【異世界迷宮の最深部を目指そう 13】 割内タリサ/ 鵜飼沙樹 オーバーラップ文庫

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ジークを主とする騎士、ライナー・ヘルヴィルシャイン。
それが僕の名前だ。
迷宮から一年の時を経て帰還し、再びフーズヤーズの騎士に戻った僕は、ラスティアラの密命を受け、任務に励んでいた。
内容は魔石人間に流れる『ティアラ様の血』の回収。その任務にも目処がつき、あとは『再誕』の儀を待つばかり。
だが、そんな僕の前にティアラを名乗る人物が現れる。
彼女は『ティアラ様の血』を全て僕に受け取って欲しいと言い始め――。
「君に『異世界迷宮』の『最深部』を目指して欲しい」
このフーズヤーズ十一番十字路から、僕は『プロローグ』へと歩み出す。

これは酷い!

これってよくまあ使われる言葉だけれど、今回これほどピッタリの言葉はないでしょうよ。
いやホントにもうさ、一体何を見せられたんだろうと天を仰いでしまった。まあこれを今回一番しみじみとこぼしたいのはライナー君だろうけどさ。でも君、自業自得だぜ。散々、ジークやラスティアラのこと愚痴ってたけど、君だってそういう人たちをわざわざ主に選んで命賭けちゃってるんだから大概だよ?
というわけで、ライナーくん。千年越しの厄介事にさらにラスティアラがややこしく拗らせて引っ掻き回しているトラブルを密かに収集解決してまわる後始末役を拝命する、のまき。
ラスティアラのやつ、ジークの事振るわ戦線離脱して引っ籠ろうとするわ、なにかよそよそしさも感じられる態度は深刻な問題とか体質体調の不調を抱えているとか、何がしかの予言とか悪い予測が立ってしまって奔走してるとか自分だけで抱え込んでなんとかしようとしているのか、とか色々心配してたのに。この女……アホだった。ただのアホだった。加えて、完全に駄目女だ。スノウとは別のベクトルで同じくらいダメ人間だ。
ほんともうなにやってんの、この娘!? なにやってんの!?
うわーー、もう面倒くせーー! 話を聞けーー!! なまじ昔のマリアとかみたいにヤベえ感じ、薄氷を踏むようや危うさがなくてガンガン殴っても応えなさそうな頑丈そうな分、コメディタッチになってしまってるんだけれど、なんだかんだとやらかし切ってしまうとえらいことになってしまうのは変わらないどころか、国際紛争とか世界の危機とかジーク爆発みたいなところまで発展しかねない顛末になってしまうだけに、おバカが爆弾の導火線に火をつけて騒いでるようにしかみえない、とにかくヤバいことになっているのが、なんかもう脱力してしまう酷さなんですよね。
そういうヤバい話を、こんなアホなことでやらかすなー!
まあね、うん、この物語のヒロインは総じて話まったく聞かないんですけどね。ほんと、馬耳東風というかスルーというか都合の悪いことは聞こえない作りになっているというか。何気にヒロインだけじゃない気もするというか、登場人物おおむねそんな感じなのは、アイド先生とか振り返ってもそうだったので、もう誰も彼もが重い! で片がつく話なのかもしれないけど。
今回またぞろ話ややこしくした魔石人間の女の子も、重すぎるの! なんでそういう事しちゃうの!? そこまで変に思いきれるのなら、普通に頑張りなさいよ! 相方の男の子、完全に置いてけぼりじゃないか。相談しろ! 話を聞いてもらえ、それ以前に相手のこと考えてあげて!

その点、ライナーくんは昔こそこいつも話聞かないやつだったけど、今は話は早くて行動も早くて決断も早くて、と三拍子揃った思い切りの良さで頼もしいったらありゃしない。ティアラ様もよい人材を見つけたものである。ティアラ様的には時間もなかったことだしウダウダウクズクズ迷い悩まれてる暇なかったところに、パッパッと決断してくれる信頼できる頼もしい騎士様の登場ですから、諸手を挙げての万歳三唱だったんじゃないだろうか。わりと、騙しやすいし騙されたことに対してネチネチイジけるような子でもないし。
ほんと、なんでこんなイイ子がラスティアラとジークに仕えてくれてるんでしょうね。だめな子ほど可愛いのだろうか。ライナーくん、完全にラスティアラとジークの保護者扱いだもんな、これ。
ジークとラスティアラも、ライナーくんに頼りすぎである。

まあラスティアラに増して酷かったのが、ジークなんですけどね。あの登場シーンにはひっくり返りましたがな! ガチでひっくり返りましたがな! なんで来る! そのタイミングで来る!?
すげえ勢いで、一生懸命ライナーが用意したお膳立てを出会い頭に蹴っ飛ばしてひっくり返して台無しにして、おまけに自分でひっかぶってしまうという、ほんと何しにきたの!?
ここもう神業みたいな場面でしたよ。ジーク出現してからのあれやこれやはもう伝説級のシッチャカメッチャカだったんじゃないだろうか。あれほどガチで「自分は何を見せられているんだろうか」と真剣に思ったのは初めてだよ。この台詞ってこういう心境の時に使うのか、と変に感心してしまいましたがな。
表紙絵の二人、ジークとラスティアラのこの神秘的とすら言える睦み合いに見合う感動的なシーンが見られるのかと思ったら。

これだよ!

このありさまだよ!

いやわりとこのイラストなで合ってるのかもしれないし、おおむねこんな感じの構図の話な気もするんだけど……おおぅ。
本当に、これは酷い。見るたびに、思わず顔を覆ってしまいたくなる顛末でありました。
でも終わってみると、最良の形になっているというのはジーク、ズルいよねえ。主人公だよねえ、これが主人公のパワーというものか。運命力というものか、引きの強さというものか。引きすぎて、本人もエライ目に遭いまくって被害がえらいことになってるけど。
もう無茶苦茶になってしまったのだけれど、それでもライナーとティアラ様が目指した最善が、大混乱の挙げ句に最良の結果に落ち着いてしまった、というわけの分からなさがなんかもう、笑ってしまうのだけれどすごいなあ、と惚れ惚れしてしまう展開の流れで。
うん、いやすげえわ。
わりと深刻に拗れきってた状況と拗らせきっていたラスティアラの心が綺麗サッパリうまく片付いちゃったんですもんね。懸念だったラスティアラ関連の話、おおむね着陸できちゃったわけですし。
ほんと、なんで無事着陸できたんだこれ? 不思議だ、謎だ、意味わからん!? アクロバティックすぎて、一部始終見てたのにわからん!(笑
とにかく凄かった。

しかしこれ、なんぞ妹・陽滝がすげえラスボス的な空気出してきてるんですけど。そうなのか? 最後の最後に一番とびっきりにヤバい、中身ヤバいヒロインが目を覚ますのを待っているという事なんだろうか。うん、ヤバいね。

シリーズ感想