【地獄に祈れ。天に堕ちろ。】 九岡 望/ 東西 電撃文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

イカしたDJが今回のお話を大紹介ダ!
ミソギ、死者。嫌いなものは聖職者。犯罪亡者をぶっ飛ばし、地獄の閻魔に引き渡す荒事屋にして……シスコン(妹)!
アッシュ、聖職者。嫌いなものは死者。聖なる銃をぶっ放し、死者を殺しまくる某機関の最終兵器にして……シスコン(姉)!!
こんなチョイとオカしな二人が、何の因果か亡者の街『東凶』で、「魂」に効くヤバーいおくすりを大捜索! 聖職者嫌いの死者と死者嫌いの神父が!? ハッ、まったく上手くいく気がしてこないね!
しっかーし! 困ったことにこいつら実力は折り紙付き。おいおい頼むから『東凶』を壊滅させちまったりすんなよ!? 電撃小説大賞《大賞》受賞作家・九岡望が贈る、ダークヒーロー・アクション!

イカレた二人のバディアクション、という触れ込みだったのでよっぽど頭がおかしいか人間的に破綻している輩のピカレスクロマンの類かと思いきや、少なくとも亡者であるミソギの方はかなりマトモ、を通り越して文句なしに好漢ですよ、こいつ!?
世界規模の幽界現象と呼ばれる地獄の底だか天井だかが抜けてしまう大災厄によって、死者が現世に戻ってきてしまうようになった末世において、まだ生きてる妹を守るために地獄の閻魔様(♀)に直談判して、直属の賞金稼ぎとして現世に舞い戻り犯罪亡者を狩るハンターとして東凶を駆ける人呼んで死神ミソギ。こいつがまた見てくれと行状は完全に危ない人なんだけれど、中身はほぼヒーロー気質なんですよね。そもそも、妹を守るために現世まで這い上がってきたその根性、そして妹を安全な生者の街まで送り届けたあとも、閻魔様から授けられた「借金」を返すためとはいえ危ない犯罪亡者どもを狩っているのは、少しでも妹が生きているこの世界を安全にするためという心意気。そんでもって、年下の女の子を見ると妹を連想してついつい助けちゃうあたりなんかも、ロリコンとか言ってはいけない。ってかもう妹ちゃん普通に23歳と大人になっちゃってるじゃないかい。
まあこちらの死者ミソギが比較的真っ当な人間しているのに対して、完全にイカレてしまっているのが聖職者たるアッシュの方である。こっちのシスコンの方は笑い話に出来ないくらいのダークサイド。正気も殆ど残っていなくて、復讐心と狂気を「姉」への依存心でなんとか外からコントロールしているような危うい状態なものだから、彼の担当となった仮の「姉」であるフィリスがえらい苦労するはめに。基本的に「姉」の言うことは何でも聞くものの、少し目を離すと途端に狂気のままに行動しだす上に言うことは聞くけれど話は聞かないので、言い聞かせるのがそもそも大変!
わりとイカれたエクソシスト組織の一員でありながら、フィリスさんてばまともな人すぎるので、これこのままだったら早晩胃に穴があいてたんじゃなかろうか。
ただ、このアッシュの方が殆ど正気残っていない、というのがバディものとしてはちとネックだったんですよね。反発しあいぶつかり合いながらも、どこかで相通じるものを感じ取り衝突しながらも息のあったコンビになっていく、というのがバディものとしての醍醐味だと思うのですけれど、それが片方頭おかしくなっているものだから、どこか噛み合わないまま進んでしまうのです。ちゃんと対立も意気投合も出来ないまま進展してしまうんですね。なにしろ、アッシュが相手であるミソギの事をちゃんを見ていない。それ以前に過去に魂を囚われていて現在そのものを正確に認識していないのですから、どうしたって対等になれず対面で向き合えず、肩をいかれせぶつけ合うことすら出来ない。
なので、ド派手にアクションどんどんぶちかまして、キャラクター敵味方問わずにイケイケドンドンで喋りも行動も大いに花火を打ち上げて、リズムよくポンポン弾けていくにも関わらず、どうしても乗り切れないところがあったんですよね。
それが解消されるのが終盤も終盤。アッシュが正気に返って過去に囚われた魂が檻から解き放たれてから。目を覚まし、ちゃんと現在を受け止めて、周りの人たちのこともちゃんと自分で考え一人ひとりをちゃんと認めることで、ようやくここで生きてるキャラクターになったのです。
ミソギと、対等に殴り合い怒鳴り合い、認めあえる個人になったのです。そうなると、アッシュに引っ張られるにしろ引っ張ろうとするにしろ、彼に振り回されるか引きずられるしかなかったフィリスも、彼から手を放して一人で動き回れるヒロインになれたんですよね。そうなると、温厚なふりしてやたら度胸があったり肝が据わって覚悟極まってたりとフィリス個人としての魅力が湧き出てくるのです。アッシュとミソギのバディアクションも、俄然勢いを増して盛り上がってくる。
ちょうど、ラスボスの素性やら目的やら仕出かそうとしている大事件の全容も明らかになり、終盤はほんとに全部見事に噛み合ってフルスロットルなノリノリの大盛りあがりになってたんじゃないでしょうか。こういうの書きたかったんだろうな、というのが全部積み上げられてるようなド派手なアクション大暴れ。
これをもっと序盤中盤から点火出来ていれば、盛り上がり具合もうなぎ登りだったのかもしれませんが、そういう意味ではスロースターターな作品だったようにも思うんですよね。
なので、次回があるなら最初から全員重たいものは振り切っているでしょうし、初っ端から最高速度で突っ走ってくれるんじゃないか、と期待してしまうところです。
しかし、閻魔様ブラックに見えてあれかなりイケメンな性格をした頼りになる上司ですよね。人情派で結構マメだし。ただし、借金は減らないのは真理真理。

九岡望作品感想