【絶対城先輩の妖怪学講座 十二】 峰守 ひろかず/水口十 メディアワークス文庫

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傍若無人な黒衣の妖怪博士・絶対城の活躍を描く伝奇譚、第12弾!

『真怪秘録』をまとめる中で、妖怪学の限界を感じたという絶対城。熱意を失った彼は、文学部の非常勤講師として妖怪学を教えてくれないか、という織口からの誘いも断ってしまう。
そんな中、礼音が何者かに狙われていることが発覚。大切な人を守るため、事件の調査に乗り出す絶対城だったが、一方で、その一件の解決をもって妖怪学徒を廃業するとも宣言し――。
猫また、猫ばば、五徳猫。事件の鍵を握るのは『猫』!?
絶対城阿頼耶、最後の事件!

礼音さんがタフすぎるw 礼音が狙われてた案件、あれ彼女じゃなかったらほとんどが普通に事故死しちゃっているケースのはずなんだけれど、素の身体能力の高さからひらりひらりと回避して当人ケロリとして最近ちょっと運が悪いなあ、くらいの認識でしか無いあたりがさすが礼音である。このあっけらかんとした性格が、絶対城先輩の心の助けにどれほどなってきたか。
今回なんぞ見てて微笑ましいほどの仲睦まじいカップルでしたもんね。礼音は元より絶対城先輩もわりと素直なので今更好意を照れ隠しとかしないので、率直にお互いを気遣い合う関係は見てて温かいものでした。かと言ってそれほどベタベタしないサッパリしたところは二人らしいのですけれど。
はからずも同棲生活になってしまってからも、まるで色っぽいことにはなってませんでしたし。いやそう言えば恋人になる前も一緒に住んでた時期があったっけか。その時より関係は進んでいても、それでイチャイチャしだすかというとそういう二人ではないんですなあ。
それでも、旅行に行った時のあのギューッと抱き合ってぬくもりを伝え合うシーンは、恋人というよりも、そして夫婦というのでもなく、なんというかこれからもずっと人生のパートナーとして共に歩んでいくという仲睦まじさを感じる場面で、二人の関係の結実を思わせてくれてジーンと来たんですよね。
白鐸という目下の脅威を退けて、『真怪秘録』の編纂も一区切りついてしまったところでいわゆる「燃え尽き症候群」のようなものに罹ってしまった絶対城先輩。一方の礼音も大学三回生に進級するにあたって今までのまま経済学部で勉強していくのではなく、今最大に興味ある妖怪学の道へと進んでみたいと考えるようになり、とお互い次の段階を考えるところに来ていたんですね。
そこでこの「猫」の事件はさて最後の後押しになったのか。絶対城先輩に妖怪学の奥深さをもう一度教えてくれる、という意味ではよいきっかけになったのでしょうけれど、何気に今までで最大のピンチとなりかねない最大の敵だったんじゃないですか、これ!?
杵松さんとの雑談で出てきたパソコンの連結についての話が伏線だったとは思いませんがな!
本作では実際に本当の「妖怪」は出さない、という方針で一貫していたと後書きでも触れていましたけれど、今回の「猫」を含めてどれもある意味本物の妖怪よりも突拍子もない「正体」で、いやあぶっ飛んでたなあ。
幽霊の正体見たり枯れ尾花、じゃなくて幽霊の正体見たりビオランテ、みたいな感じのものばかりで、その突拍子もなさがまた面白かったんですけどね。
でも、それで不気味だったり得体の知れなさが陰気な感じにならなかったのは、礼音の明るさに牽引されるどこか作品全体に流れる呑気な雰囲気ゆえだったのでしょう。メインとなる絶対城先輩も、傍若無人なんてあらすじに書かれていますけれど、実際は非常に紳士で人柄が伝わってくる優しいキャラクターでしたので、この人を見てて嫌な感じになった事はなかったですし、相対する「敵」はみんな想像を遥かに超えた存在でありつつ、今回の猫のようにどこか「スットボケた」愛嬌を持っていたのが、和やかさにつながっていたように思います。この物語の持ち味というか特色でもありましたね。
礼音と阿頼耶くんには幸せになってほしいものです。二人の将来、についても具体的に色々と考えているようでしたしね。心残りは、杵松さんと織口先生の関係がどうなってるの? と、そこんところ不明のまんま終わってしまった所ですけれどw
これで終わってしまうのが本当に寂しくなる、慣れ親しみを抱かせてくれた作品でありました。


シリーズ感想