【王女殿下はお怒りのようです 3.暗躍せし影】 八ツ橋皓/凪白みと オーバーラップ文庫

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フィリアレギス公爵家との縁を切り、自由を謳歌するレティシエルの元に、公爵家の長女・サリーニャが訪れる。
公爵家の忌み子である『ドロッセル』を嫌っていたサリーニャの思惑が読めず困惑するレティシエル。
その裏では、クリスタがレティシエルの学友・ジークへと近づいており……?
違和感を拭えないまま始まった学園の課外授業の真っ最中、人々を誘拐する謎の集団にジークとヒルメスが捕まってしまう。
友人を狙われ怒るレティシエルは集団を制圧するも、敵の未知の力は不穏な匂いを感じさせ……?
レティシエルを取り巻き暗躍する影と、蘇り始める『ドロッセル』の記憶。転生した王女殿下を待ち受ける新たな謎とは――!

レティシエルが取り憑く事になったドロッセルという少女は、いったい何者だったのか。どういう人生を歩み、どういう考えを胸に秘めて、そして壊れていったのか。
生まれ変わって「ドロッセル」になった時、自分の新たな家族関係も含めてまったく周囲に対して無関心のまま新たな人生を歩みだしたレティシエル。でも、今にして、今更にして彼女は自分が成り代わったドロッセルという少女に興味以上の関心を抱きだしている。
魔力を持たず、魔法を使えず無能で役立たずとされていた公爵家令嬢。性格的にも荒れ果てて厄介者として家の者たちからも突き放され、だからこそレティシエルへと中身が入れ替わっても誰にも気づかれず関心も持たれなかった、そんなこの世界から見捨てられたようなどうでもいい存在。最初はそんな風な風聞だったにも関わらず。
徐々に徐々に、ドロッセルにまつわる不可思議な話が漏れ聞こえてくるようになったのである。それは最初、彼女に使えていた執事のルヴィクから。やがて、交友が広まっていくにつれてドロッセルがある時期まで魔法が使えないまでも非常に聡明で理知的な少女として知られていた事がわかってくる。だからこそ、中身がレティシエルに変わっても昔に戻ったのでは、と勝手に勘違いされる程度で済んでいたのだけれど。そんな話を聞きつつも、レティはさほどドロッセルに関心を持っていなかったのだけれど、やがて彼女の記憶と思しきものが徐々に蘇ってくると同時に、ドロッセル自身に何やらただならぬ秘密があったらしいこと。何より、ドロッセルという少女が掻き毟るように残した強い想いの残滓が垣間見えてくることによって、あれだけ無関心であったレティシエルが新たな自分ドロッセルという存在自体に惹きつけられていくのである。
ここらへんの、レティシエルの心の変化がなかなかに興味深い。
そもそも、実家であるフィリアレギス公爵家がただのクズどもの集まり、というだけでない胡散臭さというか後ろ暗さを醸し出してきて、こいつらホントに国の癌だったんじゃないのか、と思えてきた。辣腕の悪役令嬢です、とばかりに登場してレティシエルにプレッシャー掛けてきて彼女の友人たちにちょっかいかけてきた公爵家長女のサリーニャも、なんか蓋を開けてみると上っ面ばかりやり手で謀に長けた悪辣な才女というのはガワだけで、さすがはフィリアレギス公爵家と言わんばかりの噛ませ犬でしたし。そのくせ、後ろ暗いところがありすぎてこいつら突かれたらホントやばいんじゃないだろうか。
一方、第2王子のロシュフォールが目も当てられないろくでなしだった王家だけれど、国王陛下がレティの真価を見抜いて公爵家から引き抜いたのみならず、どうやら第2王子を除く第一、第三王子は辣腕以上に食わせ者のようで、特に第三王子とかこいつ王族の枠に留まらない曲者じゃないですか。
てっきり、ジークがレティにとってのヒロインかと思ったら、第三王子の方もこれ見過ごせなくなってきたなあ。
しかし、レティが転生したように前世の彼女の連れ合いだった男性も、身近な登場人物の誰か、特にジークあたりに転生していて、今はまだ記憶を取り戻していない、みたいな想像をしていたのだけれど、一概にそうとは言えなくなってきたのか、これ。
敵側も王家側も背後で暗躍し何事かの企みを図る中で、その中心はドロッセル、そしてレティシエルが要になってきているわけで。ドロッセルの真実とレティシエルという正体バレが物語の核心へと組み込まれた感じになって、大きく話が動き出してきた感がある。続きが楽しみな展開だ。

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