【ひきこまり吸血姫の悶々】 小林 湖底 /りいちゅ GA文庫

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「……ふぇ? な、なに」?

引きこもりの少女テラコマリこと「コマリ」が目覚めると、
なんと帝国の将軍に大抜擢されていた!

しかもコマリが率いるのは、下克上が横行する血なまぐさい荒くれ部隊。

名門吸血鬼の家系に生まれながら、血が嫌いなせいで
「運動神経ダメ」
「背が小さい」
「魔法が使えない」
と三拍子そろったコマリ。

途方に暮れる彼女に、腹心(となってくれるはず)のメイドのヴィルが言った。

「お任せください。必ずや部下どもを勘違いさせてみせましょう! 」

はったりと幸運を頼りに快進撃するコマリの姿を描いたコミカルファンタジー!

引きこもりだけど、コマリは「やればできる子」!?
コマリ隊の荒くれチンピラどもがチョロすぎる! こいつら、美少女だからもてはやしてるだけだろう!?
何にも出来ないコマリンの実力を勝手に誤解して周りがヤンヤと持ち上げる勘違いものなんだけど、特に誤解されるような奇跡的な展開、とかはないんですよね。事故で初っ端突っかかろうとしてきた部下のヨハンをドアで挟んで殺してしまいますが(生き返る仕様の世界観)、これで普通は勘違いしないよなあ。めっちゃ態度ビビってたし。あいつ雑魚だろう、と主張するヨハンの反応が普通だと思うのですが、それくらいで勘違いしてコマリン教徒になってしまう隊員たちが色んな意味で残念すぎる。
いや、もうちょっと勘違いモノにしても誤解させるに納得させてくれる要素が欲しかったような。あれだけ直前、新任の上司に一発かましてやるぜー、ぶっ殺してやるぜー、と気勢を上げていた連中がコロッとですもんねえ。アホしかいないとは言え。唯一頭が回りそうなカオステルは真性のロリコンでロリならなんでもいいという感じで手に負えないし。
わけのわからん高評価にドン引きしながら、ナチュラルに大言壮語繰り返すコマリんも大概調子ノリまくっているわけですが。なんで演説する時はそんな無茶苦茶偉そうなセリフがポンポンと出てくるのか。実は普段からそういう事妄想してたんじゃないのか、というくらいスルスルと飛び出すハッタリ。
そして実質何もしないコマリちゃん。
はったりと幸運を頼りに快進撃、とあらすじでなってるけど、部下に丸投げしてたら勝手に進撃して勝手に勝ちまくってるだけで特にコマリンてば何もしてないんですよね。偶然だよりの超展開、とかもないし。
ただこの子がマメにやっているのは、あれこれと可愛い美少女上司とコミュニケーション取ろうと接してくる部下の相手だけ。段々と相談会になっていちいち部下の相談事やお願い事を解決するために駆けずり回ってるの、コマリちゃん根が働き者で世話好きっぽいんだよなあ。サボらないで一生懸命働いてるし。これは休日とか関係なしにスケジュール埋め尽くしてくるメイドのヴィルのせい、というのもあるのですけれど、嫌だーとか言って逃げ出さないし。
彼女が引きこもりから引きずり出されたのは、将軍やらないと爆死してしまう仕様を添付されちゃったからだけど、別にそこまでマメに働かなくてもサボってもいいところまでちゃんとやってるあたり、彼女の本質が見て取れるんですね。
そもそも、彼女が引きこもってしまったのは怠惰が原因ではなく、深く負った心のキズが理由だったわけですし。
本来の彼女は小心者だ。いつもビクビク周りを気にしている。本来の彼女は弱虫だ。怖いことからいつも逃げ出したいと思っている。
でも、この子は本当は勇気を持っている子だ。弱くて怖くても、なけなしの勇気を振り絞って前に出ることの出来る子だ。大事な場面では、決して逃げることの出来ない子だったのだ。
それが、彼女を引きこもらせる傷を負う要因となり、救われた一人の少女がコマリに人生を捧げることになる。
そうして、テラコマリという少女はその優しい勇気を以て、引きこもらなくてもいい自分の居場所を作っていく、これはそんなお話だ。

まあそんな少女の敬愛が、どうしてあんな変態的変愛百合へと怪物化してしまったのかは大いに謎であるのですが。四六時中脇に侍る側近メイドから常に貞操の危機を感じながら世話を受け続けるというプレッシャー、ハゲるんじゃないかコマリン。

しかしこれ、ミリセントの方も結構かわいそうなんですよね。親からDVを受け続け、師からは偏った思想と虐待を受け続け、努力し続けても目標を達成できずに逃げ場のない所まで追い詰められた所で、他者への暴力に走ってしまった挙げ句に何もかもを喪ってしまう。これまで辛い思いをしてきて積み上げてきたもの一切を無駄にしてしまう。
ヴィルやコマリにやった事は同情の余地ないのだけれど、この子が救われる余地がどこにもなかったというのは哀れに思ってしまう。