

幕間は、イーリス准将のオリジナルが二階級特進となるバグズとの絶望な戦いの勇戦のお話。ドラゴンと違い、意思疎通のかなわないしかし知性のあるバグズという存在との生存をかけた殲滅宇宙戦争という凄惨な様子と、人間の戦い抜く意思が伝わってくる壮絶な話でもありました。人類、きっつい戦いを続けてるんだなあ。

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